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おめえの矛盾も衝動も、全部まとめてぶつけて来いよ

 これはチャンスなもんだから、すねたフリした俺はよお、「てめえらの顔は見たくねえ」っつってザンザン歩いて離れたな。何がチャンスかっつーと、すねたフリして姿を消して、残りのゴブリン駆除するチャンス。何だかんだでブリ子はよ、色違いのゴブリンどもに混じって育って来たもんで、俺が残りのゴブリンを駆除することを知ったらよ、きっといい気はしねえよな。男のゴブリンどもはよお、侵略、蹂躙、何でもござれ。だけど(おんな)()どもはよ、侵略、蹂躙なんかには、参加なんてしねえよな。だって男どもがよお、家を空けている時に、残った女子供がよ、何をするかっつったらば、男の帰りを待ってるもんよ。そんな悲劇は生みたくねえから、皆殺しにしてやるしかねえよ。これは残酷なんじゃねえ。俺にかなうヤツなんて、この世にいるわけねえもんで、さっさと終わらせねえとよお、復讐だけの人生過ごす。それは防いでやらねえと、色んなものを不幸にするな。そんなことを思っていたらば、木にもたれて座ってたマオが、「ちょっとディーさん、どこ行くの」って、立ち上がろうとしやがった。そいだらボンボンどもがよお、心配そうに肩かした。すかさず俺は「うんこだよ!」ってなもんで、腰を引いて尻を突き出した。そいだらマオの目からはよ、スッと光が消えたよな。やべえ、バレちまったか?なんて一瞬思ったけども、マオは一言言ったよな。「ねえ、そっちは風上じゃん」つまりうんこの香りがよ、風に乗って来ちまうと、俺に抗議しているわけよ。だけどもこっちに行くしかねえよ。俺はゴブリンどもをよお、皆殺しにする為によお、ヤツらが帰る方角へ、向かおうとしてるだけなんだから。だから俺はよ、「気にすんな」っつって、そっからはもう、らちがあかねえ言い合いよ。「気にするよ」「気にすんなって」「気にするよ、くさいに決まってるから」「くさくねえよ」「くさいじゃん」「くさくねえって」「くさいって」「くさくねえって言ってんだろが」「くさいって言ってるじゃん」「うんこはしねえよ」「うんこするって言ったじゃん」「言ってねえよ」「言ったじゃん」「言ってねえよ」「言ったもん」「言ってねえよ」「絶対言った」「うるせえな」「うるさくないよ」「うるせえよ」「うるさくないって」「うるせえよ」「何でそんなこと言うの」「うるせえからだよ」っつってそん時、俺の尻から、バカデカい音の屁が出たな。ドゴン!バゴバゴ!ゴボゴボボ!とんでもねえ音響いたわけよ。俺はほんとに驚いて、何だか腹も痛くなった。しかもこの屁が熱くてよ、「ちょっと出たかもしれねえな」なんて言って苦笑い。そしたらそよ風吹いてよお、毒ガスがマオに直撃で、「くっさ、内臓くさってるじゃん」なんて言われたもんだから、俺はほんとにむかついて、もっかいバゴン!と屁をこいた。そいだらまたまた風が吹いて、キャッキャ言ってたグスマンが、一気に吸い込んじまってよ、「わにゃっ」っつって泡吹いた。俺の心は張り裂けそうよ。そいだらマオが言ったよな。「迷惑だから遠くでやって。 けつアゴからもおなら出たの?」なんてヒドい言いぐさで、俺はほんとに泣いたよな。でもまあこれで、無理なくよ、別行動が出来るってもんよ。


 走りながら俺はよお、ついついボヤいちまったよな。「けつアゴからもおならだと? 出るわけねえだろクソガキが」涙で前がにじむけど、男は黙って別行動よ。俺が一人で行動すれば、ダンジョン踏破なんてよお、大した時間はかからねえ。片っ端から走ってよ、しらみ潰しに探せばよ、ゴブリンの村なんてのは、すぐに見つかるだろうなあ。なんて思って俺はよお、順繰り道を行ったり来たり。そいだら開けたとこに出て、そこに立つのはブリトニーよ。俺はフッと笑ってよ、「よお、先回りしたってことか」そいだら頷くブリ子はよ、「しかしこんなに早いとはな」なんて言ってよ、微笑みながら、拳を握って構えたな。そんでキリッと真面目な顔で、「ここは通行止めだ」っつって、俺と()る気だ、コイツはよ。チラッと視線を外したら、ブリ子のずっと向こうによ、かすかに明かりが見えたよな。ゴブリンの村はこの先にあるってことだよな。だから俺はよ、「情を捨てきれなかったか?」なんて言ってみたらばよ、ブリ子は少し困った様に微笑んで、「戦いながら思っていた。 女子供に恨みはないのだ」ってなもんで、ゴブリン皆殺しの為に、村に向かう俺の前に、立ち塞がるつもりなのよ。そいだら俺は言うだけよ。「気持ちは分からんでもねえよ。男のゴブリンどもはよお、ブリ子、おめえを嘲笑(わら)ったけども、女子供も同じとは限らねえって思ってんだな。でもよ、俺に言わせれば、女にゃ話は通ってる。おめえはその強さをよ、利用されてただけだろな」だけどもブリ子は若いから、甘っちょろい希望を抱く。歯に衣着せぬこんなことを、言ったところで納得なんて、出来ねえだろうと思ったな。そいだらブリ子のヤツはよお、顔を曇らせたんだけど、「確かにそうかもしれないな」って、寂しそうに言ったよな。とはいえ構えは解かねえからよ、こうなったらよ、やるしかねえな。「殺さねえでおいてやるよ」「それは私のセリフだな」って、お互いなかなか言うよなあ。じゃあってんで、俺もよお、拳握って視線を向けた。そいだらブリ子が「行くぞ」っつって、一直線に向かって来たな。たぶんいきなり全速力よ。だけども俺からしたらよお、驚く様な速さじゃねえな。だからブリ子が繰り出す拳に合わせてこちらも一撃よ。いわゆるカウンターってヤツで、俺の拳はブリ子に当たる。だけどもブリ子の拳はよ、俺には当たりはしねえのよ。吹っ飛ぶブリ子が地面を転がる。受け身を取ろうとしていたけどよ、俺が殴った勢いは、そんなもんじゃねえからよ、受け身を取り損なってたな。一撃カマシただけでよお、戦い終わったマオぐれえに、ズタボロになっちまったよな。だけどもブリ子は立ち上がる。「すまんが退きたくないんだよ。 戦士を(ほふ)った私が今、ここでお前を阻むのは……」みなまで言うなと思ったけどよ、あえて言うのがブリ子の為とも思った俺は、「偽善だな」って言ったよな。そいだらブリ子は「全くだ」ってなもんで、ゆっくりゆっくり立ち上がる。そして右足真っ直ぐ上げた。あの一撃をやる気だな。いいぜ、来いよ、やってみろ。おめえの矛盾も衝動も、全部まとめてぶつけて来いよ。

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