1話:弁当の戦
「明日弁当いる人〜」
夕飯後、リビングで全員がダラダラしている後ろで、洗い物をしている裕介が声をかける。
「は〜い」
「私欲しい〜」
「寄こせですわ〜」
透花、美紀、筍が順に声をあげる。
「なんか一人生意気なのいたのでそいつはなしなのじゃ」
「誠に申し訳ございませんでしたぁ!!」
即謝る筍。やり取りを見ていた渉が口を開き、
「雑に仰々しいのなんなの」
と突っ込む。横で透花が大爆笑していて、なんだかカオスになってしまった。
「でもなんだろ、その状態で聞かれるのも悪いと思うよ」
「どういうことだよ」
「なんかお母さんみたい」
裕介は、シェアハウスを始めるときにも、今でも管理人のように動いてくれている。
ご飯は当番制にしているが、弁当は裕介が圧倒的に好評でずっと作っている。
サボりがちな瞳や透花に、ちゃんと教えるなんてこともしている。まぁ、家麺に生活スキルを求めてはいけないと思っているのだが。
「すでに管理人みたいなのによくやりますよね(笑)」
「殴っていいか愁人」
「お母さん兼管理人ってコト…!?」
「透花はちい◯わもすんなよ」
「ツッコミがさすゆう」
「わかる」
「あーそうですかさいですか」
くだらない会話だが、これが日常である。
「まぁ、筍は皮包みのチーズ焼きなしな」
「なんで!?!?!?」
「声デカッ…慈悲がないね」
「悪いか」
「よりにもよって一番人気を…くっ…」
「筍、骨は拾ってやるからな」
「大げさすぎるだろ」
明日の弁当は、余った分のチーズ焼き戦争になりそうだ。
_______その後。
「私食べたいんですけど」
「えっえっえっ私も!!!明日嫌いな上司と飲み会連れてかれるから」
「飲み会の話聞いてなかったし透花はなし」
「そんなぁ〜〜〜」
「愁人は…でも足してやる理由もないしな…」
「体でかいよ!!!成長期!」
「は、終わってんだろ。そのでかい身長に免じてブロッコリー追加な」
「酷い」
「ってことで美紀の朝ご飯に追加で出すよ。いい?」
「う〜ん……チーズなら、まぁ…」
「あれ、今減量期だっけ」
「ちがう!!食べるよ食べる!!!嬉しい!!」
「なら良かった」
「なんか…羨ましいな……」
「あと完全に裕介がお母さん」
「わかる」
「2人も減らされたいのか?」
「違う違う違う」
「渉助けて」
「無駄なこと言うからでしょ」
「無慈悲〜!!!」
「仲間意識を持てよ!!」
「ないよ。ていうか2人はそこで蹲ってる筍と仲間意識持ちなよ(笑)」
「「やめてそんな事言わないで!!!」」
「………うるさいし朝ご飯の黄身、めっちゃ固めてやろ」