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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編 本

作者: 綾瀬徹

私の日課は図書館でカルチャー雑誌を読むこと。その日も昼下がりに図書館に向かった。


 平日の図書館は老人が新聞紙を読み耽っている光景を度々目にする。受付を真っ直ぐ通り、日本文学、海外文学の本棚がズラッと並び、奥に勉強スペースの様な場所がある。


 気になった洋書を手に取り本棚の横にある一人掛けの椅子に座る。


 サラッと冒頭の部分を読んでいるとこちらを見る視線が気になった。その方向に視線を向けると真夏なのに真っ赤なロングコートに首に真珠のアクセサリーを付けた腰ぐらいまで真っ直ぐ伸びている黒髪で前髪かま長いため目が見えないヒールを履いた女が約20mぐらいの距離ぐらい離れて俺の前にやや前傾姿勢で立っている。


 俺は不気味で集中ができないため読んでいる本を受付で借りた。帰る前にトイレに寄る。


 奥の個室で用を足していると。コツンコツンと音をハイヒールの音が徐々に近づいて来るのが分かる。


 あの女だ!……


 「何か用ですか?」


「……」


向こうから返答はない。


 「帰ってください、警察呼びますよ!」


ハイヒールのコツコツ音が遠ざかっていく。


 俺は手の甲で額にかいた汗を拭い、ほっと一息する。


 俺は個室から外にでて洗面所で手を洗う。男子トイレを外に出て図書館を後にしようとし時、横からハイヒールを両手に持ったロングコートの女がスッと俺の前に回り込んでハイヒールのかかとの尖った先を俺の側頭部にぶっ刺す。血がブシャーと両側頭部から噴き出す。


 「ウギャャーー!!」


経験したことのない痛みと同時に徐々に視界が狭くなり足がよろめき絡まって尻餅をつく。


 「……これは私の好きな作者の本、取らないで」


女は俺の耳元でそっと囁き俺の手元から本を奪い去っていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 読ませていただきました。 ヤバい感じの女性ですね。 良いホラー物でした。
[一言] まさかハイヒールが凶器になるとは思いませんでした。 あと主人公の生死も気になる。
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