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舞い降りるは凶報と吉報

いつもの時間ではありませんが失礼します。

(普段はこの時間がいいとは言えない)

 マイクで声を吹き込む。


『それではエブリワン、シューネクストアゲイン、アンドグッナイ!』

 

 楽しげな大きな声を響かせる。ここはスタジオ。誰もが忙しく動く中で、男はいつもこの声と顔一本で仕事をしている。


 男はGotuberであった。神界に於いて、新しく生まれた、動画を作る神。そのうちの一人であり……最も有名な始まりの男でもあった。


 彼の存在を運営も認め、現在は公式チャンネルも任される。このアフロ男の自負であり、誇りでもあった。


「今日も素晴らしい放送でしたよ、ありがとうございます!」

 

 スタッフの一人が男へ声をかける。彼はウインクするように目を細めた。


「すげえなあ……俺の時代とは全く違う。俺のように手探りでやってる時代は過ぎ去った。だからこそ俺っちのノウハウがここまで活躍していると、鼻が高いねえ」

「いえいえ、僕は貴方に憧れてこの仕事に就いていますから。貴方の時代があってこそのGotuberの時代です」

「はっはー! 嬉しいこと言ってくれるねえきみぃ!」

 

 スタッフと談笑しながら、男は目線を映す。透明な水晶体。その画面に映し出されるのは、優秀なGotuberの動画だ。

 

「……これは」


 いわゆるアワード。その中に少しの時間だけ映るは、金髪の女神。


 男はそれを見て……やけに嬉しそうな表情をした。


「彼女が気になるんです? 気になりますよね。彼女は……ここ数週で一気に再生回数、評価ともに上がってきた。シンデレラみたいなもんです」

「シンデレラ、ねぇ」

「最初は底辺だったみたいですけどねえ。その上がりっぷりからシンデレラって言われてるみたいです」


 スタッフは言葉を言い連ねる。チャンネルの説明。これまで。上がった経緯。色々あったのだろう。話が終わらない。


(だいぶ面白いことしてんじゃん?)


 口角を上げつつ、その投稿者の画面をタップする。


 お気に入り登録。それは彼が、このチャンネルを認めたという証。


「すげえですわ、いきなりお気に入り登録ですか!」

「気にもされねぇよ。俺がそうしたいからすること。それ即ち気まぐれってことじゃん?」

「何を言いますか! 貴方ほどの人がですね……!」


 そうやって休みの時間を享受している最中のことであった。


「大変です!」


スタジオの扉を開けて、男性が一人やってくる。背中には白い羽。神の使いだ。


「どうした?」

「神界の下を観測していた同胞からの報告なのですが……」


「そこにおいて……魔王一柱復活の兆候が見えたそうです……!」


 凶報が、虚をついてやってきた。


 魔王。


 それは神界の下から出でる、歪みの象徴。神が管理する場所に届かない領域では、常に魔が生まれ、消えて。また復活するを繰り返す。


 いわば世界に対する副作用なのだ。ただ、その副作用が甚大な被害をもたらす。それだけ。


 それゆえに、周りは阿鼻叫喚となる。叫び。慄き。喚き。スタッフたちの嘆きが、一つの塊となっているようだ。


 だがそれを。


「なるほどねえ。伝えりゃいいんだろ? 安心しろって」


 静寂に変える男がいた。ニヤリと不敵な笑みを浮かべながら、そう言い放つ。


「俺はGotuber。言葉を鳴らす。お前たちはその言葉を伝えりゃいいんじゃん。そんじゃ、スタジオをそのままにしておけ。声の準備を……俺は整えるからさ」


 そういうと男はドロップを放り込む。のど飴。喉の調子を回復させる優れものだ。


 それを一気に溶かして……。息を吸う。


「それでは……3、2、1……!」

 

『全Gotuberの皆様。そしてGotubeをご覧の皆様。こちらは緊急で放送しております。私は、緊急事態を伝えなければなりません。先ほど神界より、歪みたる魔王が一柱。復活するのではないかという反応が察知されました。場所も魔王の正体も、現時点では一切合切不明となっております。

ですが……私はそれを、脅威と思っておりません。なぜなら、彼らがいる。選ばれし『勇者』がいる。『英雄』がいる。『貴方たちという存在』がいる。

私は……貴方たちのことを、心より信じています。原初のGotuberより、思いを込めて』


 ハイテンションとは違う、厳かかつ優しい声。その声で放たれるセリフは。


 あたり一面を、感動に鎮めるのに、十分だった。




「そうか。魔王が」

「えぇ。私たちに白羽の矢が立った、とのことです」

「別に構わないんだけどさ……。今度こそ、違う反応が見たいよね」

「あの反応だけは、たくさんじゃな……受け入れられたいものだ」

「そうだね。受け入れられないかもしれない」

「けど、受け入れられても、そうじゃなくても。僕たちは戦い続けるんだ。世界のために。だって。それが……僕たちは選ばれし『勇者』なんだから」

「勇者様に賛成じゃな。さあて、その場所は……」


 一方。


 その歪みを断ち切るための存在もまた……。準備に入るのであった。

新しい章の幕開けです。

異世界に魔王と勇者が……降り立ちます。

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