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感慨もひとしお

 ゴブリンどもに気付いた時には結構な距離があって、ヤツら、のそのそゆっくり歩いて来るもんだから、俺たちは充分に迎撃体勢を整えられたんだけども、何だかボンボンどもがやる気になってやがって、「役に立ってみせますよ!」なんてほざきやがる。

 俺がちっと前に言った、「何かで役に立ってみやがれ」ってのを気にしてやがるな、ってなもんで、じゃあお手並み拝見といってみるか?なんて一瞬思ったが、これが結構数がいて、五匹か六匹か七匹か八匹、いや九匹か?まあ十匹いやがるわけなんだが、ボンボンどもは「よーし」なんつって何だか怯む様子がねえ。

 やる気になるのはいいんだけども、ゴブリンなめると痛い目を見るもんだから、こりゃよくねえな、ってなもんで、俺はちょいとばかしよ、ボンボンどもを、ビビらせることにした。


 何してビビらせるかっつーと、「おめえら、ここに名前書いとけ」っつってボロ紙をボンボンに渡したわけよ。そしたらばよ、ボンボンが「何でですか?」なんて言ったもんだから、「ゴブリンなめてる初心者はすぐ殺されるからよ、ギルドに死人として報告しなきゃなんねえだろうが、俺が」っつって涼しい顔してやったらば、「えっ」なんて目が泳いじまって、サーッと血の気がひいてやがる。俺はビビらせようとして、こんなこと言ってるわけだから、よしよし、成功だ、ってなもんで、第一段階はクリアしたと思ったんだけども、紙に名前を書いてくボンボンどもは、もうブルブル震えちまって、名前を書いた紙を受け取ったらば、震え文字になってやがって、読みづれえったらありゃしねえ。

 だから俺は、「んだよこれ、読めねえよ」っつって、ボンボンどもに順番に名乗らせたらば、「ボン・ボーンです」「コッシ・ギンチャックです」「タイ・コーモチーです」なんつっておめえ、そのまんまじゃねえか。

 分かりやすくて最高の名前、ってなもんで、こんなネーミングセンスの親のツラが見てえよな。

 絶対バカだろ、まあいいや。

 コイツらの人生がどうなろうが俺には関係ねえしな。


 ま、さしあたっては、小鬼(ゴブリン)殺しの基本を教えて、やらせてみるか、ってなもんで、俺は、地形の把握、ヤツらの装備の把握からさせようと思ったんだが、そいだらマオが、「弓ゴブリンいないから近接戦闘にしかならないね。 川あるしラッキー」っつって川に入ったもんだから、ボンボンたちは「ん!?」ってなもんで、一瞬キョトンとした。

 そんでよ、マオが「分かるかなー? 相手の体格と、川の深さ」なんつったら、コッシがすぐに、「あっ、そうか!」っつって、ザンザン浅瀬に入ってった。

 続いてタイも、ボンボンも、理解出来たみてえで川に入る。

 そいだら小鬼どもも追ってきたけども、小鬼(ヤツ)ら体が小さくて、浅瀬でも胸まで浸かるもんだから、川の流れに邪魔されて、動くのも一苦労よ。

 こうなっちまったらもう有利なんだけども、ボンボンどもがバカ正直に正面から待ち構えようとしてるから、俺が一言「回り込め!」っつったらば、アッ、てなもんで、ヤツらゴブリンの横やら後ろを取って、こっからはもう一方的な駆除になった。

 ゴブリンどもは川の流れとこちらの動きの二つに常に対応しなきゃなんねえから、ろくすっぽ攻めも守りも出来ねえって寸法よ。

 これでボンボンどもがあんまりにも危なげなくゴブリンを全滅させたもんだから、ほんとは何も言うことねえんだけども、大喜びで「ゴブリン楽勝だな!」なんて言ってやがる。

 だから俺は「浮かれてんじゃねえ! 勝ったのはラッキーだったと思っとけ! 俺が言う前に回り込む様にしろ!」っつってボンボンどもと、ついでにマオにもゲンコツ食らわせて「さっさと来い!」っつってザンザン歩き出したらば、ボンボンどもは不満そうにぶつくさ言いながらついてきたんだけども、そいだらマオが、「ゲンコツはむかつくけど、話は素直に聞いた方がいいよ。 回り込むのは基本だから。 ディーさん腕は確かだし、戦いに関しては全部が重要なアドバイスなんだよ。 そういう人だから」っつって、マオの方がボンボンどもより年下なんだけども、言われたヤツらも「はい!」っつって、ボンボンどもから、ふてくされた雰囲気がパッと消えた。

 こういうヤツらは見込みがある。

 そしたらマオも、見込みがあるって思ったんだろうな、これまで俺がマオに教えてやった基本所作やら戦術やらを、噛み砕いて教えてたよな。

 だから俺はよ、聞いてねえフリしながら歩いて、よくねえ教えがあったりしたら口出して訂正してやろうと思って全部聞いてたんだけども、これがしっかり要点押さえてるし、間違いもねえ。

 それどころかマオは、一人一人に合った武器まで提案してるもんだから、この短時間でボンボンどもの特性をちゃんと見てたのが分かったし、これがなかなかいい意見なもんだから、マオはパーティリーダーの素質があるな。

 だから俺はよ、マオを連れて初めてダンジョンに入った時のことなんか思い出してよ、あれはあの時言ったヤツだな、これはこの時言ったヤツだな、小娘なりに成長してんだなあって感慨もひとしおで、ボンボンどもの輪の中心にいるマオに目を細めたよな。

 そしたらばよ、足取りが軽くなって、何だか気分もいいもんだから、「おーいおめえら! ダンジョン脱出したらよ、マオが言う武器、俺が作ってやらあ!」っつって、そしたらマオもボンボンどもも、笑顔で走って追いついて来やがって、やいのやいの話しかけて来やがる。

 バカ野郎、懐くんじゃねえよ、てめえらー。

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