ゴブリンの交差点
正直なことを言うとよお、ブリ子とゴブリンたちはよお、昨日までは一緒によ、行動していたわけだから、情が働くもんじゃねえかと、攻めきれねえんじゃねえかなと、俺はほんとに心配してよ、どうなることかと思ったけども、ブリ子のヤツは吹っ切れてたな。バカなゴブリンたちがよお、「オマエの故郷を燃やした」だとか、「オマエの親を殺した」だとか、何やかんやと煽るから、そりゃあ怒りもするしよお、思い入れなんて消えるよな。だからブリ子も躊躇はねえよ。マオと一緒に暴れ回って、みるみるゴブリン倒れていった。そんでデブリン指さして、「あとは貴様だ、若草の」なんて言って、冷たい視線。元々コイツら二人はよ、何だか仲が悪いみてえで、因縁感じる態度があるな。そんで言われたデブリンは、不機嫌そうにブリ子によ、「一騎討ちしろ! 戦え!」なんて言ってるわけだけども、ブリ子もこれが一本義な性格してるもんだから、応じるつもりみてえだな。クルッと振り返ったらば、視線の先はマオでよお、血走る目をしたマオに向かって、コクリと頷いたらばよお、マオも無言で頷いて、どうやらマジで一騎討ちよ。
しばらく二人は睨み合い。ブリ子とデブリン睨み合い。長く続いた沈黙に、血なまぐさい風が吹く。ニオイが流れて来たもんだから、ボンボンどもが一斉に、オエッオエッとえづき始めた。慣れねえうちはこんなもんで、誰もが通る道かもな。なんて思っていたらばよ、グスマンまでもが「ミェッ、ミェッ」っつって、真似して声を出したよな。何でもかんでも真似してよ、この時期可愛い盛りだな。そんな可愛いグスマンだけど、ニオイを嫌がる様子はねえな。さすが俺の子なんだけども、ちょっと心配にもなって、ボンボンたちのところに行って、グスマン覗き込んだよな。風が運んだゴブリンの、発するニオイってえのはよ、単なる体臭とかじゃねえから、あんまり嗅がせるもんじゃねえ。何のニオイかっつーと、血と臓物のニオイだからよ、俺はほんとに心配になって、ニオイを嗅がせない様に、したいと思ったんだけどよ、グスマン見つめていたらばよ、楽しそうにミェッミェッ言って、思うところが芽生えたな。親が「コイツはよくねえ」と、思ったもんでも子どもはよ、何だかんだと吸収してよ、それが自我になって行く。だから頭ごなしによ、禁じちまうのどうなんだ?なんて思った俺はよお、とりあえず今はこのままで、成長したらば少しずつ、色々教えて行くかなあ、ってなもんで、グスマンも俺を見つめてよ、笑顔が何だか心にしみた。
顔をあげるとブリ子とデブリン、間合いをはかってじりじり動く。ブリ子がピクッと動いたら、デブリン即座に反応して退く。巨体で身軽に退いたデブリン、今度は棍棒構えてよ、じりっじりっと前に出て、間合いの距離まで来たらばよ、今度はブリ子が素早く退いた。こりゃあほんとに拮抗してる。だけどブリ子は性格的に、常に研鑽積んでたろうし、デブリンの方は棍棒や周りのゴブリン使って戦う。だけど周りは全滅で、デブリン自分で動くよな。ソロ対ソロの戦いだしよ、言ったらブリ子の領域だから、ブリ子は素早い動きがよ、キレたまんまで変わらねえ。対するデブリンの方は、体がデカいし大振りで、どんどんスタミナ消費して、動きもどんどん雑になる。しかもブリ子はデブリンの、足をどんどん攻めるから、デブリン動けなくなって、ブリ子の攻めが一方的よ。終いにゃデブリン、ボロボロで、立ってられずに膝ついた。
そしたらしばらく、またしても、沈黙の時が流れたな。そんでブリ子が口を開いて「貴様に聞きたいことがある」デブリン何かを考える顔。そいだらブリ子が言ったよな。「私は親を知らない。 貴様たちが親代わりだった。 ……私は本当に、異物でしかなかったのか?」戦いの中にあってもよ、やっぱ思うとこあんだろな。そいだらデブリンのヤツはよお、一瞬悲しい顔をして、だけどもすぐに、ざまあみろと言わんばかりの、バカにした様な表情になって、「お前は何も知らないまま、俺たちに笑われてたんだよ!」ってなもんで、圧倒された悔しさから、捨てぜりふ吐いたみてえに見える。だけど、俺にはデブリンが、悪役演じた様に見えた。ブリ子は小さく頷いて、右足を天に真っ直ぐ伸ばす。立ち上るは光の刃。「光剣……カカト落とし……」そしてデブリン真っ二つよ。




