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夏休みと急な旅行

 期末テストも終わり、夏休みが始まった。夏休みは合計で40日間。わりと長い休みだと思う。


 期末テストの結果だけど、ヒマワリとコウキの赤点は……無事回避された。

はしゃぐ2人をみて、僕らも安堵した。結構不安だったからね……。


 高校2年生になると、ちらほら大学受験を意識して塾に通う人が増えている。


 男連中はあんまり受験を意識していない。男たちにはそれぞれ夢があるので、大学受験は意識してないらしい。コウキは格闘技、タイキは家業の手伝い、イオリはなんと部活をやめて音楽活動に専念するんだって。


 情熱を持って取り組めることがあることを尊敬しつつ、羨ましくも思う。僕には、あまりこれと言った夢がないからさ。だから、僕は男たちの夢を応援する。夢を応援してくれる友達がいてくれると支えになるって、夢を掴みっとった人達が言ってたからね。


 サクラとユリは意識しているようで、一年生の頃から家庭教師を雇っているんだって。……お金持ちや。


 ヒマワリは特に気にしてないみたい。未来云々よりも今を楽しむ方向にシフトしているようだ。


 僕はというと、一応勉強はしてる。でも、どの学部に行きたいとかはない。どっちかっていうと、料理に興味が出ている。専門学校もありかなとは思ってる。


 店長のお店は、キッチンといってもオープンキッチンなので、客席の様子とかが見えるようになってる。

僕が作った料理をお客さんが笑顔で食べてる姿を見ると、結構嬉しかったりする。


 まあ、きつい仕事ではあるから、かなり悩んでるけどね。

選択肢は広い方がいいので、なるべく勉強も怠らないようにはしてる。家の近くの大学が理想だから、それに合わせた勉強をしている。


 夏休みの宿題を早い段階で終わらせるために、またまたタイキの家にお邪魔することに。カヤさんが毎日来ていいぞと言ってくれたけど、流石に悪いから断ったところ、すごく寂しそうな顔をしてくるので、ほぼ毎日通わせてもらった。


 僕はバイトがあるけど、大学生の先輩たちが稼ぎどきだとシフトをバンバン入れてるので、週3回、朝の準備からランチで終わる。稼ぎどきだけど、朝はみんな弱いらしい。


 なので割と時間に余裕があったので、僕たちは12日間ほどで夏休みの宿題を終わらせることができた。


 1週間くらいで宿題が終わったサクラとユリは、残りの3人の宿題を手伝いつつ受験勉強をしていた。僕とタイキは交互に教え合いながら宿題をこなしていた。途中、ヒマワリやイオリからお助けが何回か入ったので、それも見ながら自分の宿題をテキパキこなした。


 僕たちと一緒にカエデちゃんも宿題をこなしつつ、受験勉強をしている。一生懸命頑張る彼女も、割と早く宿題を終わらせていた。

 

 僕とタイキは9日目で宿題が終わった。なので途中から、何回か稽古に呼ばれたので、タイキと僕で体を動かすことに。実は、タイキの家で期末テストの勉強会をした後に、何度か稽古にお邪魔している。お世話になってるし、せっかく呼ばれたのに断るのも申し訳なかったからね。


 武道は心身ともに成長することができる気分になるので、意外と楽しかったりする。まあ、稽古場のみなさんの邪魔にならない程度にだけど。タイキもダイコクさんも喜んでくれるし、やってよかったなって思う。タイキは羨ましそうに悔しがってたよ。


 全員の宿題が終わると、ヒマワリとコウキ、イオリはそれはそれは喜んでいた。こんなに早く終わらせたことがないって。これで残りは自由だーとか。


 僕たち3人の頃は、コウキに強制して宿題を終わらせることはなかった。今回は、ユリがいてくれたお陰だ。鬼の表情でコウキを追い詰めていた。……あれは結構怖かったよ。


 自由になった僕たちは、海に行きたいという話になった。ここからだと時間がかかるから、どうしようかなって話になると、スッとサクラが手をあげる。


「ふふ、みんなに朗報だよ〜」

「なになに!?」

「……大事になりそうな予感しかしないわ」


 うわあ……すごいフラグ立てたな……。


「実はね〜」


 その話を聞いたヒマワリとコウキとイオリは大喜びだ。宿題を早めに終わらせたから神様からご褒美だってすごいはしゃいでいた。


「あの……アタシも行きたいな〜、なんて……」

「もちろん、一緒に行こうね〜」

「やったー! 受験勉強、わりと余裕あるし行っても良いよね、おにいちゃん!」

「サクラがいいなら、俺は問題ない」

「やっふー!」


 自分も枠組みに入ってると思ってなかったカエデちゃんも大喜びだ。


 本当にいいのかなと気にすると、サクラは本当に大丈夫だよと言うので、お言葉に甘えさせてもらった。

僕もその日の連日は運良く休みだし、両親に許可を取らないと。


 今日の夜、全員親から許可を貰えたそう。ヒマワリとユリは、男もいることを伝えなかったみたい。サクラ達とって言えば、嘘はついてないことになるそう。まあ、確かに嘘ではないよね。


 というわけで、明日はみんなで必要な物を買いに行くことに。お世話になるので、何か買っていこうかと言ったところで、タイキが家のお酒を持っていくことに。……正直、僕たちが持っていっていいのかは分からないから一旦保留にしようと思ったけど、ダイコクさん達に勧められた。さらに、専用のバスが迎えに来てくれるそうで、その時に運転手に渡せばいいとのこと。どんだけリッチなんや……。


 聞くところによると、手土産のお酒はかなりの上物で、滅多に市場に出ることがないらしい。……僕たち高校生では、手が出ない金額だと思う。ダイコクさんとゲンさんが、子供は気にするなというけど、やっぱり気になるものは気になるので、僕たちができそうなことはありますかと聞くと、稽古に参加するように言われた。果たして、それでいいのかと思ったけど、ダイコクさんが嬉しそうにするので、そうすることに。


 コウキにはむしろご褒美になってしまうと、ワクワクしていた。自分を鍛えるのが好きなコウキには、確かにうってつけだ。



 朝から遊びたいからと、夜中に向かうことに。ヒマワリ達はサクラの家に向かい、僕たちはタイキの家でお世話になることにした。手土産なんて必要ねえと言われるけど、数回に一回は受け取ってもらわないとこっちの気が済まないと伝えると、カヤさんにハグされる。いい子すぎて可愛いらしい。


 夜まで時間を潰して迎えを待つと、どうやらついたようだ。すごく立派なバスで、肝が冷えたけど、気にしたら負けなのでせかせかと乗り込んだ。運転手さんにダイコクさんが手土産を渡してくれた。すごく丁寧に受け取っていたのを見て、かなりの上物なんだと確信した。


 そんなこんなで、バスに乗り込んだ僕たちは、先にいたサクラ達と合流した。

色々規格外で驚いてばかりだけど、今日はバスの中で眠って明日に備えることにした。


 バスの中の席は広々と余裕もあるし、ふかふかだった。サクラはこんなにお金持ちなのに、なんで僕らの高校に来たのかは不思議だけど、色々あるんだろうなと思ったので、聞くのは遠慮しておいた。


 みんな、それぞれ内緒にしたいことはあるだろうしね。親しき中にも礼儀ありだ。何事も踏み込み過ぎは良くないよね。


 ちなみに、バスに乗っていると忘れるくらい居心地が良かったこともあり、僕たちは夜中ということもあり爆睡していた。


 次の日、バスを降りたら超高級旅館が目の前に……。こんなところ、本当に泊まっていいのかなと、不安が生じる。


 サクラ以外のみんなも佇んで動かない……いや、動けないでいる。

サクラは呑気に旅館に向かっている、焦ってサクラを追いかける。


 ずらっと並んだ従業員の皆様方がお辞儀をしている。その中心に、貫禄のある女性が1人。高齢なのに、まったく腰が曲がっておらず、綺麗な白髪と高級な着物がその雰囲気を出しているのだろう。


「よく来たね、サクラ、久しぶりだね。もう……大丈夫かい?」

「うん、ミドリおばあちゃん久しぶり〜。仲良しのお友達ができたから〜」

「……そうかい。おや、男もいるじゃないか。まあ、立ち話もなんだし、さっさとお上がり」

「お、お邪魔します!」

「ヒマワリ……家じゃないんだから」


 大きな声で挨拶するヒマワリに、ついツッコミを入れてしまう。ミドリさんは、包み込むような優しさでヒマワリと接する。


「いいんだよ、家だと思って寛いでおくれ。立場に関係なく寛げる空間を提供することが、この旅館の方針だからね。さ、こっちだよ。いらっしゃい」


 ……くつろげるのか、果たして。そんな疑問が頭の中で反芻するけど、元気に挨拶するヒマワリの声を聞いて、少しだけ安心することができた。


 案内された部屋は、畳の匂いが田舎の祖父母の家を連想させ、高級品であろう家具や壺、掛け軸以外は落ち着いた空間の顔を見せる。障子で隠されている場所を見にいくと、大きな窓から海が見えた。


「すごい」


 みんなが口を揃えていう。これはもう、すごいとしか言いようがないほどの絶景だった。


「プライベートビーチってやつさね。と言っても、この旅館に若者はこないからね、あんた達だけで占領できるよ」

「あの、ありがとうございます。こんなに良いところを、タダで使わせてもらって」

「ふふ、若いのに気遣える良い子じゃないか。気にしなくて良いさ、ギリギリで先客がどうしても断れない予定が入ったと言ってキャンセルしてきたんだ。お金も払ってもらってるから、どなたかに譲ってくれと言われてね、まったく懐が深いことだよ。さすがに、サクラが孫だからといって、お客様を無下にはできないだろ? ここのお客様は、スケジュールがぎっしり埋まった時間のない方達ばかりでね。キャンセル待ちのお客様もいやしない。それに、久しぶりに孫の顔も見たかったしね。さあ、これで遠慮する必要はなくなったね?気にせずゆっくり過ごすと良いよ」

「そうなんですね……でも、やっぱりお礼はしたいので、ありがとうございます」

「ありがとうございます!」


 僕がお礼を言うと、みんなも声を揃えていう。どうやら、途中から僕たちの会話に気がついたようだ。


 お礼を言った後で、僕の頭を撫でるミドリさん。失礼な言い方だけど、撫でる仕草からは貫禄はなく、普通のおばあちゃんと大差ない、優しい撫で方だ。 


「ふふ、それにタダじゃないからね。これはどの子からのお土産だい? 大層なものをくれたみたいじゃないか」

「俺です。俺は牛山大樹、祖父は牛山大黒です」


 正座して頭を下げるタイキ。こういうところを見ると、シンプルに尊敬する。子供とは思えない雰囲気があるタイキに、同じ男として惚れ惚れしてしまう。


「タイキの祖父のことは知ってるよ。いい酒を作る家だったね。まったく、随分な物を持たせた物だ。サクラ、上物を逃すんじゃないよ」

「分かってるよ〜、ミドリおばあちゃん」

「おやおや、これはひ孫の顔も意外と早く拝めるかもね」


 とんでもない一言を放っているけど……。サクラは笑顔だし、タイキは意味が分かっていないみたいだ。

タイキがまさか……鈍感系主人公だったなんて思わなかったよ。


「それじゃあ、おいぼれはこの辺で。青春はあっという間に過ぎ去るから、今を楽しむといい。それじゃあ、またね」

「ミドリおばあちゃん、ありがと〜!」

「ありがとうございます!」

  

 全員で頭を下げて挨拶をする。みんないい子だねと言ってから、ミドリさんは仕事に戻った。

 

「うっしゃ、早速海行こうぜ!」

「切り替え早いわね」

「ここもいい部屋だけどよ、せっかく来たんだし楽しもうぜ!」


 コウキはすでに楽しむ気満々だ。切り替えの速さに、ユリがツッコミを入れる。

たしかに、来たからには楽しまないとね。


「賛成だよ〜」

「アタシも早く行きたい!」

「オレも」

「楽しみだね〜!」

「そうだね」


 ということで、さっそく海に出かけることに。


次、熱い展開

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