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決着

 しばらく間合いをとったまま、ジリジリ動いて膠着(こうちゃく)よ。だから俺はよ、「んだよ、さっさとやれってんだよ」ってなもんで、早い激突期待したけども、これがちっとも始まらねえ。


「……」


「……」


 ブリ子もメウルも動かねえ。俺とは戦闘スタイルが違うってのは分かっちゃいるが、まどろっこしいったらありゃしねえ。俺はとにかく距離詰めて、一撃かませばいいからよ、弱えヤツらの戦い方は大変だなって思ったな。

 見るとブリ子は息整えて、ステップ刻み始めてる。小刻みに体重移動してて、攻めも守りも出来る形よ。拳を出すか蹴り出すか、前に出るのか、後ろに下がるか、分かりにくくてバランスがいい。

 片やメウルの野郎はよ、地面の中から無数の根を出す。腕から枝も伸ばしてやがる。今いる場所に文字通りによ、根をはる防御の構えだな。ぶっちゃけ今のままならよ、じわじわ凌いでメウルが勝つな。

 だけど気になることがある。

 メウルの野郎がブリ子をよ、異常に警戒してやがる。俺の方がブリ子より圧倒的に強いけど、こんなに警戒されなかった。つまりブリ子のヤツにはよ、何か切り札あるんだろな。それが俺には分からねえから、「おめえ、何やってんだよ」ってなもんで、メウルに発破をかけちまう。


「動けよ」


「黙れ」


「黙らねえよ」


 なんて言ってよ、昔の仲間のノリが出て、一瞬ノスタルジックな気持ちになりそうになったところでよ、ブリ子がズバッと動いたな。


「何ッ!?」


 声出したのはメウルだったが、俺も同じ気持ちだったよな。何故ったらよ、ブリ子がよ、前にも後ろにも行かねえで、横に動いたからなのよ。回り込んでどうするよ?メウルは木の特性上、死角なんてねえんだからよ。


「ふん、ガッカリだな」


 ほらよ、メウルも言ってやがる。ブリ子が回り込もうとしても、根が地を破って出て来やがって、全方位に根の槍よ。暴れうねって、枝と一緒にブリ子を狙う。ブリ子はかわしちゃいるけども、動く度に傷から血が出る。こうなりゃブリ子の動きが落ちて、一瞬ガクンと体がブレた。当然メウルは攻めるよな。


 メウルの枝や根は、ブリ子の動きを追う様に伸ばされて、自然と束ねた様にまとまっている。そいだらブリ子が進路を変えて、真っ直ぐメウルに向かって走った。そのスピードはなかなかのもんで、さっきまでとは雲泥の差。こうなっちまうと枝根の槍は、対応出来ずに追うだけよ。ブリ子はグングン距離詰めて、勢いそのままメウルの胸蹴った。そいだらボコンとデッカくヘコんで、メウルの野郎が血を吐いた。見ると、ブリ子の足が光ってる。ありゃあ光剣の気か?いや、蹴ったところの再生が何だか上手く行ってねえ。


「ブリ子、てめえ、何だその蹴りは」


 そう言った俺の顔を見るブリ子。フッと笑って後ろにも蹴り。そいだら迫ってた枝根の先端が、ボコッボコッとヘコんだな。


「これは私の固有の技だ! 我が師と共に編み出した!」


 そしてブリ子はメウルをまた蹴る。メウルはやり返そうにもよ、手足が枝根で取られてるから、ノーガードで打たれ放題。一瞬でサンドバッグ状態よ。枝根が来ても蹴りで迎撃、完全にブリ子のペースだな。俺の知らねえところでよ、ウチの流派が進化してるもんだから、俺はほんとにムカついて、憂さ晴らしによ、叫んだな。


「メウル、オメーはだらしがねえな!」


 勝敗決した様に見えたし、何気ない煽りだったけども、メウルの顔色変わったな。その瞬間にブリ子の体を無数のトゲが突き破る。ブリ子の体内に残るメウルの枝の破片が生きてたんだな。両膝ついたブリ子の目には光がなくて虚ろだな。足の光りも消えてやがる。そしてメウルの枝の槍がブリ子の腰に突き刺さったな。


「俺の腕を返してもらうぞ」


 そう言いながら枝槍がよ、ブリ子の腰から抜かれたな。そしたら先端部分と割れた木がよ、一体化していやがった。メウルはブリ子の体内に、体の一部を潜ませてたのよ。一枚上手ってヤツだな。メウルは勝ち誇った顔で、偉そうに述べやがる。


「なかなかやってくれたな。 この傷を癒すのは時がかかるだろう。 しかし、勝ったのは俺だ」


 トドメとばかりにメウルの野郎が、尖った枝根をかざしやがった。串刺しにすりゃあブリ子は死ぬな。避けることも出来ねえだろう。そいだら遠くの方によお、マオの気配が現れて、ザンザン真っ直ぐこっちに来やがる。メウルも気づいたみてえでよ、カッと目ン玉向けやがって、マオのバカを狙うつもりだな。こうなったらよ、仕方ねえから、メウルがマオに何かする前に、俺がメウルを粉砕するっきゃねえ、ってなもんで、全力かましてやろうとしたら、メウルの様子がおかしいな。


「ぐっ、う、がはっ。 こ……れは……っ……」


 苦しむメウルの全身が、ボコンボコンとヘコんで行く。枝根も体も何もかもがよ、幾重にもよ、ヘコんでく。だから、俺もマオもメウルもよ、視線をブリ子に向けたよな。肩で息するブリ子はよ、両膝ついたままでよお、まるで敗者に見えるんだけど、絞り出すよな強い声で確かに一言言ったのよ。「さよなら」って一言を。その瞬間にメウルの全身爆裂してよ、その場に崩れ落ちたよな。


 マオが「な、何が起こったの」っつって、分かってねえもんだから、俺は言ってやったよな。「あれは捨て身の技、寄生殺渇(きせいさっかつ)」っつって、そいだらマオが驚いたよな。


「知っているの、ディーさん!?」


「ああ。 元は伝説の僧兵の技よ。 寄生型の魔物を体内に入れて、特殊な気を流し込んでよ、ぶっ倒す技なのよ。 メウルはブリ子の体内に自分の破片を残してよ、爆弾仕掛けてたわけだけども、その爆弾にブリ子がさらに爆弾仕掛けてたってわけなのよ。 フッ、恐ろしいヤツだぜ」


 ってなもんで、最後、俺は何もしてねえが、滅んだゴブリンの村をあとに、ダンジョン脱出したよなあ。ちなみにブリ子は一緒に来ねえで、旅に出るって言ってよお、フラッとどっかに消えたよな。ブリ子とも、メウルとも、何だかあんまり上手く行かねえで、後味よくねえけどよ、当初の目的である、ボンボンたちの救出は達成したからヨシとするか。

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