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プレゼントと可愛い彼女

 結果、掴んでは落ち、掴んでは落ちを繰り返して6回終了。


「く、悔しい……」

「はは、やっぱり難しいね」

「アームの位置取りが下手だった……」

「まあ、しょうがないね。技術がない僕たちじゃさ」

「ええい、諦めないでアキラもチャレンジ!」

「りょうーかい」

「本気でやってね!」

「やるからには真面目にやるよ」

「さすが!」


 ということで、1回目のチャレンジ。


 狙いは向日葵の種と種を持ってる手の間。ちょうどその間にアームが引っかかって、うまく上がってくれる気がする。


「お」

「うわ、すごい、うまい!」


 運良く狙い通りにいって、アームが持ち上がる。でも、ひっかかりが弱くて出口の手前で落ちていく。


「ああー」


 残念がるヒマリだったけど、そこから奇跡が起こった。


 高いところから落ちたせいか、ヘンテコなバウンドをして、見事にゴールイン。


「え」

「えええ!! すごいすごい! 取れちゃったよ!」


 そう、つまり取れたのである。バシバシ叩くヒマリと、放心状態の僕。

まさか、一発で取れるとは思わなかった。というか、取れると思ってなかったから、驚きだ。


 大きなぬいぐるみを取り出して抱きしめてヒマリ。うわ……これはすごい破壊力だ。


 袋に入れて持って帰ろうとかと提案したけど、見事に断られた。

前に抱っこしながら持っていくのだそう。……可愛いかよ。


 残りの5回は、違うUFOキャッチャーを試してみたけど、うまくはいかなかった。やっぱり、運がよかったんだろうって思った。 ヒマリの取りたかったハムスターが取れたので、ヒマリは満足そうだ。



 片手は僕と繋いで、片手にはぬいぐるみ。少し子供っぽい行動だなとは思ったけど、可愛いのでOKです。

いや、むしろアニメや漫画みたいな展開で良きだ。


 ヒマリを家に送る途中、少し寂しそうな気配を感じる。


「どうしたの?」

「うーん、いつもは朝から夜まで一緒にいるから、やっぱり寂しいなって」

「はは、僕たちのデートが長すぎるんだと思うよ? 僕たち、早起きできるからいいけど、普通のカップルは朝10時に集まらないと思うんだよ」

「え、そうなのかな? サクラ達は朝7時から一緒に早朝ランニングするって言ってたよ?」

「……それも特殊な気がする」

「ふふ、確かに特殊だよね……長く一緒にいるのは大変?」

「ああ、言い方間違えたね、ごめん。ヒマリと長く一緒にいれたら嬉しいに決まってるよ」

「ふふ、よかった」


 家の前で立ち止まり、お別れの挨拶。

その前に、実はサプライズで用意していたものがある。


「ねえ、ヒマリ。後ろ向いて」

「ええー、なにー!」

「いいから」

「もう、しょうがないなー!」

 

 後ろを向いてもらって、持ってきたプレゼントをつける。


「どう、かな? サプライズのプレゼントってやったことないんだけど」

「……あ、これ」

「その、ユリとサクラに教えてもらったんだ。ヒマリが彼氏からもらうなら、絶対ネックレスがいいって聞いてさ。今日の最後のプレゼントにと思って……。どうかな?」


 そう、最後の最後にサプライズとして渡したかった。というか、渡すタイミングが分からなくて、帰る直前になってしまったということは、内緒にしておく。


「嬉しい……ありがと、アキ!」


 そんな僕の気持ちを知らないヒマリは、嬉しさのあまり僕に抱きついてくる。

僕に抱きついてくると、ハムスターが間に挟まる。む、なんか邪魔をされた気分だった。


 僕の驚いた顔が見れて満足したのか悪戯な笑みで笑う。その表情と少し余裕のある態度に、大人っぽさを感じた。

 

「ふふ、ついね!」

「たまに、大人の魅力を出してくるよね、ヒマリは」

「そうだよ? ヒマリはアキラより一つ上のお姉さんだもん!」


 ヒマリは18歳、成人の年齢だもんね。大人なんだなぁ。

一つ上って感じをださないから、同い年だって思っちゃうよ。


「そういえば、そうだったね」

「えー、忘れるなんてひどいな〜」

「ごめん、ごめん」

「もうー! あ、そうだ、まだ写真撮ってない! 壁バックに撮ろうよ!」


 門扉のなかまで連れてかれて、壁を背景に写真を撮る。

家のライトがつくから、盛れると思ってと、ヒマリは笑顔で言う。


 ハムスターのぬいぐるみにピアスが入った袋を持たせて、ぬいぐるみは僕が持つ。ヒマリは片手にネックレスを持ってウインクを決めている。僕には効果抜群である。


「はい、チーズ!」


 カシャっとなり終わると、ヒマリが僕を見ているのがウチカメから分かる。

あんまり見られると、恥ずかしいなって思ったり。

 

 チラッと横を見ると、ヒマリと目が合う。

 

 撮り終わった流れで、キスをしてくるものだから、驚いて放心してしまう。

ヒマリは、僕を驚かせることに成功して、悪戯な笑みを浮かべている。


「ふふ、たまにはお姉さんの、うちからしないとね」


 僕からハムスターを奪い取って、ヒマリが顔をハムスターで隠す。

真っ赤な耳が見えていることに気がついてないんだろうって、にやける。


「ありがと、ヒマリ」

「むう、ヒマリの方が余裕ないの悔しいな」

「はは、悔しがらないでよ」


 そっと、ハムスターの頭から目まで出すヒマリが、本当に悔しがっているのが分かる。


 その訴えかける目が可愛くて、僕はヒマリの額に自分の額を合わせる。


「おふ」

「おやすみ、ヒマリ。よい、誕生日を」

「ふふ、ありがと」

「あと」

「ん?」

「好きだよ、ヒマリ」

「な!」


 額にキスをしてから、ヒマリの顔を拝んで、写真を一枚いただく。写真の中の、目が点になってるヒマリも可愛い。


 僕が満足げな顔で手を振ると、ヒマリは顔を真っ赤にしてるけど、一応手を振りかえしてくれた。


 本当に、可愛らしい年上の彼女である。 

 



 家に帰って眠る直前、夏休みの思い出を振り返ると、色々なことが起きたなって思う。


 みんなと旅行して秘密を共有して、祭りに行って花火をして、バイト先にもきてくれた。

昔の自分ではありえないことが起きていて、なんだか嘘のようだ。


 でも、一つ一つ、一枚一枚、全てが大切な思い出で、実際に起きたことなんだと、写真を見て実感する。


 何よりも変化したことは、僕とヒマリの距離がぐっと縮まったこと。


 元々素敵な人だとは思ってたけど、お互い想い合ってるなんて思わなかった。


 すごく嬉しかった。


 僕の好きな人は、内面が綺麗で、なおかつ外見も可愛らしい女の子。


 心の中で色々と葛藤して、それでも前に進もうと覚悟を決めてくれた強い子。


 それでも、彼女の心は決して強くはない。人並みに傷つきやすくて、自分のために誰かが傷つくことを嫌がる優しい子。


 だからこそ、彼女を守りたいと、僕は強く思うんだ。


 そこで少し気がかりなのが、彼女の死の花病。


 僕は彼女に大丈夫とは言ったけど、絶対に大丈夫という保証がない以上、ヒマリは不安と戦いながら生きていくことになる。


 そうさせたくない。僕が代償を支払えば、彼女を助けることができるかもしれない。


 でも、現状彼女の願いを叶えたところで、信じてはもらえないだろう。

 

 初めての好きな人、初めての恋人、ヒマリには楽しい思い出をたくさんもらった。


 アキと呼ぶ時の、満開の笑顔を枯らしたくない。


 ねえ、ヒマリ。


 君がヒマリと呼んで欲しいと言った時、僕は驚いたんだ。


 陽って名前のつく漢字は、アキラとも読めるし、ヒマリとも読めるんだよ。


 ヒマリって呼んでと言われた時、同じ漢字を使うあだ名が見えないペアルックみたいで、僕はなんだか心がむずがゆくて、少し照れくさかったんだ。


 今日渡したネックレスに装飾されてる小さな宝石にも意味があるんだよ。


 ベリドット、別名は太陽の宝石。


 8月の誕生石のペリドットは、太陽と同じ輝きを放つ石と言われてて、邪気から身を守ってくれるんだ。


 それと、ペリドットは、夜間の照明下でも、昼間と同じ輝きを見せるから、イヴニング・エメラルドとも言うんだって。


 その話を見た時、君と同じだなって思ったよ。


 可愛かったな……プレゼントをあげた時のヒマリ。


 ……ヒマリを守る太陽に、僕はなれるかな。


 やっぱり、僕は君を守りたいよ、ヒマリ。

 

 大切な思い出をくれた君を、僕を好きになってくれたヒマリのためなら……僕は。


「もし……君が死の花病にかかっても……僕が絶対助けて見せるから」


 そこでふと、疑問を抱いてしまう。

もしも、僕の関わる大切な人の誰かが、死の花病になってしまったら、僕はどうするのだろうと。


 ……考えることは止めた。この考えは、自分を嫌いになりそうだったから。


 それに、暗い未来を考えるなと言ったのは僕なんだから、僕も楽しまなきゃヒマリに怒られちゃう。


 次の楽しみなイベントは文化祭。


 なら、それを全力でみんなと楽しもう。 


 これからも大切な思い出をみんなと、そしてヒマリと作っていこうと、心に誓った。


読了、ありがとうございます!

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