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苛立ち

 そして、迎えた体育祭当日。


 天候は曇り。ジメッとした空気と、蒸し暑さの中、ぞろぞろと全学年が集合してくる。


 赤組対白組の紅白戦。

奇数組が赤、偶数組が白だ。僕たちは2年4組なので、白組だ。


 ジメジメとした嫌な暑さではあるけど、炎天下の中でやるよりは良いと、僕は思ってる。


 校長が長ったらしく、呪文を唱えている。日差しが強いと、ここでダウンする子も多い。


 体育祭、第一関門である。今回はバテる生徒もいなかったようで、全員で体育祭に参加することができそうだ。


 2年4組の指定場所に移動する。

熱中症対策で、大型の簡易テントが張られている。ナイス考慮、むしろすべての学校に導入しろと、心の底から思う。


 でも、やっぱりこの暑さに耐えられなくて、僕はつい本音が漏れる。


「体育祭ってやる必要ある?」

「いらん」

「えー! なんでだよ、楽しいじゃん!」

「そうだよ! 学生の大切なイベントなんだから、盛り上がらないと!」


 蒸し暑さに既にやられているユリが、恨めしそうに2人を睨んでいる。


「色々熱い……」

「ふふ、本当だね〜。タイキ君の筋肉すごいね〜。体育祭も悪くないかも〜」

「……うす」

「サクラ、あんた……凄いわね」


 サクラは、なんていうかサクラって感じだなぁ。


「写真撮ろう!」

「撮ろうぜ撮ろうぜ!」


 日差しの代わりになるくらい笑顔が眩しい2人。


 う、いくら日差しがないとはいえ、暑いものは暑いんだ……コウキ、今ばかりはくっつくの勘弁して欲しい。苦笑いのまま写真を撮ることに。


「あー! ユリとアキ、変な顔してる!」

「暑いのよ……もう、いっそのこと服脱ぎたいくらい」

「おいこら! いい女がそんなこと言うんじゃないの!」

「ふふ、おこちゃまだね〜コウキ君」

「……大人だな、サクラ」

「あらら、初めて名前呼んでくれたね、タイキ君。

やっぱり、体育祭いいかも〜」

「……あまり、いじるな」


 タイキがツッコんでるところを聞いて、ふっと笑ってしまう。サクラはサクラで、タイキに名前を呼ばれて喜んでる。大人な雰囲気でのんびりマイペースなサクラと、寡黙で己の感情に不器用な漢の中の漢タイキの漫画が発売されないかな〜。僕は初版で全て揃えるよ。


 みんなでがやがやしてると、放送で100m走と100mリレーの種目が呼ばれる


「最初は100m関連の種目だね。タイキとサクラ、頑張って」

「頑張れー、2人とも!!」

「負けんなよー!」

「怪我しないようにね」

「ありがとう〜みんな。いこう〜タイキ君」

「うす」


 タイキの手を引っ張って集合場所に向かう。


 すかさず写真を撮るヒマワリ。


「やば、超青春」

「これは激レアだな! あとでグループ送ってくれ!」

「うん、確かに青春って感じ」

「キラキラしてるわね」


 ユリ、君もキラキラできる容姿を持ってるんだよ。運動はできるけど、暑いのは苦手なんだな。

クール系からだるい系に変わってるもんね。


 4人で話しながらワイワイしてると、タイキの順番がきた。ヒマワリとコウキが全力で応援して、僕とユリも、2人には及ばないけど、声を出した。


 タイキはぶっちぎりで一位を掴み取った。足は早いけど、リレーは他の人が嫌がりそうだから参加しないらしい。それに、1番最初に終わるから、あとは休憩できるって本人が言ってた。


「あんな重そうなのに、足早いのねタイキ」

「あいつ、いろんなことできるんだよ。すげーよな!」

「一位を当然としてるあの感じ、雰囲気やばいね!」

「早く戻りたいだけだろうけどね」


 次は、男女混合100mリレー。ここには、サクラが参加している。サクラって、おっとりしてるけど運動ができるようだ。


 100mリレーが始まる。リレーってさ、人気の人たちが走ると歓声すごいけど、普通の人が走ると少し静かになるのが苦手なんだよね。ただ走ってるだけなのに、見られるのも好きじゃないし。

 

 おっと、サクラの番だ。ほら、すごい歓声。みんなから人気があるんだなと思い出した。

 

 数ヶ月前まで、関わることがないと思ってた人たちだもんな。たまたま3人と出会えて、気の合う友達になれたことは本当に幸運なことだったと思う。


「サーク!!頑張れーー!」

「いいぞー、サクラー!!」

「がんばってー!」

「最後こけないでねー!」


 やっぱり親目線だな、ユリは。


 サクラは一位のまま、クラスの人に最後のバトンを渡した。距離自体は変わらなかったけど、最後の走者は部活に入ってる人だから、このまま行けば一位だろう。


 サクラを見ると、タイキのところに向かってるようだ。タイキも立ち上がって手をあげている。

サクラはさっきまでとは違い、転けそうな小走りをしてる。


「あ」

「ん?」


 サクラが石に躓いて、転びそうになるところをタイキが支えた。


 カシャっと、隣から音が聞こえた。


「きゃー! 超いい写真!見て見てアキ!」

「おお、確かにいい写真だ」


 タイキがサクラを支えてて、とてもいい感じ。タイキ達と見比べようとした時、サクラがタイキの筋肉をペタペタ触っている。……なんだか、見てはいけないものを見てしまった気がするので、さっと視線をリレーに移す。


 どうやら、一位でゴールしたようだ。


 サクラに近づこうとしたクラスメイトたちだったけど、タイキがいるから近寄れないでいた。サクラがタイキのそばを離れようとしないところを見ると、風除けの代わりにでもしているのかなと思った。僕もここ最近助けられてるから気持ちわかる。


 でも、サクラの反応を見ると……少し違う気もする。いつもにこにこ笑ってるから、照れてるのかどうか分かりにくいんだよね、サクラって。まあ、本人達が楽しいならいっか。


 タイキとサクラが戻ってきたので、みんなでお疲れーと声をかけた。


 少し休憩してから、男全員参加の綱引きと、女子全員参加の玉入れが始まる。


 みんなで奮闘したけど、結果は男が紅組の勝ちだった。ヒマワリ達は白組が勝った。


 さて、次は借り物競争だ。僕とヒマワリが立ち上がって、クラスから移動する。

僕はいつもの4人から応援されて、ヒマワリと他の人達はクラス全員から応援されてる。少しムッとするヒマワリ。どうやら、僕に対する反応が薄いことに納得いってないみたい。正直、僕は4人に応援されれば嬉しいけどね。


「なんかさー、ああいうの好きになれないんだよね」

「僕は気にしないけどね。自分で関係を作ろうと努力もしてないし。だから、タイキ達が応援してくればそれでいいんだ」

「そっか! うちは、アキがそれでいいならいいんだ! 頑張ろうね!」

「うん」


 僕はヒマワリと一緒に集合場所にいく。ヒマワリの隣に並ぶだけで、あまり良くない視線を感じる。陰でなんか言われてるんだろうなって思うけど、特に気にせずその場に座る。


 順番待ちがあるので、ここでヒマワリと分かれる。言われた場所で待ってると、同じクラスメイトの人に話しかけられる。


「なあ、お前って水精とどういう関係?」

「友達だけど?」

「本当にそれだけか?」


 鎌犬かまいぬ君、通称カマケン。たぶん、水精さんのことが好きな男子。

まあ、彼からしたら、僕って陰キャだしね。陽キャ寄りの鎌犬からしたら、鼻につくのかな?

ヒマワリとは、去年同じクラスだったらしいけど、まだ自分は苗字呼びされてるのも、僕が気に食わない理由の一つかな?


「そうだけど、なに?」

「いや、陰キャのお前と陽キャの水精さんって見合わないから諦めろよって話。水精さん彼氏もいるからよ」


 振り向かず、適当に頷いてる。こういう相手は適当に相槌打っておけば満足するはず。


「んだよ、その適当な返事。ちゃんと話聞いてんのかよ」


 と、思っていたけど、やけにしつこい。ぶーぶーぶーぶー文句言ってくる。

どれだけ近づいて欲しくないんだよ……。呆れて言葉を失い、ため息をついてしまう。


 内心で、やばっと思ったけど遅かった。


「おい、なにため息ついてんだよ。目見てちゃんと話聞けよ」

「……なんだよ」

「だから、お前みたいな陰キャが、水精さんと絡むなって言ってんの?わかる?」

「分かったって言ってるだろ?」

「なんだよ、その態度、なんか文句あるのかよ。言ってみろよ、陰キャ。文句も言えないなら、黙って俺にしたがっとけよ」


 流石にこれだけ言われると腹がたつな。


「ああ、分かったよ」

「ふん、最初から」

「じゃあ、文句言わせてもらうけどさ、それって関係ある?」

「は?」


 きょとんとするなよ、君が売った喧嘩だろ?


「それって、君に関係ある? 彼氏でもない君に」

「な!」


 ああ、反抗されると思わなかったのか。無駄にプライド高いからな、こういうやつ。


「ヒマワリが誰と絡むかなんて、ヒマワリが決めることでしょ?」

「それは、そうだけど。陰キャが仲良くしてると水精さんの評判が落ちるだろ!?

しかも、牛山まで水精さん達と連んでるし。まさか、牛山が水精さんを脅してたとかじゃないよな? お前、いつも牛山と一緒にいるし、パシリに使われてんだろ。おこぼれのくせに調子乗るなよ!」


 は? こいつ、僕の友達のことを悪く言ったな? ダメだ、これだけは許せそうにない。

 

 周りもざわついてるし、ヒマワリも気にし始めてる。

 

 でも、ごめん。あまりにもムカつくから、言ってやらないと収まらないや。

友達でもないやつに、友達の悪口言われるのが1番腹立つんだよ、僕。


「まず、始めにさ、それって、ヒマワリが気にしてること? ヒマワリが気にしてて僕に言ってくるならまだしも、赤の他人に言われて、はいそうですかって言うほど、僕は大人じゃない。」

「お前、陰キャのくせに生意気だぞ!」

「語彙が少ないな。さっきから陰キャとしかいってないよ。スクールカーストっていう君たちのくだらない事情に、僕達を巻き込まないでよ」

「言わせておけば!」

 

 胸元の服を掴んでくるので、僕は何もせず彼と向き合う。


 ここには、人の目がある。ここで暴れるのはダメだ。


「おい、なにやってんだ、鎌犬。狼太を離しなさい」

「っち、お前、後で覚えとけよ」


「そっちこそ、僕に絡んだこと後悔しなよ」

「クソ!」


 言い合いになっただけなので、鎌犬が厳重注意、僕は絡まれた方だと思われたので軽くで終わった。


 徐々に順番がくる中で、先に鎌犬がスタートする。


 すると、また誰かが絡んできた。つい、舌打ちしながら睨むと、ヒマワリだった。


 スッと、体温が下がるのを感じた。


「いや、ごめん……」

「うん、凄い圧だった! 一瞬、鳥肌が立ったよ!」

「あはは、ごめんね」

「大丈夫だよ!そりゃイライラするよ。鎌犬君の言ってること、少し聞こえてたし。あれは怒って当然だね、手も出してきたしさ。よく我慢できました」


 よしよしと頭を撫でられる。うお、本当に時と場所選ばない子だな……。


「あ、ありがとう」

「ふふん、どういたしまして。服のシワ伸ばさないとね」

 

 さっきまでの怒りはどこへやら、心臓のドキドキが、違うドキドキに変換させられた。


「次の人ー、並んでお待ちくださーい!」

「あ、僕次だから」

「うん、頑張って。あ、これだけは言わせてね」

「うん?」


 じっと真剣な顔で僕の目を見てくるヒマワリは、なんだかいつもと違って、凄い大人の魅力を引き出している気がする。


「ヒマはね、気にしないよ。だから、離れる気ないから」

「……うん、僕もだよ。またね、ヒマワリ」

「うん!」


 僕の回答に満足したのか、とびきりの笑顔で送り出してくれた。

彼女の笑顔を見るだけで、自然とやる気が出てくる。まったく、本当にいい子だよ、ヒマワリは。


 僕の借り物は、同じクラスの人の物だったので、コウキのジャージを奪い取ってからゴールした。順位は2位だったので、そこそこいい結果だった。


 みんなが終わるまで待ってると、鎌犬が睨んでくるけど、思いっきり無視してやった。ちなみに、鎌犬は最下位の4位だったから、距離が離れてるので絡んでこない。


 だって、そろそろヒマワリの番だからね。

ちゃんと見ておかないと、あとで怒られそうだし。


 全速力で走って、一番乗りに借り物が書いてある場所に着く。

僕たちのクラスの場所に行って、タイキとコウキ、ユリとサクラを引き連れる。そして、全速力でここを目指して走ってくる。僕の前まできて、手を差し伸べてきた。


「アキ、行くよ!」

「うん」


 全員でゴールに向かってみんなで走る。


「えっと、お題は友達です」


 ヒマワリが司会のマイクをふんだくり叫ぶ。


「うちの大事な友達です! うちの大事な友達は、うちが自分の意思で決めてるから、そこんとこ、よろしくー!」


 気持ちのはいった声で叫んだヒマワリは、スッキリしたのか、満足気だ。


「……なんかあったの?」

「まあ、ちょっとね」

「はは! いいじゃん、ヒマワリ超カッケー!」

「そうだね〜。かっこいいね〜ヒマワリちゃん」

「ああ、そうだな」

「ふん! うちの友達を馬鹿にする奴は、うちが許さん!」


 みんなで笑いながら、ふんすと怒ってるヒマワリを慰める。

あの言い合いから、こんなことになるとはね。あとで、面倒なことになりそうだけど、それはいい。


 むしろ、これで色々言い返せる。きっと、意図してないことだろうけど、ありがとうヒマワリ。


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