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男のロマンがそこにはあるな

 戦い終わって風が吹く。いつしか空気はしんと冷えてて、夜のとばりを感じたな。俺はもちろん無傷だし、ブリ子もボンボンたちもよお、大した怪我はしてねえけども、マオはなかなかズタボロで、傷が熱を持ったりしてて、しんどそうではあったよな。薬草あるならよかったが、今回ほとんど持って来てねえ。俺がついてるわけだしよ、こんなにマオに任せるなんて、思いもしねえもんだから、薬草なんて気の効いたもんは、最低限しか持ってねえ。そいだらブリ子のヤツがよお、「こっちに運べ」っつってよお、大麻の畑の奥によお、ザンザン歩いて行くもんだから、俺もマオを抱えてよ、後からザンザンついてった。いわゆるお姫様抱っこってヤツで、マオは「恥ずかしいじゃん、降ろしてよ」なんて言ってやがったけども、俺が「いいからおめえは休め、動くな」っつったら「うん、分かった……」なんつって、すっかり大人しくなったもんだから、俺は歩きに合わせてよ、マオの胸の端っこを、指でぷにぷに触ったり、脚をすりすり触ったり、誤解を恐れず言ったらば、こっそりセクハラ三昧目指したわけよ。だけどマオがよ、すぐに気付いて「ちょっ、バレないとでも思ってんの!?」なんて言うもんだからよお、俺はしらばっくれようと、口笛吹こうと口すぼめたら、そこに拳を食らったな。お陰で俺は口を切って、これがほんとにむかついて、マオを地面に放り捨てた。そいだらマオが「痛いじゃん! 一体何してくれてんの!? 私、怪我人なんだよ!」なんて言ってよ、ボンボンどもが「大丈夫ですか!? マオさん!」「マオさん!」「マオ姐さん!」ってなもんで、そいだらマオが、あざとく首を傾げてよ、声色使って、「いたた、肩貸して~」ってなもんで、何だおめえ、その感じはよ。今の今まで燃える目で、勇猛果敢だったじゃねえか。そしたらボンボンたちもよお、「「「はい!!!」」」っつって、声が揃ってやがってよ、何だおめえら、その感じはよ。ボンボンてめえが肩貸して、タイは反対側で肩貸して、コッシてめえは一体何だ。グスマン抱っこしててよお、「木の根あります! 姐さん足もと、お気をつけて!」っつって、至れり尽くせりだなあオイ。さっきまでのマオをよお、おめえら見てなかったのかよ?いや、むしろあの戦いぶりで、慕う気持ちが増したってとこか?そう考えると何かよお、ちょっと嬉しい俺がいるな。だってマオはよ俺の弟子。マオを育てたのはこの俺よ。だけどマオのバカはよお、両肩支えられてよお、足もとどうこう言われてよ、まんざらでもねえツラしてやがる。何だか天狗になってねえか?そう思ったらばよお、ちょっとイラッとしちまうな。そいだらマオのヤツがよお、「ディーさんマジで最低じゃん!」なんて言ってよ、この野郎、俺の気も知らねえでよお、これがほんとにむかついた。だから俺はよ、拳握ってザンザン歩いて、両肩借りてるマオに向けて、「うるせえんだよ、ガキがよお」っつったらば、「うるさくないよ!」っつってきて、マオてめえこら、この野郎、姐さんだとか言われてよ、いい気になってやがるなてめえ。いつもよりも声張って、態度デカいぞおめえよお。そんでマオはさらによお、「ちょっとディーさん聞いてるの!?」っつって、これがほんとにうるせえからよ、そっからはもう、「うるせえよ」「うるさくないよ!」「うるせえよ」「うるさくないって!」「うるせえんだよ」「何でそんなこと言うの!」ってなもんで、全部声を張るもんで、俺はほんとにむかついて、だけども徐々に気圧されて、それもむかつくもんだから、とにかくゲンコツ食らわせてやろうと改めて思ったもんだけど、あんにゃろ、ズタボロのくせに、さっきまでと同じ燃える目になった。そんで、燃える目見開いて、肩を借りるのやめたよな。睨まれた俺はほんとによ、うわあと思って戸惑いながらも、距離を詰めていつもの感じで、ゲンコツ振り下ろしたんだけど、そいだらマオの動きがよ、あんまりキレてるもんだから、ズバッとかわしやがったな。こりゃあ成長してやがる。そんで俺の体勢が、崩れちまったもんだから、あっやべ、って思ったけども、そいだらマオの拳がよ、俺のアゴに炸裂してよ、俺はブッ倒されたよな。あまりのクリーンヒットだし、アゴがバキンと鳴ったもんで、俺はほんとに驚いて、体を起こしながらよお、「俺のアゴ、どうなった」っつってアゴをなでたんだけどよお、そしたら、マオもブリ子もボンボンも、タイもコッシも声を揃えて、「割れてる」っつったんだよな。そんなの俺も分かってらあ。そいで遅れてグスマンが「あごゃじ」っつったもんでよお、母親に向かってグスマンよお、アゴ親父なんて言うなよと思って俺は心で泣いた。だけども可愛いグスマンに、こんなことで怒るなんてよ、出来るわけもねえからよ、笑ってコチョコチョしたよなあ。そいだら無邪気に笑ってよ、グスマンほんとに可愛いな。


 とはいえマオがむかつくし、気持ちがおさまらねえもんで、絶対ゲンコツ食らわせてやる、なんて思った俺はよお、残像分身駆使してよ、「一発は一発だ」なんて言って拳を握った。そいだらマオのヤツもよお、「ディーさん今回マジなんじゃん」なんて言って拳を握る。迎撃態勢バッチシの、マオの本気が見えたよな。だから俺はよ、「なめんなよ」ってなもんで、マオの拳をかいくぐって、ゲンコツ一発お見舞いしたな。マオの野郎が思いのほかよ、成長してるもんだから、俺もいまだかつてない動きで、格の差見せてやったよな。そいだらボンボンどもがよお、何だかんだと騒ぎやがって、俺が「文句あんのかてめえらよ」っつったらすかさずアイツらは、「怪我人に何してるんですか!」なんて正論言いやがる。そんで、ボンボン、タイ、コッシの順で、「最低ですよディーさん!」「投げるし殴るし何やってんすか!」「マオ姐さんは女の子! 可愛いけども、やる時ゃやる、魅力的な女の子!」なんて言ってよ、ボンボンどもめ、完全にマオの手下じゃねえか。あとよ、コッシ、てめえは何だ。アイドルオタクのメンタルじゃねえか。そんで俺は引き続き、ボンボンどもにブーブー言われて、これがほんとにむかついて、「うるせえんだよクソザコどもが。 ガキの色香に惑わされてよ」っつったらボンボンどもがよお、マオの燃える目伝染してて、「それはディーさんじゃないっすか!」「一緒にされたくないっすよ!」「おっぱいだって脚だって、俺たち触ってないっすよ! 正直羨ましくて憎い!」ってなもんで、コッシの毛色がやっぱり違う。アイドルオタクっていうかよお、ただのバカな男じゃねえか。お陰で変な空気になって、こりゃあ締まらねえなって、俺は思ったもんだけど、そいだらマオが爽やかに「やめなよみんな、いいんだよ。 ディーさんほんとにありがとう」なんて言ってよ、俺はよお、何がありがとうなのか、これがほんとに分からねえ。そんでキョトンとしてたらば、「今の私の力がさ、どれくらいなのか分かったよ。 ちょっと天狗になりかけたのを、ディーさんは分かってた。 だからこらしめてくれたんだよね」なんて言ってやがってよ、確かに俺は、マオがよお、調子に乗ってやがるから、ゲンコツ食らわせたんだけども、改まって言われると、何だか違う気もするな。いやあ、違わねえんだけども、何か俺はもっとよお、浅い怒りな気がしたな。だけども乗っかっちゃえってよ、俺は思ったもんだから、「何だよ分かってたのかよお。 こいつはちょっと恥ずかしいな」なんて言ってよ、そいだらマオが「じゃなきゃさあ、あんなおっぱい触ったり、いきなりやるわけないもんね」なんて言ったもんだから、俺はちょっとグサッと来てよ、頭がボーッとしちまって、「いや、触りてえのは触りてえ」なんて言っちまったのよ。そいだらマオが怒ったみてえで、顔を真っ赤にしやがって、俺はうわあと思ってよ、マオから目を逸らしたな。そいだらマオが、「後でね」なんて、小さな声で言ったよな。他のヤツらにゃ聞こえてねえ。そんでプイッと顔を逸らして、マオはどんどん行っちまった。そりゃあ怒りもするよなあ。しょうもねえこと言ったからよ。あーあ、後で一体よ、どんな説教されんだよ。俺は不安で仕方がねえよ。


 そんな感じでわちゃわちゃしながら、ザンザン歩いて行ったらば、しばらく行った先でよお、大麻畑が途切れてよ、違う植物植わってた。何かと思って見たらばよ、辺り一面薬草で、こりゃあありがてえ、ってなもんで、俺は盾を台にして、そこに薬草盛ってよお、石ですり潰してったな。そしたらボンボンどもがよお、「マオさんは休んでて下さい」なんて言ってよ、見よう見まねで薬草を、どんどんペースト状にして、塗り薬が出来てった。ボンボンどもはほんとによ、マオを心配してるもんで、マオもそれが分かったみてえで、「ありがとみんな、優しいじゃん」なんて言ってよ、感謝してたな。そいだらボンボンどもは「礼なんていらないですよ」「そっすよ」「何かごほうびあるんすか」っつって、コッシ、ほんとにてめえは何だ。でもよ、俺は気持ちが分かる。俺たちゃズタボロのマオの為に、塗り薬をこしらえてるけども、少なくとも俺はよお、この手でマオの全身くまなく、薬を塗りたいわけでよお。男のロマンがそこにはあるな。だから俺もよ、「これおめえ、俺が薬を塗ってやるよ」なんて言ったもんだけど、そいだら俺らのピュアな心がマオに伝わっちまったのか、マオの目から光が消えて、「薬は自分で塗るからね。 ブリちゃん塗るの手伝って」なんて言いやがってよお、俺の目からもたぶんよお、光が消えたんだろうなあ。

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