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六分咲き

<ヨシノ>


眠い。眠い。眠い。


春の陽気のせいかぼうっとして欠伸が出る。


気持ちがいい。天気がいい。でも風が強い。


あーそれにしても眠い。


眠い。眠い。眠い。



「おいどうした? 」


「いや。別に眠いだけ」


「そうか。それはそれは。なあ今日どうする? 集まりがあるだろ」


「僕はちょっと…… 用事があるんだ」


「そうか。分かった」


相棒は残念そうだがもちろんそんなことは無い。内心では喜んでいる。


ライバルが減ってチャンスが増えるのだから。



結局僕らは成り行きで半ば強引にテニスサークルに入ることになった。


サークルの第一印象は良くなかったが面倒見のいい先輩方の扱いにも慣れた。


居心地も悪くない。不満も解消された。後はもう少しきれいな人が居たら最高。


高望みするのもどうかと思うし文句を言える立場にもない。


それに新入生にも当たりがあるかもしれない。


また、なかなか顔を見せないメンバーもいるようで期待は膨らむばかりだ。


相棒もその辺が気になっているのか毎日顔を見せている。


僕は付き合いきれないのでパスする。


ただそのうちひょっこりとヨシノさんが現れるかもしれない。


その時は言うように釘を刺している。



講義を聞き流してどうにか帰路。


サークルに立ち寄ることなく真っすぐ例の公園へ。


前回偶然出会った場所へ。時間もちょうどいい頃合い。


一日中眠気が取れない。


眠い目をこすりながら欠伸を堪えポトポト桜並木を歩く。



あれからどれだけの月日が経っただろう。


一年? 半年? 一ヶ月?


いやそんなことは無い。この桜並木もしっかり花をつけたままだ。


そう三日しか経っていない。どってことない月日。


我慢していると思うのもおかしいし待ち焦がれるなどどうかと思う。


しかし僕には長すぎる。余りにも長いのだ。変だろうか?



ヒラヒラ

ヒラヒラ


春の風は強く、耐え切れなくなった花は散りその数を徐々に減らしていく。


ふと思い出す。


昔見た映画のワンシーンが流れる。


それは悲しい男女の別れを描いたもので音楽と映像が僕の心を惹きつけた。


何だったかなあ。確か主人公がヒロインに教えてもらうんだけど。


うーん出てこない。


桜の花びらが落ちるスピードに関するお話。


うーん。やっぱり思い出せない。単位があったようななかったような……


まあいいか。


音楽は耳の中に残っているのだし歌ってみれば思い出すかもしれない。


でも恥ずかしいしな……


ブツブツ

ブツブツ


完全に自分の世界へ。


周りが見えなくなっていた。



「あれまた君? 偶然だね」


待ち人現れる。


「ヨシノさん。ずっと探していたんですよ。ここに来たらまた会えると思って」


「えっと…… 何で? 」


「もう一回チャンスを! 会えると信じてました」


「へっ? おかしな子」


「さあデートしましょう」


「ああ、覚えててくれたんだ」


「もちろん。迷惑でしたか? 」


そんな事ないと首を振る。


「ヨシノさん。サークルに顔を出してくれないんだもの」


「へへへ。ちょっと事情があってね」


この様子だと僕を拒絶してるわけではなさそうだ。


「行きましょうか」


二人はデートの約束を果たす。


                 続く

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