表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/98

誰?

「ご主人様、会いたかったです……」


 学校の帰り道。通学路途中の児童公園。

 いじめられていた亀を助けた俺は、その亀に抱きつかれていた。


「ご主人様。おまちしてましたよー」


 俺は抱きついている子供を見下ろす。


「誰?」いや、知り合いじゃない。そもそもご主人って何?


 中学生ぐらいとは思う。男か女かは、よくわからなかった。


「私ですよ!」抱きついたまま、俺を見上げてくる。涙ぐんだ目をキラキラさせている。


「だから、誰?」

「久しぶりなのです!」

「人違いじゃないか?」

「ご主人様を見間違えるわけ無いじゃないですか」

「全く見覚えがないのだけど?」


「え?」ショックを受けた、て顔をする。


「わるい。お前、俺を誰だと思ってるの?」

「ご主人様です!」


 うーん、困った。会話が進まない。


「お前が思ってる人の名前は? 俺の名前を言ってみろ」

「えーと……」その子供は困った顔をする。


「今の名前は知りません」

「今の名前って何だよ。名前ってそんな簡単に変えられないだろ。そもそも何で名前変える必要があるんだよ」


 婚姻や養子縁組みで名字が変わることあっても、名前はそんな簡単には変えられない。


 子供は困った顔のまま、黙ってしまった。


「じゃあ、前の名前は?」


 子供はそれにも答えず、困惑したまま黙りこむ。


「わからないなら、人違いかどうかも確かめられないじゃないか」

「うぅ……」

「名前も覚えてないような人が、どうして俺だと思えるんだ?」


「昔すぎて、忘れました……」


 あー、小学校の低学年とかの時の事だろうか。


「小さい頃の記憶なんてあてにならないだろ。人違いだ」

「小さい頃の話ではないのです」

「お前、いくつ?」

「13歳です」

「中学生?」

「2年生です」


「昔なら、小さい頃だよな」

「おとなの時です」


 中学生でも、おとなと主張したいお年頃なのか。


「何年前の話? 2、3年前でも小学生だよな」

「違うのです」大きく首を横にふった。


「前世の話です!」


 ……、ん。


 ヤバイ。


 ヤバイヤバイ。ヤバイやつにからまれてる。


 俺は子供の肩を押して、引き離した。


 背丈は俺の胸位。髪はショートカット。服装も短パンにTシャツとパーカー。


 服装からは性別はよく分からない。胸もお尻も目立って出ていないし、腰もくびれもない。男の子だろうか?


 いや、そんなことはどうでもいいか。

 もう会うことも無いだろうし。


「悪いけど、俺に前世は無いので、人違いだな。じゃ」


 俺は背を向けて立ち去ろうとした。


「待ってください。ご主人様!」


 叫んで、俺の腕をつかむ。


「その呼び方やめろ。何の嫌がらせ?」


 振り返った俺に、子供が抱きついてくる。


「もう離さないのです」


 今度は静かに言った。本気度が増して、こわい。


 あ、胸が少し当たる。女の子か?

 気のせいかな?





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ