青年たちと王女と、そして場所を得たダークエルフ
皆さんは体には気をつけましょうね…。
「久しぶりね! お城って聞いたからいると思ってたわ!」
ぱあっと表情を輝かせ、冒険者を迎え入れる少女を見て、シエテは嬉しそうに叫んだ。
「おお! もしかしなくともあの時の姉ちゃん達の!」
「……色々ありました」
馬車から降りていたゴウスが陽気に笑う。
彼女、シュルツェン・ファン・ヘルガフロウスト・フラーレンはシエテや琥太郎たちと大きく関わった。王女として、そして一人の仲間として。
そのためか、非常にフランクな関係を、少なくともシエテは築き上げていっているようだ。彼女の特殊能力……というわけではないが、そう言った力を持っているのがこの女神である。
「……駄女神」
「あによ」
そんな嬉しそうな、互いに親しげなムードの中、青葉がシエテに話しかける。真面目な彼女だ、直立してシエテの肩に触れ、しっかりとした言葉を放つ。
「かなり接近してるけど……分かってる? 彼女は王女。関わったとはいえ……」
「あっ、私は大丈夫なのです!」
青葉の言葉を切るように、シュルツェンは答えた。あっけらかん、温厚にして顔にはにっこりと満面の笑み。
「私は王女という立場ではありますが、一緒に冒険した皆様は友人の一人として見ているのです。だって、あなた方を乗せた馬車が門を通った時から! いてもたってもいられずに飛び出したのは私ですから! ですので、私に敬語を使うことも、へりくだったりすることもおやめください。当然、レッドヴィレの冒険者たるあなた方も。王女という冠は無しにして。シュルツェンという名前……あるいはコンロン、とお呼びください!」
「まあ、それでいいならば」
「……他ならぬあなたがいうなら、私は従う」
「あたしは敬語あんま得意じゃないし、そういってくれた方が嬉しいしなぁ」
「ふふふ、友人という言葉、いい響きだと思いませんか〜〜?」
琥太郎たちはそう言わざるを得なかった。このシュルツェンという少女に、応えることにしたのだ。あの笑顔を見てしまえば、そうせざるを得ないと思ったからである。
「俺ら荒くれモンにもそういうとは思わなかったがのう! だってな、基本的に俺らに対する反応はかなりウケが悪い!」
それを聞いてゴウスは声を張り上げて言った。胸を張っていうべきことじゃないが、それを誇るように言う。
「そうやろう? 酒かっくらって金稼いで酒かっくらって寝る!そんなもんを楽しんでるこないな連中、王都の雰囲気には合わんわ! 俺がそう思うんや! 王都の連中など普通そう思うに決まっとるわがっはっは!」
「本当ですか!? 私はその雰囲気の方が気になるのです!」
「おおう!」
ゴウスにシュルツェンが寄ってきた。キラキラ目を光らせている。
「私は王都での優雅な生活よりも、冒険の方が好きな王女なのです。従者であるグロックを困らせてしまったりはするのですが……。それでも冒険小説でよく見る冒険者……と言うのに、強い憧れを持ってしまうのは仕方ないのです」
「諦めた方がいい。彼女は……そう言う人ですからね」
出会いは馬車だったな……と、琥太郎はゴウスに説明しながら思う。思えば彼女。最初は危ない橋を渡っていたな……と。
馬車の荷台に入って、自ら潜入調査をするつもりでいたのだ。相当なガッツがないと、できやしない。琥太郎自身、今やれと言われたら無理だし、相当な準備を要求する。
シュルツェンの冒険好きと言う自己評価も、間違い無いのだと、はっきり思うのである。
「……はっ! よく考えたら長々と! 申し訳ありません!」
だが流石に、シュルツェンは思い出したようだ。ハッとしたような表情で叫ぶと、琥太郎たちから、一気に距離を取る。そして、再びにっこり笑顔に変えて、
「募る思いはいろいろありますが! レッドヴィレの皆様! よくお越しくださいました、フラーレン公国の王都へ! こちらはエルノエル城。王家を代表して……皆様を迎え入れましょう! 只今より、フラーレン公国勢揃いの皆様いる……大広間へ案内するのです!」
そう嬉しそうに、手を伸ばしつつ、そう告げるのだった。
「ちょっと待ってほしいぞ、姫様。案内人は姫様だけじゃないんだからさ」
「あ、そうでした!」
「……その声は」
呆れるような声が後ろから聞こえれば、シュルツェンは振り向く。琥太郎は……いや琥太郎達は。その声に聞き覚えがあった。
琥太郎はその声の主へ言う。
「特訓してもらってた身で知らなかったけど……俺も嬉しく思うよ、パイ」
「ありがとな」
そう、彼女とはダークエルフのパイであった。琥太郎とは武器や拳などを交えた中であり、また……色々教えてもらっている仲である。
「まあ驚くよな。正直今でも思ってるよ。私がここにいてもいいかなって」
「よくないわけがないのです。私が決めました、いいに決まってます!」
「ありがたき話ですよ。……と言うわけで今の私の所属はこんな感じさ。王都でこのシュルツェン陛下の護衛みたいな事をやってる。盗賊にまで身を落とした私がだ」
「それは……違うはずだと思うけど」
パイの言葉に、否定の念を込めて琥太郎は言う。
パイが盗賊稼業を行っていたのは、事実だ。それは否定できない。
でもそれは。あのブッカーがパイに干渉したからであって、決して自分の意思だったわけではない。
「それは王女陛下も、しっかり認めていた。だからその罪は全部不問になって……だからここにいるんだと思うんだ」
「……コタロー。そういうことか」
「嘘だと思うなら女王陛下にも聞いてみるといい。きっと答えは同じだと思う」
「問いかけるまでもないな。陛下が見てる」
「パイ様がそう思ってくれて何よりですっ」
シュルツェンもバッチリとその話を聞いていた。彼女の罪を不問にして、尚且つ。彼女を王都へ迎え入れた張本人だ。その言葉は語らなくとも、その意思は非常に硬い。
「まあ何はともあれ。陛下やお前達のおかげで、私はここにいる。それはとっても良い事なんだ。完遂するよ、私は」
「……弟は?」
「クーナもちゃんと元気さ。ただ。王都の空気は嫌だ、慣れ親しんだ場所を離れたくないって、あの森に、あの家に居続けてる。それでも会えないわけじゃないさ。ほぼほぼ毎日。馬車に乗って、会いに行ってる。ちゃんと幸せに繋がってるよ」
「意思はめっちゃくちゃに硬いのよね、あの子は」
「わかる」
会ったことがある。だからこそ理解できる。あの弟の意思の大きさ、それと同時に森への愛着。
それを汲んで、彼女は一人。ここに行ったのだろう。違うのはただ一つ、二人とも幸せかそうじゃないか。
「さて、私の話も色々済んだかな」
そういうとパイは自らの服ごとその体をふわり、と翻す。彼女の着ている服。その胸の部分には小さな勲章。シュルツェンのつけているものと同じそれが、キラキラと誇り高くひかる。
「色々待たせる前に、みんなで大広間へ向かうぞ。と言っても……距離はそこまでじゃあないんだけどな」
「おーなのです! それでは皆様を案内させていただくのです!」
「だからって、遅れるなよ? 迷うかもしれないしな!」
「迷わないわよ! 多分」
「そこは断定しろ」
レッドヴィルの冒険者達は、一人の王女と、ダークエルフに先導され、城の中へと入っていくのであった。
話が進んでるか進んでないのかわからないですが
着実に進んでると思います。




