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胸に残るしこり

 でもおめえ、それをグスマンとボンボン共が見ていやがって、グスマンは無垢な顔で俺を見つめてるんだけども、ボンボン共は「ええっ!?」ってなもんで、俺を変態を見る様な目で見てやがる。

 おいコラ待て待て、俺は唇を奪われた側だぞてめえら、ってなもんで、「見せもんじゃねえぞ」っつって、ボンボンどもにゲンコツを一発ずつ食らわせてやって、そしたらば俺の心も落ち着くかと思いきや、これが全然落ち着かねえもんだから、こりゃあマオにもゲンコツだと思って、「てめえマオ、いきなり何しやがる」って言うつもりでマオを見たらばよ、何か目を潤ませながら、チラッと俺を見ては、恥ずかしそうに顔を逸らして、目をギュッと閉じたり、うっすら開けてまた俺をチラッと見て、目が合ったらばちょっとだけはにかんだ様な、でもちょっとだけ申し訳なさそうな顔をしたもんだから、おめえそんな顔すんじゃねえよ、おめえにキスされて嫌な気持ちになる男がいるかよ、ってなもんで、おめえは魅力的なんだからよ、って言おうとしたらばよ、俺はいきなりハッとした。マオは子どもの頃からよ、とにかく俺に懐いてて、昔は「ディー(にい)のお嫁さんになる!」なんて言ってたもんだから、俺も本気で「約束だからな!絶対だぞ!」ってなもんで、本気の圧をかけてたもんだけど、次第にマオは俺をナメくさりやがって、その目からスッと光が消えることがどんどん増えて、俺はゴミの様なオッサンという扱いになったんだけども、そうはいってもコイツの言葉と態度を思い出したらば、その端々に、俺への恋心がチラチラチラチラチラチラチラチラあった様な気もしてきて、そいだらよ、俺はこいつの体をまさぐって酒を探したりしてたけども、そしたらマオが「ここじゃイヤ」とか言ってたのはよ、こりゃおめえ、二人きりならイイってサインじゃねえのか。そしたらおめえ、何だかもう女として見てしまうな。するとよ、これまで意識してなかったまさぐりの時の胸の感触とか、全身の柔らかさとかの諸々を一気に思い出して、俺は何だかムラムラした。でもこれがよ、すぐに俺はハッとして、いやあヤベーな、マオに手を出すのはダメだなと思って、精神力だけで心を静めようとしたらばよ、マオが生まれるよりも何年も前に、俺が明鏡止水の心を会得して最強の座へと駆け上がったあの頃を思い出した。

 あれは俺がマオより若かった思春期疾走オーバードライブの頃で、どんなに賢者モードでも、次の瞬間にはもう、ところ構わずムラムラ来て、これはいわゆる穏やかな心を持ちながら、激しい怒りによって目覚めた伝説の戦士みてえなもんで、そういやセルフブリーチできたねえ金髪にもしたな。で、そんなスーパー日の出の勢いの頃の元気勇気男気男根の俺なんだけども、奇病に侵されていて、乳首には謎のしこりが出来ていた。これが服に(こす)れて、激痛で涙が止まらねえ。お陰で人生で一番精神的に追い込まれてた俺は、もし魔族にそそのかされてれば闇堕ちしてたんだけども、当時の俺は、今の俺とは違うわけよ。今はよ、こう、落ち着いた、前作主人公さながらの、ダンディでクールなたたずまいが俺って感じだが、昔はバカで乱暴で誰の話も聞かねえからよ、闇堕ちなんざしていなくても、これはこれで暴走状態なわけよ。でもそんな俺を踏みとどまらせた女がいたもんで、俺にとっては忘れられねえ青春のメモリーなんだけども、青春のメモリーなんて言い方したら、マオにオッサンって言われて、俺はほんとに傷つくだろうから、じゃあってんで、言い方を変えようと思う。あれだろ?アオハルってんだろ?今のナウいヤングはよ。で、まあよ、話を戻すわな。俺を踏みとどまらせた女ってのが、どんな女だったかっつーとよ、その頃パーティ組んでた同い年の女で、これがノーブラだったわけよ。だから俺はよ、痛くて仕方ねえ自分の乳首と、見たくて仕方ねえその女の乳首のことしか考えられねえわけよ。な?身も心も乳首に支配されていたわけよ。な?まあよ、ノーブラじゃあ見たくて仕方ねえと思うもんで、ありゃあ仕方ねえのよ。でもよ、ムラムラマックス、ムラムラペタマックスなよ、気が狂いそうな極限状態の中でよ、俺は自分に負けることなくよ、明鏡止水の心を得たわけよ。あの時はよ、俺の心の水面は荒れ狂っててよ、嵐が逆巻く夜の海、ってなもんで、波風立ってたもんだったけども、俺とその女は結構身長差があったもんで、歩いてる時に、こう、上から覗き込む形でよ、あの女の乳首がバッチリ見えたわけよ。その瞬間に俺はよ、これまでの人生の全てをあるがままに受け止めて、森羅万象に感謝したよな。そしたらばよ、俺と俺以外の全てのものが一体になった感覚があってよ、心の水面に静けさが戻って、そこからの俺はもう全盛期よ。誰も俺の強さには届かねえ、ってなもんで、もうシッチャカメッチャカ。あの極限状態での開眼は俺にとって紛れもなく人生のターニングポイントの一つで、今また同じ様に心の水面に静寂を取り戻した俺にはよ、俗な欲望なんて微塵もないもんだから、こうなったらばよ、新たな全盛期が来る予感しかしねえ。

 じゃあってんで、あの頃より遥かに人間的な厚みがあるこの俺の、最高に澄みきった心で改めてマオを見てみるか、ってなもんで、マオを眺めて見たらばよ、俺は親同然の気持ちでマオの成長を見てきたし、コイツの父親とは、「マオはどんな男を好きになるんだろうなあ」なんて言いながら、今もしばしば酒を飲む仲だから、ほんとに穏やかに心の目を開いて、そしたらマオの唇がよ、あれが俺に触れたのか、ってなもんで、しんぼうたまらんもんだから、俺はほんとに鼻血が出た。ちなみに乳首は今も痛え。謎のしこりは残ったままよ。

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