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青年たちは成果をぶつける

戦闘に頭を捻っていました。


「……ふぅ……」


 琥太郎は息を吐く。何かが起きる時は、とっても緊張する。特にその何かが、かなり大規模な場合は。


「なんだ、お前もそんな感じになるのか。私と対峙した時はそこまでだったようだが」


 琥太郎の態度を見て、誰かが後ろから声をかけた。振り向けばそこには、ダークエルフの少女。


「いや……緊張しないことはないな。いつもは、幼馴染や友人たちが和らげているだけで。ただ……今回は特に周りが多いしな。そうなると逆に」

「分かるさ。私も人が多いのは慣れん」


 少女、パイは琥太郎に肯定するよう、苦笑するように言った。彼女は普段、森で少ない身内と過ごすダークエルフだ。今は宮仕え。だけれど第七皇女と一緒の護衛なのだから……どちらにせよ人と関わる事が少ない。


 だからあまり慣れないのも当然かもしれなかった。


「でも、全力で頑張るつもりでいる」

「ああ、全力で頑張って来い。私が授けたものもあるだろう?」

「……これだな」


 そう言うと琥太郎はズボンへ手をかける。何かの感触。細長い何か。


「これと毒とナイフだな。教わったものは」

「あぁ。ちゃんと教えたぞ」


 パイはうんうん頷いた。その表情には自慢と満足感が伺える。


「お前は私にとって初めての弟子みたいなもんだ」

「弟子か……」


 琥太郎はパイの言葉を繰り返す。


「ああ。弟子だ。私の全力を教えて、それにちゃんとついてきた。だからこそ言える。筋が良かったぞ」


 笑顔でパイは言う。自分の行動、能力をちゃんと相手に見せることができた。授けることができたと言う、それに対して、とっても満足したのだ。


 だからこそ、その笑顔。


「お前はあの女たちに守ってもらうつもりはないんだろう? なら今のお前はきっと大丈夫さ」

「太鼓判をもらったら安心だな。師匠」

「……! そうだろ? だからこそ言ってやる。全力で行けよ、我が弟子!」


 『師匠』と言う言葉。その響きが心地よくて、嬉しくて。パイはそう言った。


 そんな琥太郎に、人影が近づいたのはすぐの事だった。


 彼女の正体は……幼馴染だ。


「こたろー。なんの話をしてるの?」

「色々教わってたからな。その話だ」

「確かに。彼女に教わってた」


 明らかに言葉のトーンが下がった。そういうことを言うと、青葉は不機嫌になる。彼女は、琥太郎の為にいると言った。守るべき存在だとも。


「そこまでしなくてもいい。こたろーは私が守るって決めてる」

「守られるだけじゃダメだろ。少なくとも俺は嫌だ」


 足手纏いにはなりたくない。それは異世界に来てからずっと考えていたこと。たとえそれが幼馴染相手でも、変わることはない。


「みんな頑張ってる中、俺だけが後ろに立つのは嫌だ。俺はなにもできないわけじゃない」


 だからこそ、本心を伝える。


「みんなの横に立ちたいんだ。後ろで控えてるんじゃなくて。……分かってくれるか?」

「……」

 

 青葉はおしだまる。しかし、そう言う琥太郎の目を見据えた。


 彼の顔は、真剣な顔。


 その顔を見たのか、小さく息を吐きつつ、青葉は言った。


「分かった。こたろーの言葉を尊重する」

「ありがとう」

「でも……偶には。偶にはこたろーのことを守らせて欲しい。私は騎士なのだから」

「それは当然か。分かった」


 青葉からその言葉を引き出した。


「話は終わりか?」


 そんな中で声が聞こえる。振り向けば、そこにはダークエルフ。


「言い忘れてた。コイツは今日一日借りていくことにする。色々あるしな。言葉は尊重する、だろう?」

「………」

「と言うわけだ。今日一日は……ごめんな」

「……わかった。こたろーが言うなら。でもあなたは許さない」

「おおっと……そりゃあそうか。人の恋路を邪魔する奴は……まあ邪魔じゃないさ。それじゃあな」


 パイに連れられて歩いていく琥太郎を、青葉は見送った。


 高坂青葉。彼女は幼馴染で、琥太郎の騎士であった。でも、だからと言って。琥太郎に意思を押し付けるような。そんな嫌な人物にはなりたくないのである。


 その表情は、えらく惨憺たるものだったが。


「へぇ、あの青葉でも見送ったりするんだなんだな」


 そんな中で玲が声をかけてきた。


「悪い?」

「悪くないって!そんな睨むな!」


 バッドタイミングすぎた。全力で睨まれる。


「まあ、琥太郎を押し留めるのは無理だろ。なんだかんだ言って、体が勝手に動くタイプだからな」

「それが一番問題なのに」


 玲が言う言葉に青葉はこう返す。


 いつもはそこまでだけど。琥太郎はたまに無茶をする。前もそうだったし、今もそう。


「幼馴染だからわかる。そういったことはよくあった」


 青葉は目を伏せた。


「ただ……それが原因になって辛くなることだけは嫌」

「それはあたしもそうだしおあいこだな」


 うんうんと玲は頷いた。幼馴染というほど長く一緒にいないが、一緒にいるからこそ。その感情はよく知っている。


「覚えてる? 私たちが……ここにきた時のこと」

「覚えてるよ」

「あれほど惨めだった日はない」


 二人は思い出した。ここにくる前、何があったのか。絶望の中、病院に集まって……全てに悲しんだ日。


「それがまたきたら……私は耐えられない」


 少女は、ゆっくりと言葉を紡ぐ。


「だから私は……今度こそ。こたろーを護る騎士となる。必ず」


 それは彼女の決意に他ならないのであった。




「『鏡』の反応はどう?」

「ぼちぼちじゃな」


 一方、琥太郎から離れた場所にて。勇者ハミルとプリーストカザハナ。そして格闘家であるミミットは彼女が展開した『鏡』を見ていた。モンスターがどこにいるかが分かる代物である。


 カトレアはいない。すでに彼女は特別な作業に入ってしまっているからだ。邪魔したくはないと言うハミルの感情から、三人での動きとなっている。


「奴ら拠点から離れてゆっくりと歩いておるわ。流石に『鏡』を壊すことはないがの……」

「そうなったらやばいもんね!」

「わっちの体にも関わるからのう」


 汗を拭いながら、カザハナは言った。いくら加護持ちでも、『鏡』を展開し続けるのは非常に疲れるのだ。


 魔力だけじゃない。脳の容量まで使わされる。大量の媒体を使用するがゆえに。


「本拠地に一つ、道中に二つ。そしてここの間近に一つ。これで限界……」


 ハミルはカザハナに水を渡しながら言う。


「カザハナが倒れたら嫌だし、負担をかけさせるわけにはいかないから、一つ減らしてもいいんだけど……」

「ふふ、勇者殿に心配されるとは。わっちのこと信じてると思ったんじゃがのぉーー」

「本気だよ僕は。みんな……僕についてきてくれてるから」

「勇者殿だからじゃよ」


 カザハナはハミルから渡された水を飲み干しながら答えた。


「勇者殿が優しいから。わっち達のことをしっかり見ているから……力を貸すのじゃ。そうでなければこんなケッタイな事、いくら金を積まれてもやらんしの」

「ミミだってそうだよ! 多分カトレアだってそうじゃないかな?」


 この場にいない彼女もおそらく頷くだろう……。カザハナとミミットはそう思いつつ言った。


「みんな……!」


 その言葉はハミルに感動をもたらした。


「そうだ。だって僕は……みんながいなかったら何もできない自信がある! 何度も死んでると思う!」

「お礼で言う事じゃないじゃろう」

「そうは言うけど……。これはやめないんでしょ? だからでもあるよ! がんばろーってなる!」


 ハミルの言葉にカザハナは呆れ顔で言うが、ミミットは理解を示した。何もできないと言う自信を大声で言えてしまう人間は、確かに強い。仲間を全力で信じられる。


「(じゃからなんじゃろうなぁ……わっちは彼に何かしたいと思うのじゃ)」

「(ミミだってハミルのためにいるんだから! 頑張る!)」


 プリーストと格闘家。立場は違っても、互いに勇者のことを思っているのは、変わらないのであった。


「はっ……最後の『鏡』を通ったぞ!」

「ついにきたか……!」


 そんな中でカザハナが告げた。ハミル達は一気に歩き出す。


「カザハナはここで『鏡』の維持をよろしく。一番大事な事だからね」

「了解じゃ。勇者殿、ミミ殿。ご武運を」

「がんばるよ!」


 そう言って勇者達は、移動する。


 それと同時に、シャーン!! と言う音が鳴った。


「これは……襲来の合図だ!」


 冒険者や騎士達が気づく。魔物ががようやくきたのだと。彼らの談笑や明るい雰囲気は終了し……。真剣な表情となって。戦場で敵と相対する。


 そのために。彼らはここにいるのだから。




「『鏡』に魔物が写った。もうすぐ魔物の襲来が始まる」


 戦場と化す裏門前。戦いに挑むもの達は、勇者の声を聞きながら、真剣な表情を浮かべた。


「最初だからすぐに倒せるかもしれない。でも命は大事にしてほしい。誰かが傷つくのは辛いんだ」

「……我々騎士はもとより、公国に平穏無事を誓い……剣を振るうものだ。ゆえに勝手に命を失うことは、文字通り禁じられている」


 ビルヘスはハミルの言葉にこう返す。国のために全てを捧げる騎士。勝手に死んではならないと言うのは、誰であっても知っている。


「冒険者も必ず生きて帰ってくるが信条や! どんなにクズでめちゃくちゃな奴でも、命を失うほどに悪いことはない」


 冒険者を代表してゴウスが言った。


「そうだ。それは大切にしてほしい。命を大事に、それが一番なんだ」


 騎士と冒険者。二人の言葉に強く頷きながら、ハミルは剣を抜いた。


 バサッッ……ドォン!


「来るぞ!!」


 ハミルが叫ぶ。その直後、大きな音を立てて……怪物たちがやってくる。


 動物に似た、数十体の魔物。それを先頭に……大きな波となって公国に襲いかかる。


「来い、魔物たちよ!」


 襲いかかる魔物へ、光の勇者は剣を向けた。


「我は光の勇者……その力を以って、世界を守るものなり! その名を知ってなお力を振るうなら!」


 そして、一旦言葉を切る。


「かかって……こおおおいっ!」


 魔物へと、啖呵を切るように叫び……。一気に駆け出す。


「ミミも! みんなも一緒に!」

「命を大事に言うたのはそっちやろがい!」

「だが、それが勇者なのだろう」


 それを追うように、ミミや騎士、冒険者も行く。


「勇者ってだから大変なのよね。使いっ走り精神やばいから」

「……色々背負うっぽいからな。神話でもよくある」


 その背後でシエテがそう言う。一応女神。彼女の言葉もごもっともだ。


 そう言ってる間にも、光の勇者は魔物にたどり着いていた。


「って、はや……っ。もう追いついてる!?」

「光の勇者って言ってたな。だからだろう」


 その言葉を聞くまでもなく。ハミルは剣を構えた。狙いは、魔物の体。


「……やあああっ!!」


 ザンッ! と音を立てて、魔物の体を切り裂く。


 仰向けに倒れた魔物は、そのまま闇の粒子となって消え去った。


「なっ……!」


 その姿を見て、皆恐れ慄く。琥太郎をして、その驚きは計り知れない。


「魔王の部下である魔物は、歪みの産物なんだ。生命ではないから……だからこそ無限に現れる。倒して留めなければ!」

「そう! 君たちにもできる!」


 その背後でエールを送るように叫ぶのはミミットだ。彼女は左手を突き出しつつ、右手を後ろに伸ばした。一瞬、手の先端へ光が走る。


「だってミミができるのだから!」


 そう叫ぶや否や、手のひらを向けて目の前の魔物へロックオン。


「光牙……満点掌ーーーっ!!」


 叩き込まれた掌底。その光が、猪の魔物の体を貫く。それによって吹き飛ばされ……あたり一面を巻き込んで光が炸裂した。


「こんな感じで行かなくても、簡単に行けるから! みんなも頑張ってみて!」


 振り向いて少女はにっこりと笑った。


「やっぱ勇者たちはすごいわね……。ふんだ、私だって女神だし!」


 その姿を見ていた女神シエテは、旗を振り回して戦っていた。彼女は琥太郎達とは別の場所である。逸れた。逸れたらすでに戦いが始まってしまっていたのだ。


「嬢ちゃんも嬢ちゃんで成長してきたのう! 感慨深いもんじゃ!」


 そんなシエテを見て、近くにいた冒険者が一言。ゴウスだった。彼は魔物と対峙しながら、攻撃を防御し続けている。


「アンタは大丈夫なわけ!? 無傷ではあるみたいだけどさ!」

「平気や平気! しかし……攻撃受けるのも飽きたのう」


 Vの字へと変えた指をシエテに見せつつアピールする余裕まで見せていた。しかし、すぐに相手を見て小さく呟くと、ニヤリと笑った。


「よっしゃ! ロクデナシはロクデナシなりの力……見せてやろうやないの! 危ないさかい、嬢ちゃんはあんま近くにおらん方がええで!」

「え、何するの?」

「ちったあ俺の本気っつうものを見せていくつもりや。……つまり、こう言うもんじゃあ!!」


 そういうと背中から何かを抜く。


 だんっ! 直後に聞こえるのは地面に叩きつける音。それに足をかけて……一気に引っこ抜けば。鞘が抜け、何かが姿を表す。


「これは……待ってこれでかくない?!」

 

 それは近くにいたシエテも驚愕するほどに、大きく猛々しい、鉄の塊だった。


 斧。しかしそれは木を切るとか、そう言ったものには使えない。もっと別の何かがあるような……。


「コイツは大戦斧。冒険者の中じゃ今や俺ぐらいしか使わんもんじゃ。あまりにも重く切れ味良すぎて……鞘がなければ持ち運びにも苦労するシロモン」


 それを見せながらゴウスは続ける。


「剣の腕も冴えてるけどなぁ! 俺にとっての魂はこれじゃあ! それしかできないだけとも言う!」


 その大戦斧を両手で持ちながら、数体の魔物を見る。彼らが牙を向け、襲い掛かろうとした瞬間であった。


「ずぇああああ!」


 ──斬!


 巨大な斧の刃が、一撃で魔物達を両断した。ゴウスの叫び声と共に放たれた一撃は、勢いそのままに強風となる。その風に魔物は闇に消えていく。


「はっ……。決まった!!」


 ゴウスはただ一言。嬉しそうに言った。そして続ける。


「一撃必殺! 俺が今まで作り上げた冒険者としての知恵と技と力よ!! やっぱ爽快じゃのう……。心がコイツをもっと振るいたいと思ってるわ!」

「ドヤ顔している場合じゃないんじゃが! 魔物がもっとくるぞ!」


 仲間の言う言葉もごもっともだった。波のように迫ってくる魔物達。それを皆、押し留めている。


「お嬢ちゃんだって今全力で動いている最中や!」

「おおっと、危ない危ない! ならば斧の出番はまだまだ多いってことやなァ!」


 両腕で斧を振るいながら、彼は全力で叫ぶ。まさにこれは鬼人。人の力を……明らかに超えている。


「なんか私も頑張りたくなってきたわ……! これ見てるとね!」


 シエテも自然と力が湧いてくる感じがした。


「本当は琥太郎達にいの一番に見せたかったわけだけど……。居ないんだもの!」


 旗を叩きつけ、クルクルと回しながら自らの方へ返しつつ、不平不満を言うようにシエテは告げた。真っ白だった旗の紋様が、一瞬だけ光る。


「いろいろ教わったのよね、魔術師の先生から!!」


 そう叫ぶと、彼女は旗を突きつける。


「スパーク!」


 瞬間、空間を雷が走る。横に一閃入った電撃が、魔物数体を貫く。


 爆発し、闇の中へ消え去るまでに時間は全然かからなかった。


「ただの初級魔法だけど……彼女……輝美の言う通りだったのね」


 量を節約するために、小さな魔力で特大の効果を。輝美の言葉の正しさを知り、シエテは驚く。


「嬢ちゃんの魔法もずいぶん強いのう!!」

「びっくりしたがじゃ!」


 そんな中で絶賛の声が聞こえれば、シエテにとっては。最高の材料になる。


「と……っ」

「当然よねーーっ!! 私は凄いわけだから!!」


 そこからはもう、完全に有頂天でもあった。


 


 そんな有頂天女神達から少し離れた場所で……青年も動いていた。


「毒と、ナイフと。あと……準備万端だ」


 ここは裏門を囲む、森の一部分。誰もが死角になる場所。


 腰に新たにつけたベルト。それに手をかけながら、青年……琥太郎は言う。青年とダークエルフの少女は、そこに潜んでいた。


 彼はパイと同じ、ナイフと毒使いだ。射程の長さをどうしても得ることができなかった。


 だからこそ……パイと一緒に訓練することが一番、役に立った。


「パイとは違って……俺はそこまで軽くないからどうなるかわからないが」


 青年は、目の前を見据えた。手に触れたもの。細長い感触。それを、ゆっくりと手に取っていく。


「何、大丈夫さ。ちゃんと信じて飛び込めばいい。一気に加速できる」

「そうか。そう言ってくれるとと安心だな」


 そう言いつつ、琥太郎は前を見た。


「さて、本番だ。びっくりさせてやろうか」

「……よし」


 そして……彼らはベルトのものを手に取って……一気に、加速する。



『ナイフと毒。当たれば大きい、二つの武器。だがこれは射程が絶望的に短い』

『実際無策で突っ込めば、必ず相手は仕留めにかかる。暗殺者としても、狩人としても落第レベルだ』

『じゃあどうするか。どうやって、射程が短い二つの武器を活かせるか』

『答えは簡単さ。私もよくやること……』



 ──自分以外の力を使って、全力で加速することさ!!


「っけえええええーーーっ!!」


 彼女の言葉を思い出しながら、琥太郎は腰から何かを放つ。それが森から魔物へとかかった瞬間に……森を発った。


 放たれたものを……チラとみる。ロープ。そのロープを伝って……空を一気に降りていく。


「筋がいいな!! やはり私の弟子は見込みがある!」


 パイはそう言った。魔物へと一瞬で接近する。


 琥太郎はそれが一体なんなのか、思い出した…そう、あれは……ワイヤーダッシュ。


「こいつかっ!!」


 ロープがかかって、動けなくなっていた魔物。それに向けてナイフを構え……振るう。


 切り裂いたという感覚が、手に伝わる。しかしそれも一瞬で……。


 うめき声をあげたその魔物は、一瞬で無に帰った。


 カラン。何かが地面に落ちる。


「っと……回収しないとな」


 手に取ったのは、鉤爪だった。鋭く尖ったそれを、琥太郎はベルトに引っ掛ける。


「鉤爪ロープさ。楽しかっただろう?」


 そんな中で一緒に飛んできたパイがやってきていった。汗ひとつかいていない。


「……まあ」

「色々できる。引っ掛けてぶん投げたり、釣りに使ったり。なんならちょっとした打撃技さ!」

「便利だな。こういうのが嬉しい」


 彼女は嬉しそうにいう。琥太郎もベルトにつけていたそれに触れた。


「さて、今度は……短距離移動だ!」


 パイはすぐに魔物を見て、嬉しそうに言う。琥太郎も頷いて、魔物へと対峙した。


 新しい武器があるので、もう今は心配いらないと言った感じだった。


 そうして戦いが続き……。一日目は完全に魔物消えていくまで、数時間戦い続け。


 勇者たちの勝利となったのであった。




「みんな、凄い戦いだった! 一日目を耐えれば、あとは小出しになる。これからも頑張ろう! その身を休めてくれ」


 勇者ハミルは、戦い終えた皆へとそう言った。散り散りになっていく中、パーティ達が集まる。


 そんな中で、やってきたのが別行動だった、赤髪の魔導師。


「勇者様」

「カトレア!」

 

 彼女の合流で、全員揃った。色々話していく。


「そちらはどう?」

「全てにおいて順調です。私に抜かりはありませんので」


 何もない立ち話。普段の態度で、静かに報告する。カトレアはいつもそうだ。その表情を変えることはほとんどない。


「……勇者様も無事で何よりです」

「僕は何もしてない。みんなのおかげさ」

「それは……! いえ」


 何かいいかけようとして、カトレアは口つぐんだ。


「また明日以降も……戦いとなります。私も全力で頑張らせていただきますので。勇者様もご武運を」

「カトレアも。何も起きなければいいね」

「……はい」


 勇者ハミルと魔術師カトレアは、互いに小さく言葉を交わした。




「……のう。カトレアや」

「なんです、カザハナさん」


 全てが終わる前。カザハナとカトレアは。二人にしか聞こえない声で……。


 ──カトレアは……大丈夫かの……?

琥太郎の新得意技であるワイヤー式移動ですが、自由には動けません。

基本直線運動です。だから回り込んで死角から飛び込んだりすることになります。

まあ鉤爪ロープ自体が便利な道具なのでワイヤー式移動はおまけということで。

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