第三十八話・「……馬鹿リニオ」
そ、そうだ、キズナよ! 今こそ常日頃からの恩を返すときだっ! 俺を助けるのだっ!
「ふあ……ああぁっ……おやすみ」
なんたる馬鹿弟子っ!
追い詰められる師匠に弟子はなんの興味も示さない。ヒップバッグを外してベッドの脇に放り投げると、キズナは皆が居るのも構わないでスカートのホックを外し始める。
『捕まえたの』
「お見事です、エリス」
両手で優しく確保するエリス。ぱちぱちと拍手するうるわ。健闘むなしく捕まった哀れな俺。
「では、キズナ、ペットをお借りします」
『ちゃぷちゃぷしてきます』
「はいはい……思う存分ちゃぷちゃぷしてくればいいのよ。後悔したって私は知らないから、好きにしなさいよ。最低限、生きて返してくれればそれでいいから」
……鬼。
俺はお前の師匠だぞ。早急な待遇改善を申請する。
「まったく……馬鹿リニオ」
つぶやきを落とすと同時に、ミニスカートを足下に落とすキズナ。すとんという音が、衣擦れとともに舞い上がる。恥ずかし下もなくさらされる太もも。お気に入りの黒い下着が、制服の裾に絶妙の角度で隠れる。履いていたブーツを脱ごうと屈む中でちらちらと見え隠れする黒の下着は、歓楽街のストリップダンスを思わせた。
エリスもいるので口に出したりはしないが、キズナの肢体はそこいらの女では太刀打ちが出来ないぐらいに、無駄がない。
均整の取れた体つきは戦闘向きだし、それでいてしなやかだ。美と武を両立させることはなかなかに難しい。武だけを追い求めるならば筋骨隆々で構わないわけだし、スレンダーである必要性がない。とても残念なことではあるのだが、胸などはあればあるだけ論の外となる。
故人はかくも語ったものだ。二兎を追う者は一兎をも得ず、あるいは、天は二物を与えず、と。要するに両手に花を持つことが出来ないのが世の常。けれど、現実として、ここにそれを両立できそうな女が居ること自体が、ちょっとした奇跡ではある。
それは俺の師匠としての力量がものを言うわけだが……。
キズナはあっと言う間に下着一枚の格好になってしまう。着ていた服やブーツを周りに転がしたまま、ブラに手をかける。胸がないキズナのブラは黒のフロントホック。俺とエリスの存在などは羞恥心を微塵も刺激されないのか、ついには胸を張ったまま堂々とブラを脱ぎ去ってしまう。
パンツ一枚。
『綺麗』
「悔しいですが、エリスに同意です」
…………。
一応、目はつぶらせてもらった。言っただろう、俺は豊満な身体にしか興味がないのだ。弟子の身体を見て興奮する師匠など、最低きわまりないだろうが。
補足するが、残念などではないぞ。
……本当だぞ。