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真剣(マジ)な話

 メウルはゴブリン率いてよ、麻薬なんぞ造ってやがった。これは地元を思い出す。忌まわしいったらありゃしねえ。


「もう何年経ったのか、ほんとに分かりゃあしねえがよ、俺が冒険者になった理由があの村にはあった」


「貴様の話など聞く耳持たん」


「そう言うな。 あの村で何があったか、教えてやるから、まあ聞けよ」


「……」


 聞く耳持たんと言ったそばから、どうやら聞く耳持つ様で、メウルは黙って俺を見てるな。緊張感を保ってやがって、こりゃあメウルのヤツはよお、隙を見せれば俺があの首カッ切るもんだと思ってやがる。まあよ、そういう気持ちがよ、ないかと言ったら正直あるな。だけど今はよ、教えてやりてえ。俺らの地元で何があったのか、俺が何をしてるのか、そしてメウルのヤツがよお、何をやらかしてるかをよ。


「俺はよ、メウル。 親父と二人であの村にいた」


 親父の話なんてよお、人にしたこたねえからよ、ちょっと抵抗あるけどよ、必要なんだと思ったな。


「だけどなメウル、俺は親父を殺された。 あの村のよお、村長になあ」


「!!」


 メウルの野郎はついさっきまで、俺に敵意の目を向けてたが、明らか戸惑う様子があるな。何かブツブツ言い始めてよ、思った以上に効いてる雰囲気。そんなメウルが声あげた。


「村長だと!? バカな、村の村長は……!」


「うるせえ、黙れよ。 まずは俺の話聞け。 何か言うのはその後にしろ」


 メウル、てめえはいつもそうだ。何を言う気か知らねえが、今は俺のターンだろ。俺が話をしてる時、オメエが話を最後まで聞いた試しがねえよなあ。そういうとこだぞ、なあ、メウル。


「……」


 そいだらメウルが黙ったな。思ったよりも素直だな。まあよ、逆の立場だったら、気になる話だもんなあ。俺とメウルは地元が同じ。そんでメウルのヤツがよお、知らねえ話のはずだからなあ。いいや、メウルが知らねえだけじゃねえ。俺しか知らねえ話だからな。

 俺は親父の話を始める。親父の話をするってことは、俺の心の深いとこにある傷の話をするってことよ。俺が地元を滅ぼした理由が一体何なのか。真剣(マジ)な話ってなもんよ。


「俺があの村滅ぼしてよお、今は廃墟になってるよなあ」


「そうだ。 俺は貴様を許さない。 お前は俺の両親をなぶり殺した張本人だ。 俺の両親、覚えているか」


「オメエの親が誰かなんてよ、俺が覚えてるわけねえだろが。 それになぶり殺しだと? そんな余裕があるわけねえよ。 あの頃の俺は今とは違う。 ケンカ一つしたことのねえ好青年だったからな」


 俺が言ってることはよお、ぜんぶ本当のことよ。メウルの一家も村にいたかも知れねえが、んなもんマジで覚えてねえよ。だってそうだろ?俺はよお、村にいたヤツ数百人を片っ端から行ったからな。


「俺の親父は冒険者だった。 俺と同じぐれえよお、立派な人格者だったな」


「貴様が人格者なものか。 寝言は寝て言えこの外道」


「外道はテメエの方だろメウル。 麻薬なんぞ作りやがって。 テメエはよ、あのシケた村の男どもと(おんな)じだ。 麻薬村の男どもとよ」


「何だと!? 麻薬村だと!? オマエは何を言っている!?」


「言葉のままだぜ、なあ、メウル。 そんでよ、あの村の村長がよお、麻薬で村を、そして国を、更には俺の人生を、メチャクチャにした極悪人よ」


 思い出すとよ、怒りが湧くな。何年経っても変わらねえ。俺があの村滅ぼしてから、何年経とうが忘れねえ。


「……」


 黙りこくったメウルはよ、何だか思い詰めた顔。どういう気持ちでその顔よ?まあよ、予想じゃ澄ました顔で、聞き流すだろと思ってたから、ちょっと意外だったよな。こうなったらば話す俺も、調子が出て来るってなもんで、饒舌にもなるよなあ。


「俺が村を離れてよ、駆け出し冒険者だった頃に、麻薬の噂が一気に増えた。 冒険者が集まれば、色んな噂が聞こえるわけよ。 そんな中でも特によお、麻薬のシンジケートの話が話題になってたんだよな。 そんで俺が根城にしてた街のギルドの方からよ、俺に調査依頼が来た。 どんどん依頼を達成してた俺に話が来たわけよ。 当時のギルドは、今みてえな調査力はなかったけども、逆に噂程度でも動くフットワークがあった。 そして国とのパイプもあった。 今じゃ信じられねえだろうが、犯罪撲滅のクエストは、王の勅命だったのよ」


「……」


「もう察しがつくよなあ? 俺もまさか、依頼がよ、地元の村とは思わなかったぜ。 まさか黒とは思いもせずに、軽い気持ちで里帰りよ。 だってそうだろ? 何もねえ村だったんだぜ? 俺が住んでいた頃はなあ。 オメエが育った頃はよお、麻薬で儲けた金でよお、村が潤ってたんだろ?」


「っ……! 俺は……っ!」


「……まあ最後まで聞けよ。 俺が久し振りに帰ってみると、村は羽振りがよさそうで、キナ臭さがあったんだよな。 村長たちは驚いてた。 新進気鋭の冒険者がよ、調査がてらの里帰り。 いきなり俺が現れてざわつく雰囲気忘れねえよ」


「……」


「そんで家に帰ってみると、俺の親父がいやしねえ。 こりゃあおかしいってなもんで、俺は何だかピーンときてよ、マジで調べる気になった。 けどよ、村長たちはよお、しらばっくれて、コソコソしてよ、俺から距離を置くわけよ。 でもよ、俺はその頃既に、今みてえな地獄耳。 村の中の話し声なんざ、ぜんぶ聞こえちまうわけよ。 それで知ってしまってなあ。 村が麻薬で潤ってること、そんで、俺の親父だけがよ、協力拒んで、通報しようとしたことをなあ。 それだけならよかったけども、村長たちは、俺の親父を村ぐるみで監禁してよ、しかも、間の悪いことに、俺が帰った前の日に、親父は殺されてたんだよ。 オメエは俺に言ったよな。 両親をなぶり殺したとかよ。 言わせてもらうがメウルよお、なぶり殺されたのはよお、俺の親父の方だぜクソが!!!!!」

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