ダンジョン Ⅰ
「こちらに一報が入ったのが約30分前、場所は先日発見された地下遺跡だ2日前の先行調査では問題はなかったが今日、大学の調査チームが遺跡に潜り午前10時20分ごろに警察、救急に通報がありそれから約10分後に警察が到着、救急も数分後に到着、大学の調査チーム遺跡に入った12名の内2名が自力で地上に上がってきたが1名は意識がなくもう1名は錯乱しておりしきりに「化け物がくる化け物が連れて行った」を繰り返しているそうだそこから到着した・・・」
車に取り付けてたホルダーにセットされたスマホでテレビ通話をしながら眉を一つも動かさず淡々と仕事に関する情報を説明する男性、特務機関ヤタガラス本部長、月山史郎。
「はいはーい先生結局、俺たちは何しに行くわけ。」
助手席で足をダッシュボードに投げ出した状態のカジュアルな服装の少年、深井涼が頭の後ろに手を組み足を組み直しながらふざけた口長で部長に訊ねた。
「・・・まぁいい貴様らの任務は至極単純だ、その地下遺跡内で行方不明になっている大学の調査チーム並び救出に向かった警官の捜索そして遺跡内のクリーチャーの殲滅だ。実に貴様向けの任務だろう?」
言葉に若干こちらを小馬鹿にしているニュアンスがあるのは涼に対してだろう。
「つうかさ今日、学校休みで仕事もオフなわけよつまりは今日は完全な休日なわけよ女の子とよろしくやろうと思ってたのによ、大通りでナンパしてたら突然、不愛想な野郎が現れて「仕事だ」なんてほざきやがっていきなりボディブローで有無を言わさず車に拉致ってここ法治国家の日本国だよないいのこんなことが・・・」
一人で延々と現在の状況や自身の職場環境の不満などの愚痴を延々と喋っている。
「千堂・・深井を黙らせろ」
サングラスをかけ黒いスーツを着てここまで一言もしゃべらず無言で車を運転していた少年、千堂零は頭をわずかに動かし了承の意を示した。
「了解・・おい涼」
「んだよ零。」
「死ね。」
「てめぇが死ね。」
狭い車内で二人はレベルの低い口喧嘩始める。
「私は黙れと言ったはずだが、じゃれ合えなど言った覚えはないぞ。」
部長のこめかみが若干引くついているのは見間違えではないだろう
「すまない。次は涼を黙らせるのには9mmを頭に叩きこむとしよう。」
不愛想に淡々と零が答えた。
9mmとは主に拳銃などに使用される9mmパラベラム弾、銃弾のことを指している。
「殺す気か!」
思わず涼が突っ込む。
「もういい・・説明を続けるぞ。」
少し部長は疲れた様子で話を進めようとする。
「支部から人員が到着し現在、現場の指揮をしている。また本部からも装備課から装備と人員を派遣しているお前たちよりは早く現場に着くはずだ。」
「支部が動いてるなら俺たちが動く必要性はないんじゃないか?支部が動いているのに本部が動けば向こうもいい顔しないだろう。」
零は自分の感じた疑問を口にした。
「そうそう支部に任せようぜ。零も100年1度ぐらいはいいこと言うじゃん。よし!そう決まれば零、次右な。」
「勝手に話を進めるな。」
部長は冷静さを取り戻したのか眼鏡を指で押し戻し言葉を紡ぐ。
「まず、支部から派遣されたの一般局員だ・・そのうえ今回のクリーチャーに対する情報がほとんどない遺跡内は暗いせいで目標全体を目視できていないが生還した機動隊員は魚臭かったと証言しているが詳細は不明。現在、現場周辺の過去の郷土資料、伝承も調べさせているがまず特定は難しいだろう。」
「いつも通り行き当たりばったりか。」
涼は口端をゆがめ皮肉めいて呟いた。
「情報がないか・・いつも通りだ・・今さらだな。」
零も何のこともなさげに答えた。
「今は情報の流出は防げているが事件自体を収束させなければ情報が洩れる可能性が高くなるそこで、本部のエース2名を派遣し事件を早急に解決する・・・・期待しているぞ。」
月山部長は話し始めに額に手を当て何かあきらめたように話し始め最後に正面を向き真剣な眼差しで告げた。
「給料分は、働こう。」
「俺は時間外もつけろてくれよ。」
2人は何の気負いもなく即座に答えた。
真剣な雰囲気の中、涼が思い出したかのように呟く
「あっそういや聞きたかったんだけどさどうやって俺の居場所わかったわけ、登録してあるスマホはダミーのセーフハウスに置いてあったし場所はどうやってわかった?」
「それについては”千里眼”に協力してもらったまでだ。」
月山部長は淡々と答えた。わかったこと聞くなというような態度だ。
「やっぱ透子ちゃんかぁ・・じゃねぇよ非番の人間を能力使って探すなよふざけんな!」
涼は怒りを顕わにし部長に食って掛かるが月山部長は画面には映っていないが誰かと会話しているらしく涼の会話聞いていないようで何か指示を出しているのが見て取れるが内容は零と涼にはすべては聞き取れなかった。
指示を出し終えたのか月山部長が画面に向き直る
「さて、お前たちと楽しくおしゃべりばかりしてはいられん細かいところは現場で説明を受けろ以上だ。」言い終ると同時に通信が切断される。
「んだよ一方的に切りやがって時間外が出なかったらマジでゆるさねぇからな」
平手に拳をうちつけてぼやく
「いつものことだろ。」
零が半ば呆れたように呟く。
「お前はそれでいいわけ働きもんだねぇ」
「ほかにできることもないしな・・」
零が自嘲気味に呟くそれを聞いた涼は一瞬嫌なものを見るように顔を歪めたがすぐに顔に笑顔を張り付け軽い口調でしゃべりだした。
「そんなことないだろ っでさ、零君、零君聞きたいことがあるんだけど。」
話の途中から零のほうに体を向け上目づかいで両手に顎をのせて見つめてくる、女性がやる分には魅惑的なポーズかもしれないが男性がやっているのはこちらを呷っているとしか思えない
「なんだ・・クソ気持ち悪い殺されたいのか?」
そういいながら顔を涼に向けて右手で懐のホルスターから拳銃を引き抜こうとする。
「おい!バカ零前、前向いて運転しろ。」
「チッ何がやりたいんだお前死にたいんだったら車から飛び降りろ車が汚れる。」
「辛辣過ぎない10年来の戦友に・・まぁいい俺たち公務員だよな。」
「表向きは違うが広義ではそうなるだろうな。」
「俺たち急いでるよな人命が掛かってんだよな」
「あぁそうだな。」
零の声が若干弱弱しくなったように聞こえる。
「なんで信号に捕まってんの?」
「言うな俺も思ってたことだ。」
「はっ締まんねぇなぁ。」
涼が嘲るように吐き捨てる。
「それに関しては同意する。」
2人が現場に到着したのはそれから約20分後だった。
改善点等ありましたらご指導の方お願いします。