青年たちは幼馴染と再び繋がる
また遅刻しました。もっと頑張らないと……。
「……これは……一体どういうことなんだ」
琥太郎は心底驚愕した。無理もない。あまりにも衝撃的な事実が、そこにあったからだ。
「何? 琥太郎。こいつ知り合いか何かなの? 無様ねー固まっちゃって」
シエテの呑気な言葉も、聴き取れはしなかった。それぐらい、思考が真っ白になっていた。
「そもそも、俺は……相丘琥太郎は死んでここに来たはずだった」
言葉を紡ぐ。車にはねられた。道路に叩き付けられて死亡し……その結果として神様であるシエテと一緒にこの世界へやってきた。やってきたはずなのだ。
「俺が死亡した事実は変わらないし、神に祈っても変わらないことだと思っていた。だから……。だからこの世界で、アルヴィレアという場所で……生きてやろうって思ったばかりだったんだ。それなのに」
「それなのに?」
「それなのに……!」
そう叫んで、琥太郎は目の前の少女に居直る。そこには余裕なんてものは何もなく、完全に焦ったような表情。いけないものを見てしまった。そんな感じでしかなかった。
「それなのに、どうして貴女がここにおられるのですか。青葉さん!?」
耐え切れなくなった。新しい世界に、なぜか自分の幼馴染がいる。しかも恐ろしく強くなって。
何? なんで彼女がここにいるの? なんでこんなゴツイ剣なんか持ってるの? そもそもあの後どうなったの? 疑問は尽きない。尽きないせいで頭が混乱してきた。さとり世代だなんて仇名をもらったり、僧侶のようだとか言われても、混乱するときは混乱するのだ。
「アオバ。アオバアオバ……。あー、アオバって……。琥太郎、もしかしてアンタの……」
「あの時見たならわかるだろ。お前が記憶を開いたんだからな」
名前を繰り返して呼びながら、シエテが問いかける。その答えは、シエテの予想通りだろう。当の琥太郎自身が、かなり焦っているのがその証拠だ。
「……高坂青葉。俺の……相丘琥太郎の幼馴染だ」
「やっほ。高坂青葉。こたろーの幼馴染だよ」
手を軽く振りながら、琥太郎に改めてその名前を告げる。かわいらしい仕草だ。その手は金属製の鎧に包まれて、かなりゴツいのだが。
「へー、改めて始めてみるわ。幼馴染ってやつねぇ。幼馴染……」
シエテがじろじろと青葉のことを眺める。彼女は気にしていない様子でいた。
いや。彼女の様子からして……。そもそもシエテの姿を視界にとらえられていないという可能性まであり得てきそうだ。見れば、シエテのことを、青葉は全く見ていない。
「あははっ、琥太郎……アンタ中々やるじゃないの!」
そんな中で、突然シエテは笑みを浮かべて琥太郎を見た。無表情の彼の姿を見ながら、問答無用で続ける。
「ふふん、あーの平凡が服を着て歩いてた琥太郎のこと。幼馴染って聞いて、どんな平凡な奴があらわれるかと思ったわ? けれど!」
するとすぐに青葉の方へと振り向いて、びしいっと指を突き付ける。
「けれど! この女、私に及ばないまでも……なっかなかすごい奴じゃないの! だってそうでしょう? 無一文の私達に思いっきり多額の金を投げ込むし、私の剣の予定だったつう゛ぁいへんだーを持ってるし! これつまり優秀ってこと! いやーついてるわ、私!」
そして、少女は目の前の鎧騎士の方へと一気に近づく。すぐに右の手のひらを突き出した。シエテ流の、全力で彼女のことを歓迎するポーズだ。
「高坂青葉! 今からアンタには私こと大人気必至予定の女神Gotuber、『あるしえてチャンネル』のシエテと一緒に冒険する権利を与えるわ! どーう!? 嬉しいでしょ!? 感動の嵐でしょう!? 涙でちょちょぎれてもいいのよ!? 感謝感激雨あられってやつよね、そうに決まってるわ! 私と一緒に遥かなる旅路へ、レッツゴーよ!」
(よーし決まった! かんっぺきな名乗り文句!)
心の中でシエテが叫んだ。自分でも感動するくらい、ありったけの名文句をつらつらと言い連ねて、胸も張って告げることができた。こんなの百点中の百点満点だろう。思わず自分に酔ってしまうのも、頷けるくらい。すぐに返事が来るだろう。一緒に来てくれるだろう。そう思いながら、待つ。
(……あれ?)
返事が来ない。おかしい。
酔っていた頭を覚まして、目の前を思いっきり見る。
さっきまでいた鎧の騎士は、目の前から忽然と姿を消していた。
「ちょ、えええぇぇぇぇ!?」
全力の歓迎が空振りに終わったシエテは、思わず背後を見る。
「……やっと会えた。こたろー。一緒に行こ? うるさい山猿も、先生もお母さんもいない。今は二人きり……」
「……そうは言ってもだな」
背後を振り向けば、さっきまで自分が仲間にしたがってた、あの少女は。いつの間にか背後にいた青年の方へと動いていた。ギュッと体をくっつけて、心底嬉しそうな表情だ。その表情と気持ちのまま、自分のもとから去ろうとする。
「ちょおおおっとまったああああぁ!!」
思わず引き留めた。全力で叫びつつグイっと腕を突き出しながら、女神は思いっきり二人を呼び止めた。
「すとっぷ、すとっぷ! 二人きりじゃない! 二人だけの世界に浸ってるんじゃなーい!!」
「あ、いたんだ。気づかなかった」
「いたんだ、じゃないわい! 気づかなかったというより、気づくことさえしなかったの間違いじゃないかしら!?」
「……?」
「何言ってるんだこいつ? 的な感じな反応みせるんじゃないわよ!」
きょとんとした表情を浮かべながら、首をかしげる青葉。そう、これが青葉だと琥太郎は思った。彼女は気まぐれで、のらりくらりとかわしていく。玲のことを思い出した。そういった直情的な相手に対し……青葉のその反応は絶対的な有利に立つのだ。
シエテ。彼女は瞬間湯沸かし器。どのご家庭にも一台……すらいらないけど、すぐにお湯が沸く優れものだ。つまり、青葉ととことん相性が悪い。
「……まぁ、それはさておいて」
哀れ、シエテの言葉は切り捨てられた。ここまでスッパリだと、むしろ相手に同情する。
「このパーティなんだけど。私とこたろーと……二人しかいない」
「私クビ!?」
シエテがガーンとショックを受けたような表情を浮かべた。
「嘘……。なんかショックも超えて笑うしかないんだけど。女神が即リストラって。人間を異世界転移させて生活させる動画で……その人間にリストラ喰らうなんて……」
がくっと肩を落として、シエテはそう呟く。あまりにもその姿は無力だった。さっきまでの勝気すぎる女神の姿など、欠片も感じない。
……ぐぅ。
さらに追い打ちをかけるように、お腹の鳴る音が響いた。そういや、何も食べてない。あの酒場兼ギルドの募集所を出てからずっと。歩きっぱなし、逃げっぱなしだ。お金も、降って湧いたものがなければ全くのゼロ。こんな時にも、お腹は容赦なく減るものだった。
「……うん、行こうかこたろー。料理を出してくれるところを私知ってるから……。一緒に食べよう。二人で」
ギュッと体をくっつけながら、そう告げて歩きだす青葉。もちろん、背後でうなだれているシエテはガン無視である。
「ちょ、ちょちょ、ちょぉっ……!」
このままだと置いてかれる。シエテはすぐに立ち上がり、言葉に詰まりながら必死に引き留めにいった。
「あの、その……ね? えーと、その……。今ここで置いてかれると、私が非常に困ってしまうというか……」
「……?」
その言葉に青葉は首をかしげた。そのしぐさ自体は可愛いが、今ここでされると非常に辛い。
そんな取り付く島が何もない状態の中。助け舟を出したのは隣の青年だった。
「……すまない青葉。お前がそれをしたくないのは十二分に、十二分に伝わってくるんだが……」
そう前置きをしつつ、申し訳なさそうに幼馴染へ告げる。
「あいつも一緒に連れてきてくれないか。このままあれを置いていくと、俺が困るんだ」
青葉はその提案を聞くと、じっと琥太郎の姿を見つめていたが、少し不機嫌そうな心地になりながらも、
「……こたろーが言うなら。こたろーが言うならいいよ。ついてきなよ」
立ち止まってシエテへ振り返りながら、そう言い放った。
「……こ……」
シエテの表情が一瞬で明るくなる。小さくぽつりとつぶやいた。それと同時に、彼女の目からあふれるのは、涙。
「こたろーしゃああぁぁぁんっっ!!」
決壊するまで一瞬だった。ボロ泣きしながら、シエテは青年の名前を叫ぶ。
「ありがとうごぜえます……ありがとうごぜえますぅぅっ! わたし、こんかいのごおんぜったい、ぜったいわすれませんからああぁぁぁ……!!」
感謝なのか、言葉にならないような叫び声を上げて跪くシエテ。
(……なんか失敗したような感じがするんだが)
琥太郎は心の中でそう呟いたが、言葉に出さないようにした。
するというか、しなきゃいけないというか。
結局のところ、涙のダムが思いっきり決壊したシエテは、その後泣き止むまで2,3分要したのだった。
「っぐ、はぐ! がつがつ……!んーー……幸せぇ……」
数分後のこと。琥太郎たち三人の姿は、街の近くにある小さな食堂にあった。この街の常識なのだろう。当然のごとく木で作られたその建物の中で、旅人たちは軽い食事が楽しめる。その食事は意外と美味しいようだ。琥太郎たちの周りにも、その料理に舌鼓を打っているだろう者たちの姿が見える。
そしてその中にある一つの席。ガツガツと実際に口で言いながら、とんでもない勢いで、皿まで食らいそうなほどの速さで食べ進める駄女神を隣に、二人は向かい合った。
「……まさか異世界で、タコスのようなものを見るとは」
木でできた皿に盛られたものを手で軽くつかみながら、琥太郎は小さく告げる。白いパンのようなもので、緑色の葉や肉を挟み、形作ったもの。見れば見るほどメキシコ料理の代表格によく似ている。
それを口に運んで、思いっきりほおばった。ふわっとした感覚と、肉のジューシーさと、葉みずみずしさ。それらがすべて重なった。
すごく、美味しい。隣のシエテが満面の笑みで貪り続ける理由が、はっきりわかる。
「トウモロコシ……に似たようなものが名産らしいから。だからこういった料理が生まれるんだと思う。名産品を活かしたいのは、どこの世界も変わらない」
青葉は皿に目線を移すと、琥太郎だけに聞こえる声で呟いた。鎧のない色白の手。それで料理を手に取った。小さな口で、もぐもぐと咀嚼する。
「……うん。やっぱり美味しい」
ごくんと飲み込んで、そう小さく頷いた。その表情に浮かんだのは、小さな笑顔。
「随分と知ってるんだな、この場所。まるで俺たちが来るまでに、何日も過ごしたかのようだし」
「……知ってる。ここで目覚めたから」
そう小さく呟いて、目線を琥太郎へと合わせた。
「……あぁ、やっぱり……お前もこの格好でここに来たのか」
琥太郎がそう呟く。鎧を脱いだ青葉の服装は、学園の制服。紺色のセーラー服に身を包んだその姿で。その姿のまま……この学園に来たのだ。
「うん。ここに来るまでに……元の場所で色々あった。こたろーが死んだから。皆哀しくて」
「……良ければ、聞かせてくれないか。何があったのかを。あの後で何があったのかを……」
じっと目の前の少女を見つめながら、琥太郎は言い放った。何もかも、知りたかった。自分がいなくなった後の、世界のことを。
瞬間、流れるのは沈黙。周りが色々と話す中で、このテーブルだけが、何もかも止まっている。
「……分かった。琥太郎が言うなら」
沈黙ののち、こくんとうなずいた青葉だったが、
「……ところで、あなたは何しているの?」
ふと不機嫌な様子で言葉を紡いで、隣を見た。隣にはさっきまでひたすらにタコスのような何かを貪っていたシエテの姿。彼女が向けているものは、黒いレンズのあった四角形。いわゆる、スマートフォンのようなもの。明らかに不安を煽るものだった。
「っふえ……? 気にしないで。再会シーンを動画にするだけだから……」
「普通に気にするだろ。つーかどこから出した」
「女神に不可能はないわよ。それに私はGotuber。動画撮影のために道具は必ず持っていくものよ。カメラとかPCがあればよかったけど、持ってくるの忘れ……というか転移する予定がないのに転移しちまったから、そもそも機材何て持ってくることががなくて……。だからこその最終手段。動画を撮るためならなんだってするわよ」
「迷惑系にでもなるつもりか?」
「まさか。あの時は投げやりな態度取ったのは認めるけど……。さすがにもうそれはしないわよ」
スマートフォンを手に持ちながら、シエテはそう告げる。琥太郎もあきらめた。思い出した。そもそもこの女神は動画を作るために自分を呼んだんだった。異世界生活なんてものを行わせるために、自分をここへと向かわせたのだったのだと。彼女自身がとんでもない駄女神ムーブをやらかし続けるから、あまり気づくことはなかったが。
「……それは決定事項か。分かった」
そしてその諦めは青葉にも伝染した。ため息を大きく吐きながら、彼女はスマートフォンのカメラをじっと見る。
「ありがと。それじゃ、改めて話してちょうだい? 変な編集はかけないわよ」
「……ドキュメンタリー風でお願い」
青葉はそう淡々と告げた。彼女自身が少し乗ったのは……琥太郎の気のせいだったのだろうか。
「……と言っても、こたろーが死んじゃったあとのことは、あんまり覚えてないのだけど」
そして、少女は淡々と話し始めた。あんまり覚えていない、という言葉に……どんな意味が含まれているのか……。言わなくても分かる。
「こたろーが死んじゃったことを病院で言われた後、私も含めて、みんな真っ白になった。真っ白になったから、何も覚えてないの。覚えてるのは、みんな。山猿……というか玲や永田先生、こたろーのお母さん。皆が屋上にいて……。何かを話していたことぐらい。多分、こたろーのいない世界で生きるのが嫌だって思ってたから、それでいろいろ言い争ってたんだと思う」
「……いない世界で生きるのが嫌って、どれだけなのかしら……」
そう小さく呟いて、げんなりしたような表情を浮かべたシエテ。青葉の語りは終わらない。
「けれど。言い争ってた途中で、唐突に空が暗くなって。ごろごろって雷が鳴ったの。その雷が、病院に落ちて……。私は……何も見えなくなった」
「……それが死因だな、間違いなく」
「うん。最初はね。私をこたろーがいない世界から遠ざけてくれた。自分のことを消してくれたんだって、そんな神からの雷だって思ったんだ。けれど、違った。私の体から、私の魂は……一向に消えなかったの」
他人事のように話す青葉。彼女の言葉の一つ一つが、心の中に刺さっていく。どことなく他人行儀で、淡々としている。その淡々さが、逆に怖さを掻き立てる。
「……それでね。目を覚ますと……。何故か私はお城の中にいたの」
その時、青葉がどう思ったのか。今の琥太郎には分かる。自分と、おそらく同じだ。
「お城の中で、なぜか一人だった。綺麗な場所なんだけど……近づけない場所。死後の世界かなって思ったんだけど……それにしては私の意識も鮮明だったから」
「お城というか、神界じゃない? それ。つまりは、アンタも琥太郎と同じく、どっかの女神や神様に呼ばれたのよ。動画の種にね」
シエテがそう補足する。こういう時、当事者であるシエテがいると、やけに助かる。ただ、その理由は決してシエテのような打算だけじゃないだろうと思いたいが。
「……それで待ってたら、声が聞こえてきた」
「……なんて?」
琥太郎は問いかけてみる。
「『……目覚めましたか、志半ばで途切れた哀しき魂よ。貴女に新しい機会を与えましょう……』。そう言ってた。辺り一面に響いたけど、聞いたことのないとっても優しい声で。何も不安も不満も感じなかった」
「……優しい声か。まるで上位互換だな。カタカタとした音と、独り言のような喚き声で起こされた俺とは大違いだ」
「どういうことよ、それはっ!」
隠れた場所で肘で軽く小突かれた。実際、事実だから仕方ないような気がする。自分が起こされたのはどこかのスタジオ内のホールで、しかもPCのようなものをカチカチ叩く音によって目覚めさせられたのだ。青葉が起きた時と、とにかく事情が違いすぎる。
「……すぐにやさしい声の人は、私の目の前に現れた。水色の髪の毛の……本当にやさしそうな雰囲気の人だった。いや、人じゃない……女神だっけ」
「そんなんどっちでもいいわよ。それで、誰なのよ? 私と同じことを考えたようなお馬鹿は」
シエテはこめかみを指でなぞりながら、そう問いかけた。
「……たしか、ランシェットって言ってた」
「……ランシェット……それって『剣聖ランシェット』のこと!? 嘘!? マジなの!?」
その名前を聞いて、一番パニック状態になったのはそのシエテだった。一人でわたわたしながら、青葉に対して顔を思いっきり近づけて叫ぶ。
「……勝手に燃えたりしないでくれ。まず誰だ? 知り合いなのか、そのランシェットってやつは」
「知り合いも何も!」
琥太郎に問いかけられて、バンっとテーブルをたたいた。周りが思い切りざわつく。
「『剣聖ランシェット』って言ったら、神界では知らない人はいないくらいの剣の使い手、剣神よ! 多くの戦争で輝かしい戦績を残してきた、蒼髪の女神にして……Gotuberとしても、総動画再生回数は数億回を突破するようなとんでもない奴! 『猿でもわかる剣術講座』シリーズなんて、講座系動画というGotubeでも伸びにくい奴なのに、数千万回も再生されるのよ! なんなら私だってチャンネル登録してるしね! ランシェット様ファンクラブの一桁番号になったりするわよ! それっくらいとんでもない神様なのよ……『剣聖ランシェット』は!! はあ、サインくれないかしら……」
「……つまりは、シエテのはるかに上位互換ってやつなのだと」
「比べるまでもないわ! いつかは越えていきたいけれど! 今はまだ天上のお方なのよ……。そっか、あの人か……あの人に会ったのね……」
がっくりと肩を落とすシエテ。対象が化物すぎるのを感じたのか、その表情は暗い。
「……最初は新しい機会なんて必要ないって思った。新しい機会なんていらない。死なせてくれっていうつもりだった。……けれど」
「けれど……?」
その言葉が引っかかって、琥太郎はそれを繰り返す。青葉も『けれど』とまた繰り返した。例えるなら、ツーカーのようだ。
「けれど、こういわれた。貴女の後悔の源泉は、まだ生きていますよ。今は新しい場所にいます、って。そういわれたら……私は断ることができなかった」
そういって、言葉を切る。その言葉の大きな意味を、琥太郎は知っている。
だって、青葉と自分は幼馴染であって……。青葉が自分のことを、とても大事に思っていたのは、本気で分かっていたから。
「……それで、その新しい世界。アルヴィレアに、加護を受けた上できちんと連れてってもらって……。やってきた先がこの街だった」
幼馴染の少女は、ここに直接送り込まれたらしい。琥太郎は、何もない地面が目覚める場所だった自分とは状況がまるで違うことに驚いた。
本当に何もかもアイツの上位互換じゃないかとさえ、思った。
「それで、この街の住民の一人になって、色々過ごした。あなたが言ってたこの剣も、私を守る鎧も……その過程で手に入れたもの」
「あ、つう゛ぁいへんだー!」
シエテが目線を下に映して、そう叫ぶ。見ているだけで重さを感じて尻込みするような、圧倒的な威圧感を持つ長剣。恐らく、ひょいっと持ち上げて……手に入れたのだろう。
よく考えてみたら、剣道部のエースである青葉に、剣が強いという女神の加護を合わせれば、そりゃあ持ち上げられるし、振り回せるだろうと思った。
「……街の生活は楽しかったけど。ずっと穴が開いてた。だってこたろーに会えなかったから」
ぽつりと小さく呟いた。けれど、すぐに琥太郎の方を向いて、
「けど、穴は埋まった。すぐに。こたろーがやってきたから。こたろーとまた会えた。それが一番、嬉しい」
ニコッと小さく微笑んで、幼馴染はそう言った。彼女はいつもそうだ。毎日毎日顔を合わせるけど、嫌な顔をしたことは、一度もない。
「だから、お願いがある」
すぐに真剣な表情に変わって、そう前置きをする。大事な宣言をするように。
「もう、絶対離れたくない。一度いなくなったものを、もう一度失うのは……とっても怖い。おまけも一緒にいていい。こたろーに魔物は近づかせない。皆私が消す。叩っ斬る。だから……」
そして、息を吸って、はっきりと願う。
───私と一緒にいて。
幼馴染の願いを……琥太郎は否定することはできなかった。
こうして、青年の旅に、幼馴染がパーティとして加わることになったのだった。
ようやくヒロインが一人仲間にできました……。長かった……。
強い幼馴染が来て、ここからようやく物語が動き出していきます。




