麗しの王子
家に帰ると、置手紙だけが残されて人の気配は無かった。
「二人で取材旅行に行ってきまーす♪
冬休みの間は一人暮らし気分を味わってていいわよ~♪」
「また急なんだから、もう・・・」
茜の両親は急に取材旅行に出かける事がしばしあった。
「まぁー明日から冬休みだし、あんた居ても大丈夫かも」
「ありがとうございます!茜様!」
「ところで、あんたの名前は?」
「私はソル・クリストと申します。ソルとお呼び下さいませ。」
「よろしくね!ソル!」
その日からソルは茜の家で生活することになった。
ソルは部屋の掃除から食事の用意、風呂やベッドの用意まで完璧にこなした。
茜は家事が全く出来なかったので、いつも両親が旅行中は散々な事になっていた。
「おいしぃ~~♪ソルってお料理上手ー」
「ありがとうございます。」
「こうなるとソルがいてくれて良かったなー。
私一人じゃいっつもカップ麺ばっかだもん!掃除も出来ないしー」
ソルは優しくと微笑むと、食後のデザートを差し出した。
「これもおいしいぃ~~」
「茜様は本当に美味しそうに召し上がって下さいますね。」
「だーっておいしいんだもん。ついつい食べ過ぎちゃうよ。」
「食べ過ぎても結構ですよ。おやすみ前に脂肪燃焼マッサージをいたしましょう。」
「えぇぇぇーっ!そんな事もできるの?ってかマッサージはちょっと恥ずかしいよ///」
茜は少し頬を赤くして膝をかかえ丸くなった。
「ふふっ」
「あーっ!笑うなーっ!」
「茜様、意外と可愛らしいですね」
「ちょと!意外とってなによー!もぅ!」
茜はクラスでは明るくて人気者だったが、彼氏はいなかった。
意外にも奥手で恥ずかしがりやなので、誰とも付き合った事がなかった。
「私は隣の部屋をお借りします。何かありましたらお声をかけて下さい。
では、おやすみなさいませ。」
「おやすみなさい・・・」
茜は眠いのに何故だか眠れなかった。
隣では今日初めて会ったばかりの男が寝ているのに、安心しきっている自分が不思議だった。
異世界だとか姫だとか、両親の描く絵本の世界のようなどこか現実離れした話・・・
「元の世界に戻るまで」・・・どうやって戻るんだろう
「冬休みの間は一人暮らし気分を・・」・・・少なくとも1ヶ月は戻らないのね
その間にソルは元の世界に戻れるのかなぁ~・・・
・・・
茜は深い眠りに落ちていった。