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青年たちはオークの話を聞く

……いろいろ辛いことがありまして、ここまでかかってしまいました。

ほんと申し訳ございません。


また、新規投稿に伴い、プロローグから書き方を変えています。

どっちがいいか教えてくだされば幸いです。

「あー、今日も無理だったわけか」 

 

 一人の少女がぽつりとつぶやく。


 彼女がいるのは、土でできた広い部屋。壁も窓も、しっかりとしたつくりをしている。そんな場所にある長椅子に、彼女は座っていた。何かを待つかのように。


 少女の体を包むのは、どこの世界から手に入れたのだろうか。白くて丈夫な服と、短めのズボン。オーパーツ。そう言ってしかるべきものであった。

 その服から出している両手両足に書かれていたのは、何かの模様。健康的な褐色の肌が、鮮やかな赤で彩られている姿は、不思議さを与え……どことなく、神秘的なイメージを植え付ける。もともとそうじゃなかったけれど、偶然合ってしまったかのような、そんな感じ。


『ウウゥゥゥ……!!』


 そんな部屋へと、声を上げて入ってきたのは、身の丈が2mを超えるような巨体だった。頭には豚の顔。筋骨隆々の体。どこからどう見たって、危なさを醸し出す雰囲気。オークだ。人が怪物と呼ぶ種族。その種族の一人が、少女の部屋へと入っていたのだ。


「おー、もどったかー。どうだったー?」


 少女は長椅子に座りながら、オークに声をかける。その声音には恐怖というものが全くなく。むしろそこには優しさが見える。例えるなら、信頼できる友人と話しているような。上司が部下に声をかけるかのような。そんな優しさで。オークと人間という二つの種族が、親しげに会話しているという事実が、そこから見えた。


『ウゥゥ。ウー!』


 オークもまた嬉しそうな表情を浮かべた。そして両手で持っていた何かを見せる。小さな白い布がオークのごつごつとした手ではがされ、中身が露わになっていく。


「おー! これは、すげえな!」


 それを見た彼女が、思わず小躍りしてしまいそうな声を上げて喜んだ。


 中に入っていたのは、巨大なお肉の塊だった。部屋の中を通る光の中で、きれいな状態のお肉がきらきら輝いている。


『ウー、ッグー♪ ウッウー!』

「おーそうかー! もらってきたのか―! やったな!」


 オークがしっかりと、感情をこめて嬉しそうに声を上げた。少女はそれを聞いて答えつつ、頭を撫でた。まるで話が理解できているかのように、そう感じられる。


「他人がものをあげるってのは、普段の感謝を表してるんだ。ということはお前らは感謝されてるってこと! お前着実に進んでるぞ! 目標に向かってさ! 自信持てって!」


 そう声をかけると、オークはさらに嬉しそうな表情を見せた。巨大な豚面が、大きく緩む。


「よーし。お前ら―! お肉がきたぞー!」

 少女がそう叫ぶと、外から大地を踏みしめる音がいくらか聞こえた。

『ウオオォォォ!!』


 扉を開けて声を上げたのは、やはり豚の怪物たちだ。彼らは、思い思いのものを手にしている。


「育てた野菜よし、飲み物よし、お皿よし……! あとは……テーブルをひっくり返す!」


 土で作ったテーブルをぐるんと裏返せば、即席のホットプレートとなった。炭のようなものが、赤々と燃えている。


 それをじっと見ながら、オークの方へ目線を向け、赤い髪の少女は。思い切り口角を上げて叫んだ。


「よーしお前ら、今日はすごい記念日だぞ! もらったお肉で宴だーー!」


 その言葉と共に、オークの歓声が大きく響く。


 その光景は、怪物と呼ばれた種族とは明らかにかけ離れたものであった。



「赤い髪の女……。それって人間?」


 その言葉を聞いて、女神シエテはそう呟いた。その言葉にざわつくのは、場数を踏んだ酒場の冒険者たちだった。


「に、人間じゃあ一大事がじゃ! ほかの種族でもあかんのじゃけど!」

「え、何その反応……だって女っていうから、人間か、それ以外なら女神かなーって思って……」

「ゴウス、説明するがじゃ!」


 男性がひときわ筋肉質な男……ゴウスへと目線を移して声をかける。ゴウスは厳しい表情を浮かべたままだった。長い経験を物語る、多く深い皴を刻んだ顔に、さらに皴を刻みつけるかのような、強い表情だった。


「あぁ、説明する……説明せなアカンと思っての……。オークっちゅうのは……はっきり言うと怪物や」

「怪物……?」

「あぁ、怪獣と言った方がええかもしれんの。太い腕と筋骨隆々の体で、武器を振るい……外敵を潰す。そうやって生きてきた種族なんや」


 ゴウスが語り始めた。その口調はどこまでも静かで、それが逆にオークの恐ろしさを引き立てていく。


「でもな、オークの恐ろしいところはそれだけやない。連中は遠慮というものを知らないんや」

「……遠慮」

「奴らは欲望のままに、本能のままに襲って奪っていく。物や人とか……いろんなモンを襲っていく連中なんや。冒険のさなかで、オークにやられて泣いてるやつらを……俺たちァ山ほど見てきた。オークは脳みそが小さいらしいねん。生きるためには仕方ないとはおもうんやが……」

「いくら可哀想な頭しとっても、俺たち人間から物を無理やり奪っていく! そんな奴と基本共存は無理がじゃ。だから、動物とか魚とか…そんな依頼されるもんとかじゃなく、ただの怪物として討伐任務の対象になることも多いんがじゃ……なにぶん力強いのがの……」

「任務って……上から来るのよね。国とか……町とか」


 シエテはそう呟いた。前エルメスから聞いたことを繰り返す。


「とにかく、オークの力とかは、力強うとかいう境地じゃないがじゃ!!」

「あのぶっとい腕で殴られたら命いくつあっても足りんわ! 鎧すらぶっ壊すんじゃぞ!!」

「吾輩は斧が……あいつらの鍛冶技術はどこから来てるんじゃい!」


 冒険者たちが一様に口を出す。歴戦の者たちが、オークの話題で盛り上がっている。感じられるのは、強大な種族と対峙した時に感じる、大きすぎる恐怖。冒険者は命を失うのを何よりも恐れ、無事に帰ってこれるのを心より喜ぶ商業だ。そんな彼らにとって、身体も欲望も恐ろしく高いオークという種族は、まさに怪物に見えるかもしれない。戦う手段がない一般人はなおさらだ。対峙することに対してためらってしまうのも、わかるかもしれない。言葉だけで感じられる、その威圧感。絶望とまで思ってしまうような、そんな恐ろしさ。


「なるほどね……。そんな奴らなの」

 そう考えていた琥太郎であったが。隣の少女のことを考えると……その考えが一瞬で止んだ。そう、彼女の特性上……。それはありえないことだ。分かってたじゃないか。散々知ってきたことじゃないか。


 少女が口を開く。その表情に、恐怖や怯えなんてものはなかった。どう考えても、その目からは光は消えていない。いつもと同じ、きらっきらしてる青い瞳。希望しか知らない、そんな青い瞳。そんな瞳の彼女が言い放つだろうことは、琥太郎には読めていた。


「それで? オークって言ったっけ? そいつらの場所はどこなのよ? 会いに行くわよ」


 ざわっ!


 よどむような音が響いた。シエテの言葉を聞いた冒険者の方からだ。あれだけ恐怖を語ったのに、彼女は。何一つ恐怖を感じずに言い放ったのだ。無理はあるまい。


「ほ、ほんとにいくんじゃが?」

「吾輩が言うのもあんだけど……シエテちゃん。あいつら、すごく怖いぞ?」

「それにさ……エルメスちゃんも言ってただべさ。冒険者は……」

「冒険者は帰ってくるのが仕事。知ってるわよ。無茶をしない心を持つことってね。アンタたちが言うくらいだから、オークってやつはすごく強いんでしょう」


 シエテを心配しているのは酒飲み仲間で、特に仲のいい冒険者のおじさんたちだ。親子ほどの見た目の違いを持っているからか、シエテのことを娘として考えている節がある。娘として考えているのだから、とことん心配してしまうのは当然かもしれない。


「けれど、私はそれよりも強い勇気を持つわ。無謀だって思われても構わないから、とにかく勢いよくレベルアップしていきたいのよ。アンタたちの話を聞いてたら、すごく戦いたくなったし……」


 だけど、彼女は。女神シエテはこれだから女神シエテなのだ。猪突猛進、レベルアップできるなら何でもする。たとえそれでケガをしたり無茶をしたりしても、彼女はへこたれはしないだろう。へこたれるシエテなんて、琥太郎は想像なんてできない。いや、少しは見てきたけど……それはポーズなんだと思う。とにかく。シエテという女は、傲慢とまっすぐが服を着て歩いている存在なのだから……。はっきり言ってしまえば、そんな返答になるのは見えていたのだった。


「そ、れ、に。私一人じゃ無理かもしれないけど……」


 そういって、シエテは目線をこっちに向けた。


「凄い強い仲間がいたりするもん。……琥太郎、アオバ!」


 呼んだのは結局二人だった。琥太郎はやれやれと思った。でも、呼ばれてしまったからには仕方のないことだ。あの女神に逆らう気なんて起こすつもりはない。


「……行くわよ、オークの場所。目標、あいつらのことを見てくる。それだけで十分だけど!」

「結局行くのか。……結論は少し遅れてからしてくれ」

「……こたろーがいるならいっしょにいく。貴方はおまけだから」


 琥太郎がやれやれといった風にシエテへ告げた。ややあって、青葉もそう返す。


「やった、ありがと二人とも! 二人がいれば……なんも怖くないわね!」

  シエテは自信満々そうに胸を張りながら、そう叫ぶ。男たちはその姿をしっかり見ていた。


「……じ、自分たちがやりたいってならええんじゃが……」

「ええんじゃねえの?」


 不安そうに告げる男に、ゴウスが口を出す。驚いたことに、その言葉は肯定だった。


「口酸っぱく言うけどなぁ、結局冒険ってのは楽しむことやで。女神の姉ちゃん、すっごく楽しんでるやろ。あぁ言うやつは生き残るで。俺もお前もそうだったやろ。間違いねえ」

「そ、そりゃあそうがじゃ……」


 そういうと押し黙ることしかできなかった。

 

結局、オーク確認大作戦は、ここに実行されることになったのである。


「オークの集落の案内ならおれがしてやんよぉ! 終わった後ガン逃げするけどなぁ!」

「お前はしっかり反省するがじゃ!」

 返り討ちにあった男が自分もその流れに乗ろうとしたことで怒鳴られていたのは、言うまでもない。

シエテたちは結局怪物に会いに行きます。

さてどうなるか……そして俺の体調もどうなるか


追記。大変申し訳ありませんでした。

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