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妹はちょっとだけ口が悪い

「ご主人様に再び会うためです」そう夕暮れ時の公園で、睦瑞希(むつみづき)は言った。


 カラスの鳴き声が聞こえた。

 不吉な予感。


 いじめられている亀を助けるべきではなかった。

 俺は後悔していた。


 これ、帰れないな。

 今、帰ると絶対ついてくるだろ。家を特定されたくない。怖すぎるわ。


「ご主人様、どうかしましたか?」瑞希が自分が原因で、俺がどうかしている事に思い至らないようだ。


「いや、そろそろ帰りたいな、と」

「そうですか。ではお家の電話番号教えて下さい」

 瑞希はスマホを取り出す。


 あ、スマホ持ってるんだ。


「あー、家の電話番号忘れた」

「嘘ですよね?!」

 嘘に決まってるだろ。


「どうして教えてくれないんですか?!」瑞希が怒ったように大きな声をあげて、俺の腕をつかむ。

「こわいからに決まってるだろ!」俺もつい大きな声をあげて、つかまれた腕を引き離した。


「兄さん、何やってるの」冷たい声が聞こえた。


 そこには中学の制服を着た、天使のような美少女が立っていた。

 いや、俺の妹だ。

 妹は、俺の中では絶世の美少女という設定。

 世間の評判とそれほどはズレていないはず。


「何こいつ」冷たい目で瑞希を見おろす。

 瑞希はおびえたように、俺の腕をつかむ。

 何で、俺の腕をつかむ? また俺に助けて欲しい、て事か?


 俺の妹の表情が更に冷たさを増す。

「兄さん、こんなガキがいいの? キモ。ロリコン。死ねば?」

 中々の口の悪さ。俺への罵詈雑言に見えて、その実、瑞希に向かって言ってる。

 機嫌悪いな。口が悪いのはいつもの事だが。


 高坂祐実。


 俺の妹の名だ。

 中学3年生。背も高く、発育も良い。高校生でも充分通じる。

 そして美少女だ。ここは重要なのでもう一度言っておく。


「兄さん返事は? 日本語分かんないの? バカなの?」


「俺もわけがわからん。助けた亀に竜宮城に連れていかれそうになってる」

 瑞希が、何を言っているかわからない、という顔で俺を見る。


 妹は、またか、という呆れた顔をする。

「助けいる?」

「何とかしてくれ、祐実」このままでは家に帰れない。


「あんた、このバカ兄貴はただのバカだ。あんたを助けたのはただの習性だから、勘違いすんなよ」

「いえ、私は……」

「うっせ、もう帰れ。礼はいらない」


「帰れません! やっと会えたのに! 何百年待ったと思ってるんですか!」瑞希はそう叫んで、涙を流した。

 俺の腕をきつくつかんだまま。


 いいから離せよ。


 妹は、「何言ってるの?」と、さすがに戸惑った顔をする。

「さっぱりわからない」

 妹は言葉を失った。


 俺の妹すら引かせるとは……。



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― 新着の感想 ―
[一言] この、癖の強い書き方、地下さんお帰りなさい。 あいかわらず凄いワールドもっていますね。 しっかり読ませていただきますよー。
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