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文化祭1日目と純真無垢な顔

 二学期が始まった。


 僕たちの友人関係に変わりはなく、毎日楽しい時間を過ごしていた。


 コウキの怪我も回復しつつある。ただ、本人はまだやりたいことが決まっていないらしく、どうするか迷い中。あまり急がずに慎重に選んで欲しいなと、僕は思った。


 怪我してノートが取れなかったりしたコウキを、献身的にユリがサポートしていた。

いい感じの雰囲気だなって、ユリとコウキを除いた僕らは思ってたけど、2人に特に進展はなかった。


 僕とヒマリも順調に秘密の交際を続けている。


 僕らの関係は、特に変化した点はない。強いて言うなら、二学期の登校日にピアスを空けて登校してきたヒマリを見て、その日に空けたんだねと驚いたくらいかな。

 

 今では、好きなピアスをつけて登校してるよ。デート中には、必ず僕が買ったピアスをつけてくれる。

毎回それを見るたびに、心が踊るんだ。


 ネックレスも体育の授業がある日以外は身につけてくれている。サプライズが成功したようで、なによりだと、僕は一安心だよ。


 僕らの関係は特に変わりないけど、周りは違う。


 まあそれも、僕が普通にヒマリ呼びしたせいでもある。

自分でも驚くくらい普通に呼んでしまったから、驚きだよ。前までは、あんなに目立つことが嫌いだったのに、今ではそれが気にならない。


 だって、気にしてたらヒマリと付き合うことなんて、できなかったしね。


 周りが有象無象って言ったのは僕なわけで、その視線を気にする意味はないよなって、今更ながらに思ったことが大きかったと思う。


 そう言う意味では、僕らの関係は変わらなかったけど、僕は変化していると思う。


 この重たい前髪も切ろうかなって思ってるしね……もう、目立たないように地味である必要はないからね。



 さて、時間が過ぎるのは早いもので、中間試験を終えたあと、文化祭準備を経て、今日は文化祭当日だ。


 文化祭は二日間行われる。


 1日目は学校関係者と身内のみ、2日目は一般公開日。


 今日は1日目だ。


 僕らのクラスは、文化祭といえば喫茶店でしょということで、メイド&執事喫茶店ということになった。


 喫茶店をやりたいクラスは多くて、見事文化祭実行員のクラスメイトがじゃんけんで勝ち取ってきた。


 


 担当は表方と裏方で、分かれることになっている。


 衣装はなんとほとんど学校に揃ってあるみたいで、サイズがなかったら発注するらしい。

前々からメイド喫茶やら執事喫茶をやるクラスが多かったらしく、過去の物が残っているのだそう。


 なので、メイドや執事といっても、服の形は年代ごとの流行り?みたいなのがあるらしく、統一感はない。

逆にこれはこれで面白いということになったので、服はお下がりを使うことで意見が一致した。


 全員分あるので、せっかくなら裏方も着ようという話になった。


 服は使い回しだから、クリーニングに出すので、汚しても構わないそうだ。ありがたい。


 ということで、予算内でできうる限りのことをして、わりとしっかりとした喫茶店に仕上がった。



 校長先生の長い話が終わり、さっそく文化祭スタート。


女子は更衣室に着替えに行って、男子はクラスで着替えることに。


「アキラ、お前休みの日みたいに、髪あげろや」

「あー……どうしようかな」

「お、意外と乗り気なのか!? なら、せっかくなんだし、顔出ししとけって!」

「……顔出しNGの配信者みたいだな」

「ふ、タイキ、突然面白いこと言わないでよ」

「ヒマワリも絶対喜ぶって! なあ、やろうぜ!」

「うーん、じゃあ、そうしようかな。イオリ、コウキ、タイキ、頼むよ」


 任せろと、コウキ達は笑う。僕がこうしているのも、コウキ達のおかげだ。


 誰かが後押ししてくれるから、僕もそうしようって思えるんだ。


 僕も少しずつ、変わってきたなって実感する。


 それにしても、なんか懐かしいな。コウキとタイキと仲良くなる前も、こうして後押ししてもらったなー。

僕は昔のことを思い出して、密かに笑った。


 女子達が戻ってくると、男子からのおおーという低い声が響いた。


 ヒマリは、僕の前に駆け寄ってきて、一回転してくれる。


「じゃーん、メイド服! どう、かわい……い???」


 昔ながらの黒と白のロングスカートのメイド服を着ているヒマリ。

明るい髪なのに、衣装とあってるのが凄いなって感じた。


 もちろん、とても可愛らしい。なぜだか、すごく困惑してるけど。


「メイド服はシックな感じなんだね。すごい似合ってる、可愛いよヒマリ」

「お、おふ……で、でしょ? そんなことよりアキラ髪の毛どうしたの!?」

「ああ、コウキ達にせっかくだからって言われてね。どうかな?」

「に、似合ってる……学校で髪の毛上げてるアキラってなんか新鮮だし、嬉しいし、あと、かっこいい!」


 めちゃくちゃ褒められた。お気に召してくれたようでよかった。


「お褒めの言葉ありがとうございます。お嬢様」

「うお……い、今のもう一回」

「はは、嫌だよ」

「えー、なんでよー!!」


 メイド服を着ているヒマリは、大人っぽく感じたけど、やっぱり可愛いが勝つな。

ぷんすか怒ってるヒマリを宥める。それと、聞きたかったことを聞いてみた。


「話は変わるけどさ、髪は短い方と長い方どっちが好き?」

「んー、両方いいけどな〜。短い方は見たことないから見たいかも!」

「じゃあ、切ってこようかな」

「本当に!? じゃあ、思い切ってバッサリ行こうよ!」

「うん、そうしてみるよ」

「ふふ、楽しみなことができちゃったなー! そだ、まだ写真撮ってなかったよね? 撮ろ撮ろ!」

「うん」


 僕とヒマリのツーショットをパシャパシャ写真を撮ってから、コウキ達とも写真を撮る。


 

 記念撮影が終わると同時に、実行委員が声をかけた。

シフトは1時間ずつ交代って感じで、じゅんぐり回すといい感じらしい。


 中には僕とタイキとクラスメイト、外にはヒマリとサクラとクラスメイトの数人がいる。


 それぞれが配置に着くと、校内放送でスタートの合図がかかった。


 始まるとすぐにうちのクラスは一瞬で長蛇の列を作ることになった。


 なにせ、僕らのクラスには、高嶺の花々がいるからね。

正直、高嶺の花々ってヒマリ達が言われてることすら、僕は忘れてたんだけどさ。


 クラスの盛況っぷりを見て、改めて凄い人気なんだなって思ったよ。


 ただし、毎時間いるわけじゃないし、シフトも決まってるし、みんながそれを知ってるわけもなく、結局はランダムなわけで、だから……どの時間もそこそこ混むことになりそうだなって予感がした。


「アキー! コーラ二つと、バニラアイスもお願い!」

「わかった」

「タイキくーん、お茶二つとお菓子セットお願い〜」

「ああ」

「なんか、アルバイトしてるみたいだよね」

「ふ、俺も同じことを思っていた」


 ヒマリとサクラ声がかかると、バイトを思い出す。まあ、こんなの比にならないくらいアルバイトは忙しいけどね。それでも、ヒマリとサクラとタイキと一緒に働けてる感じがして、なんだか嬉しい。


 席数もそんなに多くないし、火を使えないからアイスやお菓子などを分ける簡単なメニューしかないから楽だ。でも、その分回転も早いので、面倒臭いことには変わりなかった。


 ホールを1時間やったヒマリとサクラが、他のクラスの子と交代している。

僕が、ヒマリに冷たい飲み物を渡すと、ヒマリが嬉しいそうに受け取った。


「ヒマリ、つかれてない?」

「すっごい疲れた! でも、バイトみたいで楽しかったよ! アキとも一緒に働いてる気がして、みんなとバイトできたら楽しいだろうなって思えた!」

「はは、僕も同じこと思ってたよ」

「本当に? うちたち、気が合うね〜」

「そうだね」


 ヒマリがジュースを飲んでいると、実行委員から声がかかった。


「あ、水精ちゃんと狼太君、1時間2人で外周りの宣伝よろしくね! それ終わったら、今日は自由だから!」

「ありがとうー! ふふ、頼まれちゃったね?」

「サクラとタイキもさっき頼まれてたよ……宣伝する意味あるのかなって感じだけどね?」

「ふふ、確かに。でも、せっかくだし、行こうよ!」

「うん」


 ということで、2人で宣伝して回ることに。ヒマリの可愛い姿に、男子勢の視線が釘付けになっている。声をかけようする人もいたけど、僕やヒマリ自身が彼らの言葉を華麗に流して、自分たちのクラスに誘導することにした。


 宣伝しっぱなしだと疲れるので、他のクラスで飲み物を買ったり、食べ物を買ったり、他のクラスの出し物を見たりしていた。1時間が経過して宣伝効果もあったおかげなのか、長蛇の列ができている。


「これ、やばくない?」

「今なら、他のところが空いてるかもね」

「!! 確かに、じゃあ早速行こう!」

「あ、ちょっとヒマリ! 先に看板置かせて!」


 ということで、僕らは看板を置いてから、他のクラスの出し物を見ていく。

夏祭りで見かける射的やボールすくい、輪投げで縁日を表現したクラスや、クラス全員で作った手作りお面なんかも売っている。文化祭でお馴染みのお化け屋敷なんかもあった。

 

 あと、動画を自分たちで作ってそれを発表しているクラスもあるみたいだ。僕は頭がいいなと思った。上映時間だけ決めれば、他は文化祭を楽しめるからね。


「結構色々あって、面白いね!」

「そうだね、それに活気がすごいね」

「ふふ、準備期間は少し面倒臭いなって思ってたけど、やっぱり始まると楽しいよね」

「そうだね」

 

 ヒマリは癖なのか、僕と普通に手を握り始めた。ヒマリさんや、まさか君、テンション上がって学校ということを忘れてるのかい??? 

 

「ヒマリさん?」

「うん?」


 え、そんな純真無垢な顔で見られても……。あれ、僕がおかしいのか?


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