僕からの秘密の手紙
【紅騎、大樹、偉央利、百合、桜、楓ちゃん、そして、ひまりへ
最初に、これは秘密の手紙なんだ。
絶対に、君たち以外には見せないようにしてね。
前置きはこれでおしまい。……突然のことで驚いたと思うけど、僕達家族は、この街から離れて遠くに行くことにしました。
事情は……ごめん、言えないんだ。
でも、どうしてもここから離れる必要があったんだ。
これを見てるってことは、みんながひまりから手紙を見せてもらってるってことだよね?
ということは、ひまり、桜、百合、楓ちゃんが目を覚ましたはず。
もう、大丈夫だよ。君たちの病気、死の花病はもう2度と発症することはないから、安心して欲しい。
なぜ断言できるのかも……言えないんだ。
僕は秘密主義者だからね。
さて、みんなには、僕がいなくなった学校生活でも楽しんで欲しいことをここに書いておきます。
ああ、もしかしたら、僕がひまり達が病気で完治する前に、逃げたと思って怒っているかな?
だとしたら、再開した時、すごく怒られるんだろうなって、今から恐怖してるよ。
高校三年生は、将来を決めるターニングポイントになると思う。
みんなにもし夢があるなら、それを追いかけるための進路を選んで欲しい。
後悔は魔物らしいから、やらずに後悔するよりも、やって後悔した方がいいと思うんだ。
僕は、自分の選択に後悔はしてないよ
だからね、やりたいことがあったら、全力で夢に向かって突き進んで欲しいな。
手紙って、書こうとすると、何を書いていいか分からなくなるんだね。
僕はこれからどうなるか、自分でも分からないんだ。
でもね、僕は死んでなんかいない。もしかしたら、久しぶりに会った時、みんなのことを忘れちゃってるかもしれないけど、その時はどうにかして思い出させてあげて。
頼んだよ、みんな。
思い出話もしたいけど、みんなと過ごした約一年のことを書くと、本にできそうなくらいに長くなりそうだから、ここまでにしておくよ。
どうか、みんなの人生が、健やかで幸せな生活になることを、心から願っています。
約1年間、お世話になりました。
ありがとう。
じゃあ、またね、みんな。
P.S.
最愛のひまりへ
もう、死の花病を怖がらなくて大丈夫。
もう、君の大好きな花を、嫌いにならなくて大丈夫。
君の好きな花は、また世界中から愛される花に戻るから。
だから、好きなものは花と花に関する物だと、堂々と教えてあげてね。
最後に、もしどこかで僕と会えたなら、太陽の光をたくさん浴びて幸せそうな満開の向日葵の花のような笑顔を僕に見せて欲しいな。
たとえ、僕以外の誰かと幸せになっていても、僕は幸せな気持ちになれるから。
ひまりの幸せそうな笑顔を見ることが、今の僕の夢です。
僕は君が幸せになることを、この世界中の誰よりも願っているよ。
……これが本当に最後。
もし、僕が君と出会えたら……
そのときは、僕からヒマリにプロポーズの言葉を送ります】




