よあけのまちで
あー、よくねたー。
あさだ。ぼんやりとあかるいおそらから、あさひがおちてきてる。
まちもそろそろおきるのかな?
とってもしずかなまんまだけど。
くんくん。
なんだかくうきが、へんなにおいする。
なんだろう?だんろのまきが、もえたときのようなにおい。
あれ?
ああ、にゃんにゃ。あなたもおきてたんだね。
うりうり。うりうり。ほら、おはようのなでなでだよ。
どう?きもちいいでしょ?
いっしょにいてくれて、ありがとね。
そういえば、“ゆめ”のつづきはみられなかったな。
ちょっとざんねん。
きれいだったのにな。まっかにもえる、ほのおのひかりが。
……そういえば、ほのおのなかにたってた“あれ”は、いったいなんだったのかな?
おっきな、おっきな、ひとみたいなかげが、ゆらゆらしてるほのおのなかでうごかずに、じぃっとたってた。
そしてこっちを、じぃっとみてたようなきがする。
おなかがなった。
そうだった。わたし、おなかがすいてたんだ。
おかしは…………やっぱり、ふってきてないかぁ。
とってもざんねん。
かみさま、どうしてなんですか?
おねがいをきいてくれないなんて、わたしはわるいこなんですか?
だめだっていわれてたのに、“しんでん”のおそとにでちゃったからですか?
わかんない。もしかして、かみさまはおこってるのかな?
おなかすいた。
おなかとせなかが、くっついちゃいそう。
しょうがないな。おかしがふってこないなら、さがしにいこうっと。
にゃんにゃ。あなたもいっしょにいこうね。
よいしょ。だっこしてあげる。
よーし、おかしをさがして、しゅっぱつだー。
あれ?
あのおじちゃん、わたしをみてるのかな?
たちどまって、こっちをじぃっとみてる。
にゃんにゃ……じゃない。やっぱりわたしを、わたしのことをみてる。
あっ。こっちにきた。
えっ?
わたし?
うん。ひとりだよ。じゃなかった。ほら、にゃんにゃといっしょだよ。
おとうさんとおかあさん?
ううん。いないよ。わたしには、どっちもいないの。
なまえ? わたしの?
わかんない。“しんでん”のみんなには、“ほうりのひめ”ってよばれてるよ。
うん。そうなの。わたし、おひめさまなんだよ。えっへん!
おなか? うんうん! すいてるよ! おなかぺこぺこなの。
えっ、ほんと?
おじちゃんち、おかしがいっぱいあるの?
うんうん! いくいく! いっしょにいく!
ありがとう! おじちゃん。おじちゃんはとってもやさしいひとなんだね!
ありがとう! おれいに、いのってあげる。
どうかあなたに、かみさまのあいとおみちびきが、あたえられますように。
ここがおじちゃんちなの?
べっども、てーぶるもないよ?
とびらもないね。すかすかだ。
あと、よけいなおせわかもしれないけど、もうちょっと、おそうじしたほうがいいんじゃないかな?
なんかきたないし、なんかにおう。くちゃいよ、くちゃい。
ところで、おかしはどこ? どこにあるの?
わたしもう、ほんとにおなかがペこぺこなの。
えっ!?
なになに!? おじちゃん。なにしてるの?
いたいよ、どうしてそんなにつよくわたしのてをもつの?
わぁっ!
いたいよ、どうしていっしょにじめんにねっころがるの?
わたし、もうねむくないよ。
おもたいよ、おじちゃんのからだが、おもたいよ。
あっ! にゃんにゃが!
まって! にゃんにゃ! まって! おいていかないで!
いたっ!
やめて! おじちゃん、やめて!
いたいよ、おじちゃん。おもたいよ、おじちゃん。
やめて! やめてよ!!
どうして? わたしのこえが、きこえてないの?
なにしてるの? おじちゃん。
どうしてずぼんをぬいでるの?
やだ。いやだ。
なんか、いやだ。
わかんないけど、すごくいやだ!
やめて! やめてよ!
いやだよ、いやだ!
やだやだやだ!
いたいよ! おもたいよ! いきがくるしいよ!
やだよ、こんなの。こんなの、いやだ!
だれか、だれか……
だれか……
「だれか、たすけて!! たすけてください!!」