わたしの“きし”さま
いたいよ!
おもたいよ!
くるしいよ!
やめて! やめてよ! おじちゃん!
えっ!? なに? わたしを、ぶつつもりなの?
やだ! やだよ! いたいの、やだよ!
どうして? わたし、なんにもわるいことしてないよ?
“しんでん”にいたときは、ぶたれたことなんてなかったよ。
おねがい、やめて!!
あれ? おじちゃんが、もうひとり。
わたしにのっかってるおじちゃんのうしろに、もうひとり、おじちゃんがたってる。
……おっきいな。すっごく、おっきい。おっきなおじちゃんだ。
なんかくろくて、ぼろぼろのかっこうをしてる。
あっ!!
おっきなおじちゃんが、おじちゃんをもちあげちゃった。
すっごい! うでいっぽんで、おじちゃんを“たかいたかい”してる。
すっごい、おっきなおじちゃん。すごい。
とっても、とっても、ちからもちだ。
このおっきなおじちゃんはだれなんだろう?
どうしてここに?
もしかして……わたしをたすけにきてくれたのかな?
わたしが、「たすけて」っていったから?
わっ!!
おっきなおじちゃんが、おじちゃんをたたいた。
おじちゃんの、あたまが……
「ぱーん」って、はじけた。
おじちゃんの、あたまが……
はじけて、われて、
まっかなおはなが、さいたみたい。
おじちゃん、うごかなくなっちゃった。
かみさまのところに、いっちゃった。
ちょっとかわいそうだけど……わたしにひどいことしようとしたから、
……うん、しかたないよね。
うん! しかたない、しかたないよ!
きっと、かみさまがおこっちゃったんだ。
あっ!!
わたし、しってるかも!
“みこ”のおねえさんから、きいたことがあるかも!
「おひめさまが“ぴんち”になったとき、
“はくば”にのった“きし”さまが、たすけるためにかけつける」んだって!
たてるか?って……うん、だいじょうぶ。
ちょっといたかったけど、どこもけがしてないよ。
わあ! おっきな、て。
おじちゃんのて、すごくおっきい。からだも、すごくおっきい。
そっか!
“はくば”にはのってないけど、
ぼろぼろで、おじちゃんだけど、
なんか、かおがこわいけど、
そっか、
わたしはおひめさまだから。
わたしの“ぴんち”に、わたしをたすけるために、
このおじちゃんが、かけつけたんだ。
だから、きっと、このおじちゃんが、
このひとが、
このひとが、わたしの……
あっ! いけない! ちゃんとおれいをいわなきゃ!
「たすけてくれて、ありがとう! わたしの……わたしの“きし”さま!」