思い出話に花を咲かせようか
心機一転の投稿です。
よろしくお願いします。
2023/07/18 0:23 一部追加しました。
【あらすじ、超えた→越えた】 僕は、ヒマリの家に向かう。
ヒマリの家に向かって歩いていると、ヒマリと一緒に歩いた帰り道の思い出が蘇る。
出会ってからほぼ毎日、僕はヒマリと一緒に登下校をした。
何気ない会話と、ヒマリの表情が脳裏にチラつく。
目を閉じなくても鮮明に思い出せるくらい、僕にとっては毎日が大切な日々だった。
改めて思うと、本当に贅沢だと思う。
一目惚れに近い形で君を知ってから、君と毎日一緒にいた時間は、本当に宝物のように大切な思い出だ。
今、隣に君がいない。
それだけなのに、僕の心にはポッカリと穴が空いてしまったみたいだ。
ヒマリとの思い出を振り返りながら歩いていれば、あっという間にヒマリの家の前についた。
ここでもよく立ち話をしていたな。
君はどこに話の種を隠しているのかと思うくらい、ずっと喋り続けていたよね。
君の話を聞いているのがすごく楽しくて、時間が溶けた感覚になっていたんだよ。
君はどうだったのかな。
……僕と同じ時間の流れを感じてくれたら嬉しいよ。
「ふぅー」
すごく緊張する。なにせ、ここにくるのは4日ぶりだ。
インターホンを押す指が震えそうになる。
心臓が弱く締め付けられる気持ちになって、足がふわふわと気持ちの悪い感じになる。
ふわふわというより、イラつく感じだ。自分の足が、自分のではないみたいな感覚。
もう一度、大きく深呼吸してから、僕はインターホンを押した。
「はい」
「こんにちは。アキラです」
「……また来てくれたのね、アキラくん。ちょっと待っててね」
僕はヒマリのお母さんと世間話をしてから、ヒマリに会って話がしたいと許可を取る。
「ええ、もちろんいいわよ。ヒマとゆっくりお話ししてあげて」
「ありがとうございます」
ヒマリのお母さんから許可を取れたので、僕はヒマリの部屋へと向かう。
一度、扉の前で立ち止まり、深く息を吸って吐く。
「ふぅ……」
もしかしたら、本当に目を覚ましていることを期待しながら、緊張する体を制御して扉を開ける。
「……」
規則正しい寝息を立てながら眠っているヒマリ。
その体にはいまだに蔦が生えて体に巻きついている。4日前よりも成長している気がして、僕の心臓には棘付きの鎖が巻きついたのではないかと勘違いするような痛みに襲われた。
僕の目から涙が溢れてしまいそうになっている。
それは、心臓の痛みで涙が溢れそうなのか、ヒマリが死に向かって歩き続けていることに対しての深い悲しみなのか、はたまたその両方なのか、僕には分からなかった。
「奇跡なんてそうそう起こるものじゃない、か」
僕は一瞬気が滅入ってしまいそうになったけど、今日やることを思い出して気合を入れ直した。
声が震えないように腹に力をいれて、強すぎず弱すぎずの声で、寝ているヒマリに話しかける。
「やあ、ヒマリ。君は本当に寝坊助のようだね。そろそろ起きないと、みんなが心配するよ?」
「……」
「まあ、起きないよね。なら、このまま君が僕の名前を呼んでくれるまで、僕はここに居座り続けようかな」
「……」
「はは、冗談だよ。残念ながら夕方には帰るんだ。いつもは君が話をしてくれているから、今日は僕が話そうと思ってさ。ヒマリは、今日は聞き専に徹底してもらうよ」
「……」
「……ねえ、手を繋いでもいいかな?僕は君と手を繋ぐことが好きなんだ。まあ、答えてくれなくても、繋いじゃうけどさ」
「……」
「じゃあ、始めるね。僕と一緒に、思い出話に花を咲かせようか、ヒマリ」
そうして、僕は寝ている君に向かって話し始める。
僕が僕でいられるうちに。
今の僕という記憶が消える前に。
今の僕が……死ぬ前に。