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お前の仲間になってやる

 斬り倒された木々の中、立つのは俺とブリトニー、そしてデブリン、チビゴブリンども。少し離れた茂みんとこには、マオたちがいたんだが、アイツら微妙に近付いて来て、俺をハラハラさせやがる。ゴブリンどもの攻撃の、射程外にいろよなあ。こうなったらばよ、ゴブリンどもの、意識をこっちに向けてえな。それに俺はよ、聞きたいこともあるもんで、「士魂ってのがいるんだな」なんて言ったもんだけど、ブリトニーとデブリンは、いきなり戦い始めてやがる。棍棒またもブン投げられて、ブリトニーに飛んでった。そしたらばブリトニーがよ、軽くジャンプでかわしてよ、ピンと張られた鎖に降り立った。「士魂様がお前を選ぶ? そんなことがあるものか」ブリトニーはそう言って、鎖の上を走ったな。そいだらデブリンとの距離が、みるみるうちに縮まって、ブリトニーは飛び蹴り放つ。だけどデブリンのヤツも、腕を真横になぎ払う。「士魂サマは言ってたぜ、裏切り者を殺せって!」裏切ってんのかブリトニー。一体何をやったんだよ?そんでデブリンのなぎ払いと、ブリトニーの蹴りがよお、ガッチリぶつかったんだけど、これがほぼほぼ互角なもんで、デブリンのヤツもなかなかやるな。ブリトニーはちょい押し負けて、空いた足でデブリンの腕を、トンと蹴ってバク宙よ。そいだら距離が開いてよお、ブリトニーは安全着地、デブリン睨んでサッと構えた。右半身を一歩引き、握られてるのは右拳。左の拳は開かれて、デブリンに向く(てのひら)よ。デブリンの方は押し勝ってたから、一見何ともねえけども、何度もブラブラ手を振ってるな。そんで「痺れたあ!」ってなもんで、腕にはブリ子の蹴り跡ついてる。こりゃあほんとに拮抗してて、そりゃあ、いがみ合うよなあ。しかし何だな、ブリ子って、勝手にあだ名もこしらえちまった。呼びやすいもんなんだけど、ブリッ子みてえでブリトニーには、あんまり合わねえ呼び方かもな。だけど言いやすいもんで、俺はこれからブリトニーを、ブリ子と呼ぼうと決めたなあ。


 ブリ子の蹴りでデブリンが、苦悶したもんだからよお、俺はポツリと呟いた。「やるじゃねえかよ、ええ? ブリ子」そしてニヤリと笑ったら、そいだらデブリン、ムッとして、「俺の方が強いけど!」つって、周りのチビゴブリンども、歓声あげて応えたな。その間によ、デブリンの、手もとに鎖棍棒が、ジャラジャラ金属音たてて、戻って行ったわけでよお、ブリ子が警戒してるなあ。しかしブリ子は丸腰で、デブリンの方は武器がある。これってえのはフェアには見えねえ、不公平なもんだから、俺は野次を飛ばしたな。「おめえ体はデケえのに、武器なきゃ戦えねえのかよ」だけどもデブリンしれっとしてて、「武器使うのが誇りだろ!」なんて言ってよ、ゴブリンの、独自の価値観見えたよな。つーのもゴブリンってのはよお、知能が低いもんだから、武器使えるのはいいことだって価値観根付きやすいんだとよ。基本的には卑怯って価値観持たない種族とか、併せて言われていた気もするな。そいだら余計にブリ子がよ、正々堂々戦うのはよ、珍しいことなんだよな。ゴブリン色々いるんだなあ。


 武器を使えるデブリンは、鎖棍棒握りしめ、ブリ子に向かって言ったよな。「お前は武器を使えない、頭が悪いゴブリンだ!」なんて言ってよ、グヒヒっつって、周りのチビゴブリンどもと、一緒に笑ってやがったな。そんでブリ子が黙ってたらば、デブリン調子に乗り出して、ペラペラ喋り始めたな。「裏切り者のお前には、このダンジョンに居場所はないぞ!」強気で言ってるデブリンが、続けてすかさず言ったよな。「まあ最初からお前には、居場所なんかないけどな!」その言葉にはブリ子もよ、顔をしかめて反論よ。「私が何を裏切ったのだ!」それは俺も聞きてえな。まあよ、ブリ子は孤児らしいし、明らか種族が違うもんで、馴染めもしねえだろうから、裏切るのだって不自然じゃねえ。そいだらデブリンのヤツがよ、ブリ子を指さし言葉を返す。「お前は捕らえた人間(エサ)をなあ、いつもこっそり逃がしてる! 士魂サマは怒ってる! 俺もみんなも怒ってる!」なるほど、ブリ子はモラルがあるな。他のゴブリンどもとは違う。だけどモラルがあるからこその、意見の違いも生まれるよなあ。「無駄な殺生避けるべし! お前たちも士魂サマに、そう言われていたはずだ! 私は滅びた村の孤児! 士魂様はそんな私を拾って育ててくれた方だ!」ブリ子の言う様なヤツなら、士魂とやらとも話せるかもな。ブリ子が慕うぐれえだからよ、ちょっと期待はしちまうな。しかしながらよ、デブリンは、グヒヒ、グヒヒと笑ってよ、クソみてえなこと言ったよな。「お前バカだな、何も知らねえ! そんなの嘘に決まってんだろ! お前を便利に使う為に、言ってただけだぜ、グヒヒ、グヒヒ。 大体お前の村はなあ、士魂サマと俺たちが、一緒に滅ぼしたんだからな! お前は何かに使えるかもと、村からさらった赤ん坊よ! あの牛の赤ん坊ぐれえだったかなあ! グヒヒ、グヒヒ」ってなもんで、コイツは八つ裂き決定したな。そんな俺の決意をよそに、顛末(てんまつ)聞いたブリ子はよ、泣きそうな顔になったしよ、うつむいちまったもんだから、さすがの俺も心配したな。そいだらブリ子は恐る恐るよ、チビゴブリンども見たよなあ。そいだらチビゴブリンどもも、ニヤニヤ笑って言ったのよ。「知ラナカッタノ、オ前ダケ」「ミンナオ前ガ嫌イダカラナ」そんでデブリンのヤツが、とどめの一言言ったのよ。「お前なんか同胞じゃねえ! 士魂サマも言ってたぜ、お前はただの道化だってよ! グヒヒ、グヒヒ」なんつって、これにはブリ子もうなだれて、憔悴(しょうすい)した顔になっちまった。「似たようなことを考えたことは、過去にあったが、まさかなあ……それよりひどいなんてなあ……」悲しそうに声出すブリ子は、涙を静かに流したな。仲間割れはいいけどよ、さすがに俺もむかついた。グスマン例えに出されてよ、さらわれたのを想像したら、ブリ子に肩入れしたくなって、やってやるかと思ったな。でもよ、そしたら離れたとこで、すげえ殺気が爆発よ。俺はもちろんブリ子もよ、デブリンだってビクッてなって、一斉にバッと見たらばよ、そこに立つのはマオでよお、ボンボンたちにグスマン渡して、ゆっくりゆっくり歩いて来たな。「私、村で育ったけどさ、父さんがいて、母さんがいて、ディーさんがいて、みんながいてさ。 それがなくなるなんてさあ」マジで殺気がヤバくてよ、俺でもちょいと面食らうのに、チビゴブリンどもバカだから、ナメてかかって躍りかかった。そいだらマオの拳がよ、ゴブリンどもに炸裂よ。「そんなの許せるわけないよ。 そんなの許せるわけないじゃん。 しかもグスマンちゃんぐらい? そんな時にさらってきた?」ゴブリンどもはどいつもこいつも、顔面一撃粉砕よ。「ブリちゃん、すごくいい子だよ? 同胞の仇なんて言ってさ、仲間と思ったみんなの為に戦う優しい子なんだよ?」五匹十匹十五匹、マオの射程に入ったヤツは、片っ端から撲殺よ。そんで怒りに燃えた目で、マオは腹から声出した。「なのにてめえら、そんな子騙して、何を笑って見下しやがる。 てめえら生かして帰さねえ……!! ……てめえら生かして帰さねえぞ!!!!!」気迫こもったその言葉がよ、あんまりすげえ剣幕だから、合図みたいになっちまって、戦闘開始、ってなもんで、ゴブリンどもがマオによお、一気に殺到したよなあ。そいだらマオも無傷じゃねえよ。切り傷すり傷バンバン増える。だから俺はよ、ゴブリンどもを、蹴散らそうと思ったけども、マオのヤツが攻撃を、食らいながらも拳振るって、全く怯むことがねえ。その戦いがあまりにも、鬼気迫るもんだったから、こうなったらば俺もよお、超高速で動いてよ、致命傷だけ防いでやったが、あとは好きにやらせたな。いつも飄々としたマオが、ここまで(いか)ってるんだから、あんまり余計なこと出来ねえよ。そいだらマオの拳がよ、振るわれる度に光り増す。そんで俺らの光剣と、同じ原理の技をよお、自力で編み出しやがったな。怒りで目覚めるタイプかよ。俺でもババアに教わって、何日もかけて修得したが、マオの野郎は一回見てよ、即座にアレンジしやがって、拳に宿すんだからなあ。マオの素質はもしかしたらよ、俺よりあるかも知れねえなんて、フッと思って見ていたら、マオはゴブリンどもをよお、なぎ倒しながらザンザン行って、ブリ子の前に着いたよな。そんで燃える目ひんむいて、ブリ子に向かって絶叫よ。「悔しくないのかブリトニー! 泣くな! 顔をあげやがれ!」何で口調がさっきから、そこはかとなく俺なんだよと、言いたいけども言えねえよ。そんな雰囲気してねえもんな。黙ってサポートするしかねえよ。そんで泣いてるブリトニーはよ、力ない目で顔あげた。マオは燃える目、傷だらけ。虚ろな目をしたブリトニー。二人の視線が交錯したな。そいだら燃えるマオがよお、「お前は仇を討たないのかよ! コイツら同胞なんかじゃない! 敵だ! お前の敵なんだ!」そいだらブリ子は力なく、「私はどうするべきなのか、分からなくなってしまったよ。 私は一人だったんだ。 ほんとに一人だったんだ」まあよ、ショックはデケえよな。でもよ、マオは止まらねえ。ブリ子の頬を一発張って、ガッチリ両肩掴んだな。「私たちがなってやる!」マオは全身ボロボロだけど、目だけは見たことねえ程に、ギラギラ光ってどんどん燃える。そんでもっかい絶叫よ。「私たちがなってやるよ! お前の仲間になってやる! だから立てよ! 拳を握れ! 一緒にコイツら倒すんだ! お前のほんとの同胞の為に!」そいだらブリ子の目からよお、ボロッと涙がこぼれたけども、目には光が戻ったな。マオがドンドン話を進めて、俺は何にも言ってねえけども、マオが仲間になるってよ、決めちまったもんだから、俺もすかさず言ったよな。「ブリ子、俺らと一緒に来いよ。 そんでテメーでブッ壊せ」そいだらブリ子が頷いて、すっくと立って、ゴブリンどもを睨んだな。その目はマオとは違ってよ、冷えた殺気と狂気を(はら)んで、違った凄味があったよな。「私が同胞と信じた、矮小(わいしょう)で、醜悪(しゅうあく)で、下衆(げす)で、外道(げどう)愚者(ぐしゃ)どもよ。 せめて抵抗してみせろ。 これからお前らの村は」闘志戻ったブリ子の言葉が、ゴブリンどもに冷たく刺さる。「私たちに滅ぼされるのだ」蹂躙開始、ってなもんで、そっからはもう、一方的よ。

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