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終わりよければ青年達もよし

エピローグです。

短く行きたいと思います……って言ったけれど短くいけませんでした。反省。

 青年が廃鉱山から帰ってきて、最初に感じたのはドンっという音と、重いけれど柔らかな感触だった。


 下を見ればそこには青葉がいて。ぎゅっと琥太郎を抱きしめている。


「おかえり、こたろー。ちゃんと帰ってきてくれて嬉しい」


 体を離さずにしっかりとくっついて、青葉は言う。普段はクールな彼女でさえも、取り乱したり激昂したり。乱れてしまう時はあるわけで。


 特に今回は乱れっぱなしのような状況だった。だから、ちゃんと終わった。ちゃんと帰ってこれた。ちゃんと帰ってきた。それが一番嬉しいのだ。


「……ただいまだな」


 目の前の相手を見て、何も思わないわけがなかった。そう小さく琥太郎は言って……ぽん、と頭に手を当てた。


「あ……っ……ふふっ」


 琥太郎からの不意打ち。それを受けて、青葉は一瞬だけ動きが止まる。小さく息を漏らす。だが、すぐに、笑った。目を細めて、笑みをこぼした。


「……あったかい。うれしい」


 ぽつり。青葉は呟いて、安心したようにくっつく、抱きつく手を緩める。だが離れようとしない。緩めたはいいけれど、それ以上は離れない。そう言わんばかり。


「それはそれとして、少し離れて欲しいのだが……」

「しばらく、ううん。ずっとこうしてる」


 琥太郎が指摘しても即答だった。ずっとこうしてる。それが青葉の思いであり、本音なのだ。青葉は幼馴染。彼女のことはよく知っている。自分がこうやって離れると、寂しくなってしまうことも。だからこそ……。琥太郎はそう言われて、無理にその手を解くことはしなかった。解くほどに強く抱きしめられているわけではないし、それ以前に。


 青葉自身が、そうしたいと。望んでいるから、それを解く術はないのだ。


「おー、戻ってきたか琥太郎! って、アイツはもうこれか……」

「仕方ないと思うのですよ。高坂さんは相丘くんのこと大好きですから。もちろん私も、宮川さんもそうでしょう?」

「確かにそれはそうだけどさ」

「あ、アンタらも! よかった戻ってきてくれて。蚊帳の外だったし、退屈で困ってたのよね!」


 そんな中で合流した玲と輝美も戻ってきて、シエテも含めて五人、しっかりと集まる。よかった。みんな、ちゃんと戻ってくることができた。無事だ。怪我なく。


「ああ、ちゃんと無事だぜっ。怪我してる人とかは……沢山いるみたいだけどな」

「怪我した方はカザハナさんから治療を受けて、すぐに元の場所へ戻れるぐらいまで回復しましたと。プリーストですからね、ちょちょいのちょいなんでしょう〜〜」


 輝美の言い分によれば、怪我人もなんとかなる様子だ。人間たちの勝利が決まったことで、みんな士気が高い。盛り上がっている、舞い上がっている。結論を言えばそんな感じなのだろう。


「魔王の脅威は去った。歪みは完全に消えたということね。ここは完全に救われたということ。今はね」


 シエテはそう言った。今は自分が持っているスマートフォン。端末を眺めている。


「これからまた魔王が来る可能性はあると思うけど、すぐじゃないわよきっと。保証はできないけどそうじゃないと困るわ」

「うーわ、また魔王と戦いたくないぜ?」

「言うな。勇者はずっとそういうのと戦っているんだ」


 シエテの言葉に嫌悪を示す玲。それを琥太郎は軽く嗜めた。勇者のことをしっかり理解できた。彼らも彼らで、頑張っているんだ。人間たちが、ちゃんと頑張っている。それを馬鹿にしてはいけない、愚弄してはいけない。


 リスペクトの気持ちは、忘れないように。しっかりと胸に刻む琥太郎であった。


「やはり、琥太郎さんがいるなら……皆様もと」

「げ、その声は……」


 そんな中で背後より、声が聞こえた。みんな……くっついたままの青葉以外、その声に振り向く。


 その声の主は、やっぱりと言えばいいのか。なんと言えばいいのか。


「えぇ、私です。琥太郎さんがいるのです。私もいて然るべきでしょう? ふふ」


 黒髪の豊満な肢体をもつ女性……撫子その人だった。


「おや〜〜やっぱり〜〜。あの場に駆けつけてきたのは、あなたで最後でしたからねぇ」

「ご無沙汰しております、皆様。はい。ようやく……ここに。琥太郎さんのところに」


 丁寧な返事。しっかりと頭をさげ。きちっとした姿勢で、撫子は言う。凛とした姿勢だ。崩れることなど全くない。


 彼女は和。和の象徴のようなもの。立てば芍薬座れば牡丹……とは言ったものだが。花のように。その様は優美だった。


「琥太郎さんの母として、いいえ……母以外の感情も。ちゃんと抱えて……こちらにいますから♪」


 そしてにっこりと。さも当然のように撫子は言った。撫子の性格。性根とはそういうもの。息子のことを愛している……愛しすぎている。そういう人物なのである。


「うあー……、あたし苦手なんだよぉ……」


 ふと、玲が言葉をこぼす。撫子はすかさず彼女の方を向いた。


「ふふ。お久しぶりですね、玲さんも。以前は深く付き合えませんでしたが、ここでは一緒ですから。淑女に変えて見せましょう。まずはそのガサツな言葉から矯正することから……」

「げっ……!? やっぱりまだ諦めてないのか!?」


 その言葉に玲の顔色が悪くなった。そうだったと琥太郎は思う。


 撫子は彼女のポニーテールに、活発と言うかガサツと言うか。そんな性格。それらを矯正しようと。考えていたのだ。撫子は和風で古風をとことん貫くような風貌に性格で、玲とはそう言うところで合わない。


「だーかーらー! あたしのことは別に大丈夫だからさ! だってさそんな淑女とか柄じゃないし……!」

「柄ではないと言いますが、その方が可愛いと思うのですが……。それに、ええ。華麗に、儚げに、丁寧に。女子はそれが一番であると。声高にして主張したいのです」

「あ……あたしにそれはむりだああっ!」


 追い詰められた獣のように、その場で叫び声を上げる。玲も玲で、こう言う話し合い……詰め合いに弱い。青葉相手でもそう。撫子相手でもそう。


「と、それは今はさておいて。改めての挨拶、ですね」


 ふとそう言うと。目線を玲の方から、中央へ。皆を見渡せる位置へと向けた。そして彼女は……跪く。


「……相丘撫子。皆様と一緒に。琥太郎さんのお側へ、居させていただきます」


 笑顔を浮かべながらそう言う。


「琥太郎さんや皆様のためならなんだってできますから……ね。これからもよしなに、です♪」


 その言葉を、皆はしっかり受け止める。だってこれを、断ることなどできやしなかった。ここまでされたら……断れないのだ。


「いいわ! 構わないわよ!」

『なんでシエテ(お前)が決める!』


 シエテがそう言い放つ。それと同時に思いっきり皆がつっこんだ。


 いろいろあったけれど。その一瞬で……六人目が加入が決まったのだ。




「そろそろ別れが来るかな。僕たちのここでの戦いは終わった、から」


 ふと、勇者が話しかけてきた。ハミルとカザハナとカトレア。三人がいる。ミミットも、今はいないけれどすぐ来るだろう。


 彼らが切り出したのは、別れの挨拶。


 「ああ、そうだったな……勇者は。一つの場所に定住できないんだ」

「うん。一つの世界を救って、また新しい世界を救って。勇者というのはそれの繰り返しなんだ」


 それは僕にとっては苦ではないけれど……。とハミルは言った。彼がそういうならそうなのだろう……と琥太郎は思う。


 神の使い走り……と言う言葉はもう、彼らには不必要で、不適切だ。


「ハミルーーッ! ごめん遅れたーっ!」


 その声と共に一気に、少女……ミミットが走ってくる。勢いよく走ってきて……ぶつかる直前で、キキっとブレーキをかけて静止する。すごい制動距離と、停止性能だ。とんでもないフットブレーキである。


「まったく。ミミさんは……間に合わなくなったらどうするのです」

「ごめーん、いい機会だから、森の方とか全体をひたすらに走ってたんだ。ちゃんと目に焼き付けなきゃって。もうお別れになるからさ」

「はぁ……。分かりました。もう怒りません。ですがこれだけは覚えておくように」

「私たちはいつだって四人で一緒! でしょ!」

「私たちは……はっ!?」


 カトレアが言おうとした言葉。その言葉を先にミミットに言われて、顔を赤くして驚く。その姿を見てミミットは、楽しそうな口調で言った。


「わーいっ! カトレアの先読み成功っ! だってミミ知ってるもんねー、カトレアがミミたちのこと。ちゃんと大好きってこと! しっかり隠さなくなったんだもんね!」

「……ミミさんっ!!」

「わあっ、カトレアが怒ったー!!」


 カトレアが怒鳴る。しかしそれは、カトレアの照れ隠しにほかならなかったから、ミミットもそう言いながらも謝罪はしない。謝罪を求めていないと言うのも、明らかだったから。


「ふふ、やはり子供じゃの?」


 それを見てカザハナは小さく笑う。


「いや、そう言うアンタはどうなのよ」

「ふふ。いくら女神様と言えど。女子に歳を聞くのは感心せんの?」


 カザハナの言葉にツッコミを入れるシエテ。だが余裕ある表情でのらりくらりとかわした。


「それはさておいて……まあ、年相応ではない……。いつか、わかるかも知れぬの。ふふっ」

「年齢不詳……謎が増えたわ」


 その言葉に、シエテも口をつぐむしかなかった。


「案外、そっちも楽しそうだな」

「うん。楽しいし……嬉しいんだ」


 ハミルは琥太郎と話す。周りを見ての反応だ。琥太郎の楽しそうと言う問いかけじみた言葉。それをハミルは肯定した。


「カトレアも、ミミも。カザハナも……。みんながいるこのパーティが、僕は大好きなんだ。だから僕が……みんながいないとやっていけない自信があるって言うんだよ。それはずっとそう」

「……ああ。それはそう思う」


 琥太郎も心当たりがあって。それについてはちゃんと思う。


「周りを見れば。俺も恵まれてる。でも周りのみんなも。俺がいて成り立つって言うわけで……」


 そう、青葉も。玲も。輝美もシエテも。なんなら撫子だって。琥太郎がいるから、こうやって繋がってる。琥太郎がしっかりと、ここにいるから頑張れる。それこそ青葉とかは、どうなるかわからないのだ。


 つながりって大事で尊いのだ。目の前の勇者を見て分かったこと。


「……忘れないようにしないとな。互いにな」

「うん。君も……僕も。一緒に。みんなで頑張るんだ」


 手を互いに差し出した。そして、ぎゅっと手を握りしめる。かたや光の神に選ばれた勇者。かたやただの駄女神を押し付けられた青年と……。立場は正反対だけど。


 この世界でできた、共通点のある友人だ。その友情は、鉄よりも堅い。


「……行かなきゃ」


 そう言った途端、ハミルの目の前に何かが現れる。それは門によく似ていた。


「新しい世界へ繋ぐものね。神が落とすもの。その新しい場所がどこだか、行かなきゃわからない」


 シエテが言った。まさにそれは、神からの指令で……勇者の使命であるのだろう。


「新しい場所に行っても変わらないよ!」


 ミミットが叫ぶ。それは決意のようにも、確認のようにも見えた。


「ここでのことは絶対忘れない! ちゃんとみんなで頑張るって、確認できたから!」


 その言葉は、今までよりも強い絆を結べた彼らの感謝で。


「うむ。世界もそうだが……わっちたちも救われたのじゃ。お主らの、この世界のおかげじゃ」


 カザハナも言う。感謝を告げる。そして。


「……皆様」


 カトレアだ。真剣な表情で、琥太郎たちを見る。


「……私は取り返しのつかないことをしようと致しました。未遂に終わったとしても、それはずっと。背負っていかないといけないことだと思います」


 カトレアはつらつらと言う。それを黙って聞いていた。


「……それでも」

 

 しかしその声音に、希望の色が入り混じり始めた。


「……それでも。私を取り返しのつかないところから引き上げてくださった、女神様に……コタロウ様に、テルミ様に……他の皆様も。感謝しかあり得ないのです」


 そして彼女は、言葉を切る。


「本当に……ありがとうございました」


 頭を下げた。琥太郎たちはそれをしっかり、受け止める。


「顔を上げなさい」


 そう言うのはシエテだった。頭を下げたままのカトレアに向けて、諭すように言う。カトレアは頭を上げた。それを見ると、シエテは話し出す。


「何かを起こそうとして、失敗して。そもそもその何かが間違ってたりして……。色々な理由で後悔するのは、人としてよくあることだと思うわ」

「えぇ、だからこそ……私は」

「それでも、それでもよ!」


 シエテは大声で言った。


「後悔を飲み込んで、前に進まなきゃいけない。アンタは勇者の一員なのだから。アンタに力を授けた、どっかの女神様は言わなかっただろうけれど……私は言うわ。厳しいことを言うかもしれないけれど」


 カトレアは、黙ったまま。シエテの言葉を待つ。


「自分たちの道を歩みなさい! 神の使い走りではなく、ちゃんと考えて! 勇者たち、みんなで!」

「──!」

「あんたらは聡いから……ちゃんとできるはずよ」


 それは、女神による……激励であった。底辺女神だけど、ちゃんと心に残る激励だったのだ。


「……感謝いたします。ここまでの言葉をかけてくださって。勇者様共々。()()()()()()()()()()()()()、その啓示。一生忘れないようにいたしましょう」


 勇者パーティー。カトレアが代表し、女神に跪いて言った。その様は絵画で見る、女神とその信徒の啓示。まさにそのものであった。


 カトレアは信徒といった。それはすなわち……。


「えぇ。勇者ハミル、カトレア、カザハナ……ミミット。私たち四人は。女神シエテ。あなたを信ずる者になりましょう。加護はなく。証もありませんが……心で。あなた様を思い続けます」


 改めて。カトレアはつげる。それと同時に……。勇者たち三人もまた。彼女を。シエテに信を誓うように。跪いた。


 それを見ていたシエテは、少しだけ動揺するも……。すぐに調子を取り戻して、言う。


「……よろしい」


 するとすぐにぱあっと表情を明るくさせて。


「それじゃあ行きなさいな! その道行は光と雷で照らされてるから!」


 明るい先行きを見せるように、そう言い放つ。


 顔を上げた勇者たちは……それに笑顔で答えると。ゲートへ歩き出す。


「また会えるといいね! 女神様や、他の人にもね!」

「わっちらは死なずに。どこかの世界を回り続ける。だから偶然辿りつくかの……ふふ♪」


 ミミットとカザハナは、再会を誓って。


「お世話になりました。他の方にも、よろしくと」


 カトレアは感謝を。そして……。


「これで十分! 僕らはずっと、頑張れるよ! だから君たちにも、幸あれ!」


 ハミルが感謝と激励を告げる。琥太郎たちは……静かに彼等へ、手を上げた。


「それじゃあ、素晴らしい友に女神様に世界に……。またね!!」


 その言葉を最後に。彼らはゲートへと消え去っていくのであった。


 残された琥太郎たちは、ただ静かに……彼らが消えるのを見送って。


「……素晴らしい女神っぷりだったな、珍しくな」

「な……!」


 シエテのことを……そう言って褒める。


 シエテのことだから、有頂天になるかと思いきや。驚いたような様子で。


「……そ、そうね。私こそが女神様ってやつよ。だってそもそも勇者に対する激励ってやつはねぇ……!」


 しどろもどろになってしまう。駄女神がそこにいたのだった。


「琥太郎が褒めるのは珍しいからか?」

「相丘くんも素直ではありませんからねえ〜〜」

「それこそが、琥太郎さんなのですけれど」


 周りの玲たちも……そんなことを口々に言う。


「あ、あんたら、ねええ!!」


 シエテが起こりそうになる。そんな中で。


「みなさまーっ! 魔王撃退の祝賀会を、お城で行おうと思うのです! 開始は夜ですけれど、早くお城へとお戻りくださいませ!」


 シュルツェン。第七王女の声が聞こえる。


「……祝賀会か。楽しそうだし。行くか」

「ああ、そうだな!」

「そうですねぇ〜〜」

「私は流石に……。外で、待っていますね?」

「まああんたは魔王側にいたし。感想だけ伝えたりするわよ。ほーらアオバ、いつまでくっついてんのよ、あんたは!」

「……むむぅ。わかった。はなれる」


 そして彼らは。そんな会話をしながら。城へと歩きだす。

 

 ゆっくりと、さてと確実に。勝利と希望の道を。




『魔王との戦い。世界の歪み、真っ黒の闇。私のような底辺な女神でも。恐ろしいって記憶してしまっているもの。それに立ち向かうための勇者たち。

そんな中で、柄になく女神っぽい事をした。

女神って、ただ加護を授けるだけのものじゃないと。私は思ってる。だから、あんなライブを流したり……割と型破り? なことをした。

それが再生回数、登録者数アップ……につながって欲しいとはちょっとだけしか思ってないけれど。

いろいろ大事なもの叩き込んだから、ちゃんと見てくれたら、本気で嬉しいんだからねっ!』

───本日更新。あるしえてチャンネル公式ブログより。


 その言葉を示す通り。


──あるしえてチャンネルの登録者数は、急激に増加していくのだが。


 それは今は、語るべきではない話。

はい。第二章……魔王と勇者の話はこれにて終了となります。

いろいろ書きたいこと、やりたいこと。詰め込めたと思います。


さてこれからですが。次は……シエテが偉業を達成するその後の第三章に入るのですが。

少し書きだめをするのと、並行で書いている作品を放置しすぎてしまっていたので、そちらに集中します。

少し休んで、できれば1月をめどに。

第三章を書き出せたらと思うので、これからもシエテと琥太郎たちの話を、よろしくお願いします。

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