第五十八話・「ほんはほほはれもひいへはいはよ」
もりもりばくばくむしゃむしゃ、ごくん。
もりもりばくばくむしゃむしゃ、ごくん。
擬音語で説明してみたわけだが、分っていただけたであろうか。
分っていただけたのであれば……嬉しい。
「おかわり! 特急よ!」
「は、はい。しばらくお待ちください」
「しばらく? 特急って言ったでしょ。少々お待ちくださいとか、しばらくお待ちくださいとか、そういう気休めの言葉はいらないのよ。求められるのは料理を持ってきたという結果なの! 兵は巧遅を尊ぶって言葉もあるくらいなんだら、ぱっと行ってさっさと持ってくるのねっ!」
「……。かしこまりました、キズナ様」
下がっていくウエイトレスのしかつめらしい態度の中に、一瞬の躊躇があった。
気持ちは分かるぞ。ぱっと行ってさっと持ってこいと言っているくせに、巧遅を尊ぶとか矛盾したことを言っている無能女を訂正したいのであろう。
ウエイトレスよ、悪いが、もう少しの辛抱だ。
「ふっふっふ、キズナ様だって」
嬉しそうにするキズナ。
どうしてだろうな、馬鹿弟子が嬉しそうにしていると、俺は無性に水を差したくなる。
「お客ならば誰でも神様だ。お前に限ったことではない。お前の場合、ただの飾りだ、反面教師。ことわざを引っ張り出すのはいいが、その内容を良く知ってからにするのだな。正しくは、兵は拙速を尊ぶ、だ。戦争では、作戦にわずかな不備があろうとも、素早く戦いを起こすことが大切である、という意味だ。分かったか、馬鹿弟子」
むっとするキズナは無視。
キズナの傍若無人ぶりはいつものこととして、以後のウエイトレスのプロ根性ぶりもすさまじかった。
あらかじめキズナの注文を予期しているのではというスピードで料理を持ってくる。歩く姿からは焦りを感じさせず、なおかつその所作はよどみない。
料理をテーブルに置き、空いた皿を下げていく。注文を聞く姿と、持ってくる姿には、真剣勝負を挑んでいる武人の覇気すら感じられてしまうから不思議だ。
これならばどうだ、これではどうだ……そんな無言の矛が繰り出されているようだった。
「お待たせしました、鴨フィレ肉のミックス・スパイス風味です」
料理を置き、追加の注文を受けて、一分と立たずに次の料理を持ってくる。食べる方も作る方も狂気の沙汰としか思えない。
ここからは見えないが、現在厨房はどうなっているのだろうか。
きっと阿鼻叫喚だろう。
「アンタはこれ食べないの? 食べたいのなら、私があーんしてあげるわよ」
鴨肉の刺さったフォークをこちらに向けてくる。
「謹んで辞退させていただこう。第一、俺はもう満腹だ」
「あっそ、なら食べちゃうわよ」
俺はすでに満腹感を覚えて戦線離脱している。
「……鴨のフィレ肉と甘くピリっとしたスパイスの香りと、蜂蜜でキャラメリゼしたリンゴ……満腹である今では己を苦しめる毒にしか見えんぞ。ちなみに、キャラメリゼとは砂糖を高温で焼き飴化させることを言うぞ。覚えておくと良い」
「ほんはほほはれもひいへはいはよ」
そんなこと誰も聞いてない、などと言いたかったのだろう。
人の親切を無下にするとはばちあたりめ。
読んでくださった方、興味を持って下さった方、ありがとうございます。
久しぶりの後書きです。小説とは何ら関係ないので、読み飛ばして下さっても結構です。
今回は、私の趣味の一つであるゲームのお話でもしてみます。私はFPS(First Person Shooter)というジャンルのゲームを主に嗜好します。一人称視点で銃を撃ち合ったりするアレです。主戦場はPCで、オンライン対戦を頑張っています。今回は『Call of Duty: Modern Warfare 2』をプレイしました。前作である『Call of Duty: Modern Warfare』の続編ですね。知っている方もおられるのではないでしょうか。ちなみに日本では来月下旬にスクエアエニックスから発売されます。さて、このゲーム、シングルプレイをクリアしてみての感想ですが……はっきり言いまして圧倒されます。ストーリーはまさにジェットコースターのようにあっと言う間に過ぎ去っていきました。物語中盤で、世界的なモニュメントが半壊しているシーンを目の前に見せつけられるシーンなどは、信じられない光景が目の前に広がっている感じで……ゲームの没入度にもよるでしょうが、息をのみました。エンディングが終わったあとは、思わず画面の前で拍手をしてしまいました。ブラボー。これからマルチプレイに突入したいと思います。というわけで、興味のある方は是非。……もちろん小説の更新も頑張ります。それでは評価、感想、作者の栄養になります。