仲間だったからこそ
あくびが出るぜ、全くよお。全方向から来る枝?を、スパンと輪切りにしてやると、メウルの野郎が声あげた。これが「ぐうっ、」なんつって、痛みが通った感じがしたな。枝一本ならメウルの野郎も涼しい顔をしてたけど、数が増えたらダメージあるな。
「何だよおめえ、ぐうってよ」
すかさず俺は煽ったな。さらに鼻で笑ってやる。「フン」っつって見下したらば、メウルのヤツは苦い顔。木のバケモンになってよお、目つきは一層ギラギラしてるるが、脂汗でも出てるみてえな、キツそうな顔もしてやがる。こりゃあ適合しきってねえな。
「メウル、おめえ馴染んでねえな」
一言言ってやったらば、メウルが歯ぎしりしたのが分かった。こりゃあ、もっと煽れるな。
「身の丈に合ってねえんだ、ええ? メウル。 おめえは俺じゃねえからよ、使いこなせてねえんだろ」
「黙れ、貴様はもう喋るな。 いつも上から見下して、何様なんだ、ディー・ヤーよ」
メウルの声に怒りが滲む。その瞬間に俺が輪切りにした枝が、全部再生しやがった。そいだらメウルのヤツがよお、声にならない呻きをあげた。切っても生えても苦痛ならよ、地獄みてえなもんじゃねえのか?バケモンてえのは大変だなあ。しかしよ、メウルはこんなにも、しんどそうな思いをしてよ、何だか可哀想になるな。しかも、上から見下してるとか、今更、何を言いやがる。的外れにもほどがあるから、ちっと言ってやっか、ってなもんで。
「上から見下してるんじゃねえよ。俺の目線の高さまで、おめえが上がって来てねえだけよ」
こんな風に言ってやればよ、メウルは反論出来ねえよなあ。だって事実なんだからよお。そんで俺は間髪入れず、気付いた点を指摘する。
「メウル、てめえの木の変身は、痛覚異常が出てるよな」
「!」
こんなの、勝負ありだろお?今のメウルは感覚鋭敏。痛みが何倍にもなってるはず。ならメッタ斬りにしてやれば、痛みでショック死しちまうだろな。かつての仲間じゃあるけどよ、情けはかけてやらねえよ。いいや、仲間だったからこそ、問答無用で死んでもらうぜ。生かしておいたら終わらねえしよ、コイツがやってることはよお、いつか俺が見た地獄なのよ。




