オマエなんかと一緒にするな
法をかざすと確かによ、メウルにゃ落ち度がないとも言える。何故ならこの国の法はよ、魔物の為には出来ちゃいねえ。人間の国だから当たり前だが、魔物は駆除の対象よ。人と変わらん知能を持ってる亜人だって駆除対象。だからゴブリンたちもよお、こんなところで暮らしてるわけよ。だけどメウル、それをよお、オマエが言うのは最悪だ。だってオマエはゴブリンの頭目気取ってやがったんだろ?ブリ子もゴブリンたちもよお、オマエを信用してたんだろう?
「こりゃあねえよな、全くよ」
俺は誰に言うでもなく、呟いただけだったんだけど、ブリ子もメウルも反応したな。
「そうだな、戦う理由がある」
「貴様らも同じ穴の狢だ」
俺が言うのも何だがよ、ブリ子もメウルも噛み合わねえな。俺もゴブリン殺したし、ブリ子もゴブリン殺したし、メウルもゴブリン殺したからよ、そこに違いはありゃしねえ。だけど俺が言いたいのはよ、俺やブリ子は敵を殺した。だけどもメウルは部下を殺した。自分を慕うゴブリンたちを。それはどうかと思うってことよ。だけどもブリ子はさっきまではよ、メウルに敵意はなかったよなあ。対してメウルの野郎はよ、ゴブリンに情が全然ねえな。こんなことを考えてたらよ、俺は今ふと気付いたんだけど、メウルの野郎は俺に対しても情ってもんがありゃしねえ。それどころかよ、殺そうとしてる。これがメチャクチャ気分悪いよな。だってメウルの野郎はよ、法をかざしてゴブリンの命を軽視してるヤツなわけよ。ならよ、法に照らし合わせて、人間である俺の命は一応尊いはずだろが。それに俺はよ、昔コイツとパーティ組んで冒険してた間柄。最初は憎しみあったとて、接するうちに仲間意識持って、葛藤ぐらいはしてほしいよな。だけども気持ちは一貫してよ、俺を殺したかったんだろう?だけど、俺が強くてよ、隙がねえから、ってなもんで、仲間のふりしてやがったと。じゃあもし俺が弱かったらよ、メウルの野郎に寝首かかれてよ、殺されたってことだろが。そう思ったら俺はよお、メウルにほんとにムカついた。だから、俺は言ったわけよ。
「オメェは情ってもんがねえ。 ゴブリンも俺も道具ってことか」
そいだらメウルの野郎がよ、「ディー・ヤー、貴様は道具ですらない。 もちろん人とも思っていない。 貴様は単なる害悪だ」なんてキッパリ言いやがってよ、そっからはもう、温厚な俺もさすがにキレた。
「何だオマエ」
「貴様が何だ」
「俺は俺だろ」
「化け物が」
「化け物じゃねえ」
「化け物だろう」
「どこが化け物だ」
「身も心もだ」
ってなもんで、オマエなんかと一緒にするな。こりゃもう本気の俺を見せつけて、後悔させてやるからな、ってなもんで、抜刀しようと思ったが、そいだらブリ子が走ってよ、メウルに向かって蹴り繰り出した。




