表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/34

バカ騒ぎ

 それからの俺はというと、ムラムラ来てることをひた隠しにしながら、頭の中ではもう、どうイチャモンつけてマオの体をまさぐるかばかり考えていたよな。

 でもよ、これが本物のマオを見ると鼻血が出るもんだから、俺は必死に自分を抑える為に、ボンボン共にゲンコツをお見舞いした。

 そいだら「俺たち今何で殴られたんですか」とか抜かしやがるから、「うるせえ。何かで役に立ってみやがれ」っつったらば、何かしょんぼりしてたな。

 そんで俺たち一行は、川沿いに下って下って下って行ったんだけども、しまいには行き止まりになってやがって、川の水がまた滝みてえに下に落ちてるみてえで、これが、どこに行くのか分からねえ。もしかしたらすぐ下が滝壺で、外に出れるのかも知れねえけど、これがすげえ高さで谷底に真っ逆さまだったりしたらどうしたもんかな、ってなもんで、これは困った。

 いやさ、俺一人なら滝登り崖登りぐれえ造作もねえが、グスマンやマオ、ボンボンたちを全員抱えながらとなると、これがほんとにめんどくせえ。

 俺にはやる気と根性が足りねえもんだから、どうしたもんか、他に道はねえかと思うんだけども、これがねえもんだから、渋い顔してるとマオが「アゴは割れてるし、アゴと口の間にはウメボシ」なんて言いやがって、俺はほんとに傷ついた。

 そいだらボンボンが「こりゃあ引き返しますか?」ってなもんで、「そうだな」っつったらばマオが、「えっ、引き返すの!?」なんて不満そうな声を出したもんだから、「バカ野郎おめえ、グスマンだっているんだぞ? 安全に(ある)ってくのが俺たちの道だろ」「そっか、そうだね。 ディーさんも親になったんだなあ」なんて言うもんだから、俺は「そんなもんおめえ、当たり(めえ)よ」なんて言いながらマオからグスマンを受け取って、「子どもの為なら親は、何だって出来る」ってなもんで、顔もキリリと引き締まるわけよ。

 そいだらマオもほぇーと感心して、「いやディーさん立派だよ」「よせやい」「いや言わせてよ、立派だよ」「もっと言えよ」「言ってほしいの」「言ってほしいよ」「そこ自分で欲しがっちゃダメだよ」「何が」「何がじゃないよ、そこは謙遜して話を終わらせないと」「何で」「何でじゃないよ、自分から欲しがったら台無しじゃん」「何てめえ、俺はこうして生きて来たんだこの野郎」「だから人望ないんでしょ」なんて言いやがるもんだから、俺はすかさず、「人望はないけど人徳はある」って言ったんだけども、マオが食い気味に「人徳もないよ」なんてズバッと図星をついてきたもんだから、俺はほんとに傷ついた。

 こりゃもうゲンコツだと思ったんだけども、マオからフワッと少女のいい匂いがするもんだから、本当ならここで一発ゲンコツぶちかましてザンザン歩くけども、距離が出来たら匂いを嗅げねえもんだから、それは一旦やめにして、俺は抱いてるグスマンを見せびらかした。

 そいだらマオもグスマンの顔を覗き込んで「グスマンちゃん可愛いねえ」なんて言って、顔の距離がもう近えもんだから、俺の鼻はフル回転よ。

 そんで吸い込むマオの香りに「たまらねえよな」っつったらば、マオはグスマン見ながら「たまんないよね、可愛いよ」なんて言うもんだから、おめえもだよ、おめえも可愛いんだよ、ってなもんで、俺はほんとにマオを見ながらムラムラしてきて「ああ、たまらねえよ、たまらねえ」と言ったらば、ボンボンが何かを感じたのか、それとも天然なのかこの野郎、「引き返すんですよね?早く行きましょう」なんて言って水を差しやがった。

 そいだらマオが「そうだね、ディーさん行こうよ」なんて言いやがって、ふいっと距離が開いたもんだから、俺は口を尖らせて「ちょ、待てよ」なんて言ったもんだけど、そしたらボンボンたちもマオも立ち止まって、俺が何か言うのかって注目してやがる。

 これはよ、何だかんだで、俺はこいつらと比べて圧倒的に実力があるもんで、進行について俺が何か言うとこいつらは素直に従うんだけども、今呼び止めたのは別に進行上の注意をするつもりとかじゃなく、単に乙女のかほりをくんかくんかしたいだけなんで、俺の頭は真っ白よ。

 そしたらアイツら、「どうしたんですかディーさん」「どうしたのディーさん」ってなもんで、もし俺がここで、マオは俺にぴったりついて歩け、お前の匂いに包まれたい、とか言ったらばよ、マオの目からスッと光が消えて、「ゴミが」とか「変態オッサン王」なんて言われたら、俺はもう白目で泡を吹いちまうだろうし、とにかくマオに欲情してるしまくってるってバレるのが恥ずかしいもんだから、これはマオに意識が行ってると思われたらいけねえや、ってなもんで、俺は何か気の利いたこと言おうとしたんだけども、頭が働かねえもんだから、「俺はホモ」っつったらばよ、マオは悲しそうな顔するし、ボンボンどもは恐怖の表情でぶるりと震えたもんだから、俺はほんとに死にたくなった。

 そっから半日は無言、ってなもんで、すげえ空気になったけども、「バカかお前ら、そんなわけねえだろ」って俺が言ったらば、マオが、「もうー!びっくりしたじゃあん!」なんつって、涙浮かべながら、ホッとした感じの笑顔で駆け寄って来た。だけどボンボンどもはよそよそしいまま目も合わせねえもんだから、俺はほんとにむかついたけども、グッとこらえて「おっぱい!」と絶叫して照れ笑いしたらばよ、ボンボンどもの表情も、ぱあっと明るくなったもんだから、俺は「胴上げだてめえら!」なんつって、ボンボンどもも「わっしょーい☆」ってなもんで、このバカ騒ぎがよ、ゴブリンどもを引き寄せた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ