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青年たち、任務の場で謎の子と出会う

お疲れ様です。ややあって遅れました。

色々凄かったですね、ゲーム……。


 任務と依頼は違う。それは名前や依頼者というだけではない。


 任務という言葉には重みも確かに感じられるし、依頼者も、一般の人間ではなく。あくまでも国の人間、上の立場にいる存在だ。冒険者を含めた一般の人物にとっては、関わるだけでも大事になる。だがそれゆえに、任務というものの価値の重さも、普通の依頼とは違う。任務が届いたということは……。国の存在が、ある意味で自分達冒険者たちを認めたという意思表示に繋がる。それゆえに……任務の責任は、その重さは重大。大きなギルドの中には、任務を受けるだけのエリートまで存在するという。

 そこまで大きな準備、対処をしないといけないというのが。この任務というものの特異性なのだ。


「まずは、任務というものの特性から話します」


 紫髪の女性、エルメスはそう前置きをしつつ、言葉を発した。


「そもそも、任務というのは私達レッドヴィレの街が存在する国……。フラーレン公国のお偉いさん方。皇帝や皇妃、その関係者の皆様が対処をお願いするために冒険者ギルドへと依頼するものの総称のことを言います」

「フラーレン公国。アルヴィレアという世界の中に存在する一つの国か。初めて聞いたな」

「私達レッドヴィレは辺境も辺境なので、あまり関わり合いがありませんからね……」

「お偉い方が酒飲みだったら歓迎やけれどの! そんなわけありゃしねえ」

「ゴウスさん! あなたたちはそうかもしれないですけど!」


 ゴウスがさらっと発言をして、それにエルメスが真っ赤な顔で突っ込む。相変わらずだ。彼は相変わらず椅子に座って酒をかっ食らっている。そういったある意味強い精神を、もし国のお偉いさんが持っていたらある意味問題ではないだろうか。琥太郎はそう心の中で思った。


「まあそういうわけでして。国のことと私達の街のことは別。私達も普段関わりを直接持たないのですが……。物事には例外が存在します」

「その物事の例外が、任務ってこと?」

「そういうことです! 一応国には軍隊の方も存在しますが、彼らにできることにも限界があります。例えばこの前の行動だと……オーク騒動」

「あ、あれ……。騒動になってたの?」

「あれは、彼らがおかしいだけなんや。ワシらもさんざん言ったろうに」

『ウ?』


「呼ぶつもりはなかった。すまんな。お前さんにはもう関係ないことや。なんも心配せんでええ」


 オークたちも顔を出してしまったが、そういうことだ。琥太郎は分かっていた。そもそもオークとは、恐ろしい怪物であること。普通冒険者が対処するものでは、ないということ。


「本来、人間に危害を加えかねない。暴れて破壊しかねないオークたちがあらわれることは騒動、混乱と称され。軍に持ち込まれることになります。ですがそこには問題があって……」


 困ったような様子で、エルメスが言葉を切った。


「彼らの処遇は基本的に、倒すか倒さないか、その二つに限られます。彼らが手をかざせば、それは戦いの狼煙でしかない。軍の兵士として、それは間違っていないし正しいことでは、あると思います。それで救われるのは、私たちですから」


「そ、それは確かに正しいことでは……あると思うけれど」


 シエテの言葉も。その裏に隠れた葛藤も、ごもっともだ。自分たちも、彼らに会う前にはずっと言われていたことだった。危ない存在だと言われていたし、自分たちもずっとそう思ってきた。だからこそ、実際にあって驚いたわけで。

 普通に考えれば、倒すか倒さないかという二択になってしまうのは正しいこと。正しいこと、なんだけど。


「やっぱり、こいつらを見たら……」

「そうとは思えないのが実情ですよね。私もわかります。あのオークさんの姿を見たら、危険なことをするとは思えない」


 そういってエルメスが目を向けたのは、巨大な樽を両手で持ちながらきょとんと首を傾げているオーク。その姿には、怪物と思われていたその面影は全くない。


「だからだよ」


 そう口を開いたのは、オークの頭領となっている玲だった。


「だからあたしは……仕掛けを作った。少なくともこの世界の人間ではたどり着くことができないだろう問題を作ったんだ。いつか攻められた時にあいつらを、守ってやらないとなって」


 兵士を呼ぶんだとかそういう話は、聞かれてたからな。

 玲はそう告げた。確かに、あの問題は……。自分たちのように外から来た人間じゃないと、たどり着くことができないかもしれない。0がラブになるなんて、スポーツを嗜んでいないと分からないだろうから。


「ま、まあ! 暗い話はそこまでにしましょうよっ。あの子たちがちゃんとここにいる。それだけで十分なんですから!」


 パンパンと手を叩いて、エルメスが呼びかける。空気が少しだけ、元に戻った気がする。


「とにかく、任務に関しては……。国の人たちがあまり介入することができず、冒険者に任せる必要があると判断された場合。そういった時に出される特殊なものだと考えてくれて構わないです」

「それについては理解できたわ。そしてそれを、この私達がうけると!」


 シエテの表情が途端にきらめいた。彼女はどこまでも分かりやすい存在だ。楽しければ、目立てれば。それでよし。


「そういうことになります。特に今回の任務をシエテ様や琥太郎様に任せたいと思ったのは……。その任務自体の特異性といいますか。条件が特殊だと思ったからです」


「特殊? それは聞いておきたい。あれみたくなると困るからな」


 ここで初めて琥太郎が身を乗り出して問いかけた。その言葉の裏で脳裏によぎるのは、かつての苦い記憶。騙されて死にかけた、あの記憶。


「あ、あそこまで罠じゃないと思います! そもそもあれは私も落ち度が大いにありますから……。新人の冒険者を死地に追いやるのは……。とってもつらいですよね」

「そういう意味で言ったわけでは、ないんだけどもな」

「大丈夫です。わきまえてますから……。それでなんですが……。特殊な条件だと思った理由なんですが。今回の任務にあたっての条件として。あまり知られていない者がいいと。ついでにいうと……。若い者がいいと」

「あまり知られていないという理由で私が選ばれたってわけ? ずいぶんないいぐさね」


 シエテが思いっきり愚痴る。


「正直そこは関係しない。俺が思うのは……もう一つの理由だ。若い者がいいとは?」


 琥太郎が首を傾げつつ、エルメスに問う。


「理由としては、恐らく考えられることが」


 そういうと、彼女はとある部分を指した。


「任務の詳細に書いてあることが、国立魔法学園に物資を搬送せよというものなのです」

「魔法学園……。ああ、私も行った事ある奴!」


 シエテがポンと手を叩く。


「行ったことあるのか、女神」

「そうよ! そもそも私が雷の魔法を使える理由はそれなのよ! まあ私があくまで別の、神界にある魔法学園だったけど。私、そこに通ってたから。あぁ、楽しかったわねあの頃は……。授業に、学食に帰り路に買い食い……」

「思い出に浸る前に話すべきことを話せ。というか思い出が女神にしては庶民的だ」

「いった!? つねるなっての……。だって仕方ないでしょうよ、女神にも庶民はいるわ」

 

 琥太郎は思いっきり頬をつねった。シエテは涙をこらえて続きを話す。


「で、魔法学園は当然学校。先生ぐらいしか大人がいないわ。故に知らない大人がいたらすぐばれるの。最悪学園自体から攻撃をくわえられることだってある。そうならないために、魔法学園にくる大人たちは服に細工するとか、魔法を防ぐカードをつけるとかいろいろな手段を用いるけど……」

「冒険者にそれは無理ということか」

「そういうことだと思うわ。私の中の知識でしかないから、間違ってたらごめんなさいね」

「間違ってないと思いますよ、ありがとうございます! それは正しいと思います。前にゴウスさんが火を噴かれたことがあったそうですから」

「ゴウスさん……一体何で?」

「あの時は学園に巣食う魔物をぶっ倒すという任務じゃったがのう、うっかりもらったもんをつけ忘れて挑んだんじゃ!」


 酒を飲みながら、そう言い放つゴウス。それは笑い話になるのだろうかと、はっきり思った。


「まあ、つまりそういうことなんです。魔法学園に通うほどに若い人。シエテ様も琥太郎様もそういった見た目をしておりますから……。中に入った時に攻撃を受けることは、恐らくないでしょうから」

「そういうことか……。まあ、ぴったりだな」


 琥太郎は納得した。自分ここに来る前高校生だったし。享年17は伊達じゃないのだ。


「……私も、行く。琥太郎が行くなら、行く」


 するとここで青葉も手を挙げた。


「構わないですよ! 青葉様はAランクですが、任務は初めてでしたものね」

「うん。琥太郎と一緒にいる」


 くすっと小さく笑みを浮かべつつ、青葉はそう頷く。


「だったら、あたしもいかせてもらうとするかなっと」

「……は?」


 そしてそこに割り込んできたのは玲だった。それに対し、明らかな嫌悪感を持って反応したのは、当然のごとく青葉だ。


「はってなんだ?」

「……はもなにも」


 そういうこと青葉は言葉を切って、すぐに問いかけをぶつける。 


「……そもそもの話だけど。あなたは冒険者なの?」


 口にした疑問は琥太郎にとっても当然のものだった。玲はオークの頭領をずっとやっていたのだろうし、冒険者として活動していたなんて聞いたことはない。 


 すると玲はふふんと胸を張りつつ、


「ははーん。そう思ってたか。あたしは冒険者じゃないと。ならその情報、ずいぶんと古いぜっ!」


 高らかに宣言しつつ、物を見せつけた。これは間違いなく。琥太郎自身もかつて書いた……冒険者としての基本情報。そのランクはEランク。


「実力もそうだし、あたしが頭領やってた時の経験を加味して、ROOKIEランクじゃなくてEランクなんだってさ。あ、オークたちもあたしと同じタイミングで冒険者の登録をしたぜ。あいつらもまた。実力自体は高いからな。ROOKIEランクじゃない。と、いうわけでだ。断れるわけないよな? ほら、あたし達は琥太郎を中心として一緒だったしさ。それに最後も結局一蓮托生だったろ?」

「……ちっ」

「あわわわわ!? じょ、条件を満たしているなら大丈夫ですよ!! 冒険者同士での張り合いはいけませーん!!」


 ニコニコ笑いながら、青葉を煽る玲。その姿に、少女は顔をゆがめて舌打ちするしかなかった。


「で、私と琥太郎、今回までずっとROOKIEだったんだけど……。何なのこの友人に幼馴染たち」

「俺に、聞くな。俺も驚愕している」


 蚊帳の外だったシエテと琥太郎がふたり……ぽつりとつぶやいた。一応、自分たちが主役だったのに。




 そして、翌日。任務の時がやってきた。


 レッドヴィレの街を見送られて、目指す目的地は、森の入り口。地図を持って、琥太郎たちは歩く。


 人数が変わっても、役割は変わらない。地図をもつのは琥太郎の役目。シエテには任せられない。


「青葉は地図読めないもんなあ。地図見てるのに迷ったりしてたし」

「へえ、意外! そういう弱点持ちなのね」

「意外とこいつも、完璧超人じゃないってわけさ」

「……うるさい。今はスマホがあるし。それにナビゲートしてくれる人と一緒にいれば大丈夫。デートになるし」


 琥太郎の背後では、会話をする三人。単純にここら辺の土地勘がない玲、そして地図を見ても迷う青葉。二人もあまり役に立たないとなれば、地図を持って先導する役目は自然と琥太郎になる。経験を積んだり、依頼を受けたりして、土地勘も少しづつ分かってきたゆえに。今なら案内もそこそこできる。


「基本的に琥太郎に任せてた。学校へ行くときも一緒。幼馴染の特権」

「うわ、あまずっぱ!? おもいでがとんでくる! むせるむせる!」


 むふーとドヤ顔する青葉に嫌気がさして、シエテは前を向く。前を向いて、話題をしっかりと探す。新しい話題は、幸いすぐに見つかった。


「そういや琥太郎、アンタ武器新調したのね」

「あぁ、依頼受けるのに、素手じゃ無理だしな」


 そう返した琥太郎。彼の腰には鞘に入った武器があった。ツヴァイヘンダ―よりは、かなり短い。剣というよりは、ナイフといえる。


「ダガー。近づいてきた相手にはちょうどいい武器だと思う。琥太郎の前まで。近づかせるつもりはないけど」


 背負ったツヴァイヘンダ―をチャキっと鳴らして。青葉がそう告げた。もちろん、琥太郎の考えは、正反対だ。


 守ってもらいたくないから、武装する。戦えるようにしておかなければと、心から思う。


(重荷にはなりたくないしな)


 幼馴染と友人と駄女神。地図役という役割はあるし、見捨てはされないだろうが、重荷になるつもりはない。


 案外、森の入口へとすぐにたどり着くことができた。琥太郎は地図に目を通しつつ、呟く。


「地図上によるとここだが……」

「あ、これじゃないのこれ!?」


 地図から顔を上げた瞬間、シエテが指を指して叫んだ。

 

ウマで引くタイプの、大きな荷馬車。木製の頑丈な荷台を、引きずるタイプだ。恐らくこれだ。すぐに琥太郎たちは駆け寄る。


 果たして、そこには長身の男がいた。ウマの隣に立って、手を振っている。


「冒険者さまですか! この極秘任務、受けてくれて助かります」

「いかにも! 私が冒険者よ! 当然、完ぺきにこなして見せるわ!」

「シエテ、いきなり調子に乗りすぎだ。……はい、よろしくお願いします」


 ノリノリのシエテの服の袖をむんずとつかみつつ、琥太郎はあいさつした。心なしか男の表情が、少しひきつっているように見えた。


「冒険者の方はいくらいても助かりますので、ハハハ……。あ、それとなんですがね。依頼書にも書いたのですが……」

「荷物を運ぶかもしれないから、その時はよろしく。そう書いてあったな」

「はい……。そうです。私もあと数年若ければ、一緒出来たのですが……。心も体も大人になってしまい。お役に立てず申し訳ございません」

「若い人間の力は、いくらでも使って構いませんので」

「ありがとうございます……」


 玲と琥太郎と青葉は、男と話している。その話を聞きながら、シエテはじっと馬車を見ていたが……。


 ガンッ!


「!! そこにいるのは誰!」

「ひゃあっ!!?」


 荷台の蓋に何かが当たる音。それに気づいたシエテが声を荒げる。その声と共に、ガタガタと声がする。


「や、やめてくだされちょっと……それはえーと!」

「シエテ、何をして……」


 男がシエテを制すように告げる。


「やめてと言われたら、気になるのが私ってやつ!」


 駄目だった。言葉で切り捨てた駄女神は、すぐさま荷台の正面へと、回り込む。


 回り込んで少女は、荷台の屋根を、ちらと動かした。


「ああっ……!」

「さーて、何が待っているのかしらーって……」


 男の叫び声が響く。そして。シエテがその両目に捉えたのは。


「ったた……たっ、はっ! 一気に明るく。ということはまさか……私気づかれて……」

「……は?」


 荷物で満杯の状態で、それに囲まれて荷台の中でうずく鞠ながら周りを見渡している、一人の少女の姿だった。

新しい子と会いましたね。この子は一体……?

正体は秘密ということで。


少し遅れますね

申し訳ございません


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