模索の王子
「たくさん買っちゃったね~」
「ありがとうございました。」
ソルは大量の紙袋を手にかけながら深く頭を下げた。
「こんな怪しい男のために、ここまでして下さって、本当に感謝しております。」
「怪しいって・・確かに怪しいけど・・・だって異世界って嘘じゃあないんでしょ?」
「もちろんです。この世界は私のいた世界とは確かに違います。
扉がまた開けば戻れるはずなのですが、その扉が一体どうやって、いつ開くのか
それが全くわからない状態なのです・・・。」
ソルはガックリと肩を落としながら言った。
「いいよ!気にしないで家にいて!その扉が見つかるまでいればいいよ。」
茜はポジティブな性分をいかんなく発揮していた。
どう考えても怪しいこの男を頭から信じているわけではなかったが、
嘘にしろ、本当にしろ、かわいそうだという思いがしていた。
「お夕飯は何に致しましょうか」
安心した様子のソルは、ニッコリと微笑みながら茜に聞いた。
「んーオムライスが食べたいな~!」
「かしこまりました。」
白い雪のかかる山のむこうに、オレンジの夕日がしずんでいった。
次の朝、ソルは家事を超スピードでこなし、身支度をすませた。
「茜様、今日は私少々出かけてまいりますが、よろしいでしょうか。」
「うん、どうしたの?」
「こちらの世界にも、扉に関する情報があるはずですので探してまいります。」
「そっかぁ!何か手伝おうか?」
「ありがとうございます。しかしこれは私の問題ですので、そこまで茜様にご迷惑をおかけするわけにはまいりません。」
「そぉ・・・?じゃあ迷子にならないように気をつけてね!」
「はい。ではいってまいります。」
出会ってまだ3日目の朝だった。
茜は心の奥にすっぽりと穴が開いたような感覚になり、寂しさを感じていた。
見知らぬ土地だし、迷子にならないかな・・・