閃き
茜はリビングのソファーに横になりながら、テレビを見るでもなくながめていた。
外はどんよりと曇っている。
ソルが出かけてから1時間ほどしか経っていなかったが、
帰ってくるのが待ち遠しく、無事に帰ってくるか心配になってきていた。
時計をチラッと見て、茜は家を出た。
こんなにソルが心配なのは、かわいそうな事情があるから。
一人じゃ心細いだろうから、やっぱり手伝ってあげたい。
早足で歩きながら、茜はソルの姿を必死で探した。
どこにいるのか見当もつかなかったが、そう遠くには行かないはずだと思い近所を探して歩いた。
ふと茜が足を止めると、そこには広い空き地があり、ヒザの高さほどの草が生い茂っていた。
「こーいうトコロとか、なんかいかにも扉がありそうじゃない?」
茜は独り言をつぶやきながら、草の中をかけ分けながら進んだ。
「私が先に扉見つけてあげたら、きっとソル喜ぶぞ~っ」
言いながら、茜はずしりと心に重たいものが落ちてくる感じがした。
扉が見つかったらソルはすぐに帰るだろう・・・
そう思うと何故だか無性に胸がしめつけられた。
茜は今まで恋には疎かった。
それでもこれが恋だと気づくのは容易な事だった。
「私、ソルに・・・側に居て欲しいんだ・・・」
でもソルは異世界の住人だ。
いつかは別れがくるのだと頭ではわかっていたが、
茜の思いは滑り台のように急降下し、止めることなど出来ないほど走り出していた。
自分の思いをなぞるように考えていると、
足元がグラリと揺れ、茜はバランスを崩してどこかへ転がり落ちていった。