ゴールデンウイークと夢
ヒマワリと別れてから、家に帰って、まずは母さんに聞いてみると、すぐにオッケーをもらえた。
「アキラがたくさん人を呼ぶなんて初めてねぇ。タイキ君とコウキ君が来るなら、いっぱいご飯作っておかないとね〜」
「え、そんな悪いよ。夜になったら帰ってもらうよ」
「いいのよ~、母さん料理作るの好きだもの。献立は、どうしようかしら~」
……何だか、大事になってきたなぁ。
父さんが帰ってきたから、念のため父さんにもタイキ達を家に呼ぶことを伝えると、嬉しそうに頷いた。
父さんが母さんの手伝いをする。僕もそれに加わる。
僕がバイトを始めてからの、いつもの日常だ。
ゴールデンウィークまでいつもと変わらない日常を過ごした。
さて、ゴールデンウィークが始まった。木曜日に、みんなで勉強会をやることになったので、皆が来るまで部屋の掃除。
「アキー、みんな来たよ〜」
「りょーかい」
玄関まで迎えに行く。
いつも学校に会う面々が、家にいるのは、何だか不思議な気分だ。
「いらっしゃい、入って」
「おっじゃましまーす!」
ぞろぞろと家に入るイツメン達を母さんもお出迎えする。
「あらあら、女の子までいるのねぇ〜。みんな可愛いわ〜。いらっしゃい、ゆっくりしてってねぇ〜」
「ありがとうございます! これ、お菓子です!良かったら食べてください!」
「あら〜、ありがとうね〜、お茶用意するから部屋で待っててね、アキ」
「僕も手伝うよ。みんな、そこだからはいってて」
「あ、ウチ手伝います!」
ヒマワリは、手伝ってくれる。
みんなは、人数が多くても道が塞がるだけなので、先に入ってもらった。
「ヒマワリっていいます、改めてよろしくお願いします!」
「あらあら、わざわざご挨拶ありがとう。アキの母です。よろしくね、ヒマワリちゃん」
母さんが自己紹介すると、ヒマワリは驚く。
「お母さん!? お姉さんだと思いました!」
「あらあら、ありがとね」
「よいしょっと。じゃあ、ありがとう母さん」
「はーい、ヒマワリちゃん、ゆっくりしていってね〜」
「はい、ありがとうございます!」
僕の部屋につくと、早速皆勉強やら、ゴールデンウィークに出た宿題を片付けている。
「ねぇねぇ、お姉さんじゃなくて、アキのお母さんらしいよ? 若すぎない!?」
母さんのアキって言い方につられて僕のことをアキって呼ぶヒマワリ。
つい、笑ってしまうけど、みんなはそれどころじゃないらしい。
「え、嘘。信じられないね」
「本当だね〜、すごく若い〜」
「はは、話し方アキラの母さんそっくりだな、サクラ」
「ああ、そっくりだ」
「確かに、ゆっくり喋るしね、サクラは」
「え〜、そうかなぁ〜」
「うわ、本当にそっくり!」
ある程度談笑してから、勉強を続ける。タイキは、分からなくなるとペンが止まる。いつもなら、コウキと僕がフォローするけど、今日はサクラが率先して動いてくれた。
コウキはユリから、厳しい授業を受けているようだ。必死に食らいついた顔をして勉強してる。
面白い光景に目を奪われてると、ちょんちょんと5
「あきぃ……ここも分からぬ」
「あぁ、この文章が出たら、この式を使うっていうのを覚えておけば大丈夫。ここはここに、これはここに代入してね」
「おー、なるほど! じゃぁここは!?」
「ここはね」
という感じで、僕はヒマワリを見てる。流れでこうなったけど、意外といい感じに勉強が進んだ。
ある程度進むと、勉強に疲れしまったヒマワリがトランプを持ち出して、皆で遊んだ。
遊んだら、また勉強と、割と真面目に勉強することができた。
夕飯時になると、母さんが僕たちを呼んだ。父さんも帰ってきたみたいで、全員でご飯を食べることに。
みんなで夕飯を食べるには、場所がたりないので、椅子組と地べた組で分かれる事に。
皆でワイワイ騒ぎながら食べるご飯は、何だか新鮮で、とても楽しかった。
楽しい時間もあっという間に過ぎて、皆が帰る時間になる。
ヒマワリ達は率先して片付けをしてくれていた。僕らも手伝おうとしたけど、逆に邪魔らしいので大人しくしてることに。
ヒマワリ達が母さんと楽しそうに話している。娘も欲しかったと言っていたので、母さんもとても楽しんでることだろう。
ヒマワリの表情が赤くなったり、笑ったり、驚いたりと、コロコロ変わるので、見ていて面白い。あんまり見るのもよくないから、すぐにそらしたけど。
父さんと僕たちも、高校生活の話をしている。というよりも、コウキがほとんど1人で話て、3人で相槌するって感じ。
父さんが、タイキに話題を振ると、タイキも少し笑って話し始める。うん、父さんとタイキも相性がいいらしい。
そろそろ帰る時間になったので、皆を送ることに。全員同じ方向だから、見送りだけで済ませることに。
「またこうして、集まりたいね!」
期待を声に込めるから、つい頷く。きっと、また集まることになる。何度でも。たとえ、大人になって、距離が離れたとしても、きっとヒマワリか、コウキが声をかけて集まるんだろうなと思えた。
それくらい今の僕にとって、みんなは大切な友達だ。
最後に全員で記念撮影。
内カメを使って精一杯手を伸ばすヒマワリの腕がプルプルしてる。6人で写真撮るのは大変だなぁと、少し笑ってしまったところを撮られた。……油断した。
写真も撮り終わり、5人と別れる。
夜空でも映える笑顔のヒマワリがブンブンと手を振る。僕もそれに応えて、皆が見えなくなるまで見送った。
1人でポツンと静かな道に残される。それが寂しかったせいか、両親に頼んで、またみんなで集まれるようにお願いをしとこうと思った。
皆が帰った後の家は、いつもより静かに感じる。僕の家族は元々静かだからなぁ。それに加えて、僕と両親の声は低音なので、賑やかにするほうが難しい。
さっきまで賑やかだったから、蛇口から落ちる水滴の音すら聞こえなかったのに、今は鮮明に聞こえてくる。
「ヒマワリちゃん達、凄く可愛いかったわー。やっぱり、娘も欲しかったわね」
「……すまないね」
「あら〜あなたのせいじゃないんだから、謝らないで〜」
おっと、両親がイチャつき始めた。僕はさっさと風呂に入ってから自分の部屋に戻る。
2人は大恋愛の末、結婚できたようで、今でも仲良しだ。仲が良いのはいいんだけど、息子の前では少し自重して欲しい。
部屋に入って、軽く復習してから、ベッドに潜り込むと、誰かから連絡が入る。
ヒマワリが、グループにたくさんの写真を送ってきた。勉強中も息抜きに、パシャパシャ撮ってたなぁ。
みんな凄くいい笑顔で、大切な思い出が増えて嬉しくなった。
お礼の連絡と、また集まろうと返信してから眠りについた。
その後のゴールデンウィークは、去年と特に変わりない。
金曜日と土曜日はバイトに入り、バイトが終われば趣味に時間を費やした。日曜日は家族と出かけた。母さんの希望で、広々とした公園でピクニックをした。
息子に構わず、2人でいちゃついてた。お熱いことで……。
流石に見ていられなかったので、散歩がてら花畑を見ることに。うん、これはヒマワリが喜びそうだ。
僕は花を見ながら、花のように笑う彼女のことを思い浮かべていた。
彼女に惹かれている事実に驚きはない。
『シ、ヒミツ』
きっと、クラスメイトと彼女が話していたあの時、彼女と彼女の秘密を共有した時から惹かれていたんだろう。
『狼太君、おはよう!』
『アキラー! バイバ~イ!』
初回の笑顔も彼女らしかったけど、昨日あの笑顔が、頭から離れない。
もしかしたら彼女も僕のことをって、ふざけた妄想をしてしまう。
いや、でもヒマワリも僕のことを友人枠としては好きなはずだし、僕からアプローチしていけば、もしかしたら……。
「はは、何いってんだが」
いつもの僕らしくない。きっと、初めて信用のおける女友達ができたから浮かれてるんだ。
一旦冷静になろう。
それでも、隣にヒワマリがいれば、きっともっと楽しいんだろうなと考えずにはいられなかった。
冷静とは、なんだったか。
結局、花を見るとヒマワリを思い出してしまうので、そそくさと退散した。
意味不明な妄想劇を繰り広げている間に、ピクニックが終わる。その後、ショッピングをしてから外食に向かう。父さんと僕が大食らいなので、基本的に外食は食べ放題である。
もしゃもしゃ食べてると、時折視線を感じる。まぁ、細い2人がめちゃくちゃ食べてたら、目を引くよね。
特に害はないのでスルーして、食べ続ける。母さんは少食なので、自分が食べ終わると、ニコニコしながら僕たちの食事を見ている。
大食いのテレビ番組を見てる気分になるので、楽しいらしい。
家に帰ってから、今日のことを少し反省して眠りにつく。
夢を見た。君は泣いていた。理由は分からないけど、きっと悲しいことがあったんだろう。1人で泣いてる君。どうして、僕は君の隣にいないんだろうか。手を伸ばしても届かない、出したこともない声で叫んでも届かない。夢の中の僕は、いったいどこで何をしてるんだ。
「ヒマワリ……嘘だろ」
自分の声で目が醒める。確かに、夢の中に彼女はいた。でも、まさか寝言で名前をいうなんて思わなかった。窓の外を見ると、どんよりとした天気だった。雨が降るか降らないか分からない天気と共に、自分自身に嫌気が差した。
夢で出てきた人のことを意識している場合、さらに意識してしまうとどこかで聞いた。今日は、ヒマワリの前で、変な態度を取らないように努めようと思った。
「アキ、おはー!」
「おはー、ヒマワリ」
本人を前にすると。不思議と安堵するだけだった。
きっと、夢の中で泣いていた君ではなく。現実で元気に挨拶してきた君を見たお陰だ。
特に変な態度を取ることもなく、1日を終えることができた。
明日からも、何事もなく平穏な日々を過ごせると確信した。
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