ブリトニー
初対面でコロセだ何だとか言いやがって、ゴブリンども、おめえら一体何様だよ。しかもどいつもコイツもアイツもソイツも薄ら笑いを浮かべてやがって、気分が悪くて仕方ねえ。それにニンゲンコロセって、よくも俺がいる前で言ったなコイツら。そんなの絶対やらせねえ。俺は起きるのも外に出るのも金をおろすのだってめんどくせえと思っちゃいるし、戦うのだってめんどくせえ。何でもかんでもめんどくせえ、めんどくせえ、めんどくせえったらありゃしねえがよ、俺がコイツら逃がしたら、人が殺されちまうよな。そんなら俺がコイツら駆除してやる、根絶やしにしてやるよ、ってなもんで、「やってみろやチビどもが! 今てめえらの前にいるのが、人類最強の一角よ! かかって来やがれ!」っつったらば、チビって言葉にブチギレて、歯を剥いて幾重にも俺を包囲しやがる。そんで「チビッテイイヤガッタ!」なんつって、今にもかかって来そうだな。まあでも、このゴブリンども、幼児並みの低い身長で、腹は出てるわ、汚えツラしてるわで、そりゃあ容姿をイジられたらキレもするか。とここで、ゴブリンの群れから、「ナンダ、アノアゴ……」なんて囁きが聞こえ始めて笑いが巻き起こったもんだから、俺はほんとに「お仕置きだ!」っつって、心の底からブチギレそうになった。でもギリギリで冷静さを完全に失わなかったのは、マオやボンボンども、そして我が子グスマンの顔が浮かんだからよ。アイツら絶対に無事に帰す、ってなもんで、この一点に関しては絶対ヘマなんか出来ねえからよ、心を静めて俯瞰でゴブリンどもを見る俺。いじらしいよな。しっかし、何で俺がこんなザコどもにナメられなきゃなんねんだよ、マオがアゴ割りやがったせいじゃねえか、と改めて思ったら、これがほんとにむかついて、マオをぶん殴りてえ気持ちがムクムク起こって来たもんで、それもゴブリンどもにぶつけてやるしかねえな。こうなったら八つ当たり祭りよ。しかしヤツら、俺のグッツグツの殺気とかも分からねえレベルのクソザコモンスターなもんだから、「ギギッ、テキ……ヒトリダケ……ラクショウ……」とか何とかのんきに言ってやがってて、これがザワザワザワザワうるせえもんだから、俺はデッカくハァーっつってタメ息ついて「テメエらもういい、くたばれよ」っつって、斬首蹴りでまとめて首を刈ろうとしたらばよ、例の光剣カカト落としのゴブリンが俺んとこまでカッ飛んで来て、鬼の形相で蹴りを繰り出しやがってよ、俺の蹴りにぶち当てて、見事に相殺して、素早く飛び退きやがった。
ゴブリンの首刈るだけだと思って、そりゃあそれなりに軽く出した斬首蹴りとはいえ、これを受けられるヤツなんてこの世に十人もいねえだろうから、コイツはやっぱモノが違うな、ってなもんで、俺はちょっと感動して、何だかコイツに興味が湧いた。実力はもちろん、体格も他のゴブリンどもと違ってよ、人間サイズで、知能もちゃんとありやがるし、ちょっと可愛げもあったしで、こんな珍しいゴブリンなら、そりゃあ興味も湧くよなあ。だからよ、倒すのは確定だけど、いや、だからこそ、名前ぐれえは知っておきてえ気持ちになった。だからシンプルに「おめえ、名前は?」っつってみたら、ヤツが眼光鋭く、「孤児の私には名などない」なんつって、こりゃあデリケートな家庭の問題を突っついちまった俺は、ほんとにゴメンと思ったな。だからすかさず、「マジかよ、悪かった。 じゃあ俺が名前つけてやるよ、ブリトニー。 ゴブリンからブリを取ってブリトニー。 おめえ女だろ?」なんつったんだけども、「なっ、貴様、何故、私が女だと分かった!?」なんつって驚いてやがる。最初に俺がちっと言おうとしたのは、おめえ女だろ?ってことだったから、俺は、「そんなもんおめえ、女のいいニオイがするから誰だって分かるだろうが」っつったんだけども、そしたら遠くでマオが、小さな囁き声で「変態おじさんじゃん」って言いやがって、バカ野郎、俺にだけは聞こえんだぞ!って思ったが、ブリトニーが頷いてて、あれ?コイツにも聞こえてんのか、ってなもんで、ブリトニーがマオたちに襲いかからねえか警戒しながら、「誰が変態おじさんだ!ブリトニーてめえも頷いてんじゃねえ!」っつったんだけども、そしたらばブリトニーが、「私、いいニオイなのか……☆」なんつって、満更でもなさそうだから、何かコイツも可愛いな。そんでちょっとムラムラしてたら、ブリトニーがハッとして、「な、何だその邪悪な顔は! あ、悪人に名付けられたくはない!」なんて言いやがるから、「おいブリトニー、おめえふざけんなよ、誰が悪人だよ」「悪人だろう」「誰がだよブリトニー」「貴様は同胞を殺した通り魔だ」「通り魔だと? 何言ってんだブリトニー」なんつって、早速、定着を狙って呼び続けたんだけども、そしたらブリトニーのやろう、「ただ歩いてた私ブリトニーと同胞たちを襲撃したのは貴様だろう!」なんつって、ちゃっかり名前を受け入れやがったな。それで「な、何だ」なんつって赤面してやがるから、名前、もしかして気に入ってねえか?なんてイジろうと思ったその時に、さっき出会い頭になぎ倒したゴブリンどもの死骸があるし、マオが囁き声で「たしかにディーさんから仕掛けたよ。 あとブリちゃん、名前気に入ったのかもね。 ブリトニーって名前可愛いもんね」なんつって、ぐうの音も出ねえし、イジり役まで取られて、しかもブリトニー、「たしかに可愛い名だからな……☆」なんつってはにかんでやがって、これがまた何だか可愛いもんだから、俺もボーッとしちまって、そっか、俺から仕掛けたな、ってなもんで、つい「あれ、ほんとだ」っつって、状況的には俺が通り魔になんの?こりゃ参ったな、って思いながら「でもよブリトニー」っつったらば、ブリトニーが仕切り直ししようとしたのか、急に声張って、「同胞たちも戦士! 弔いはいらぬ! しかし仇は討たせてもらう!」なんて言いやがるから、何か逆に締まらねえし、反論したいわけじゃねえけど、完全にこっちが悪者にされてんのは納得が行かねえな。そしたら遠くからまたマオの声がしやがる。「ディーさん、ブリちゃんに謝っとこうよ」っつって、俺はほんとにむかついて、「おめえだって川で向かってきたゴブリン倒したろ、あれお前忘れたとは言わせねえぞ」っつって巻き込んでやったらば、ボンボンがすかさず立ち上がって「あっ、俺たちも入口付近でゴブリンに襲われました!」っつって、何姿見せてんだバカ野郎。そいだらゴブリンどもが「ニンゲン、イタ! コロセ!」なんつって向かうもんだから、うかつでバカなボンボンに、俺はほんとにむかついたけども、そしたらブリトニーが「やめろ!」っつってゴブリンどもを制止した。そんで続けて「どうやら仕掛けたのは人間側ではなく、我らの同胞だ! ならばもはや危害を加えてはならない! これで手打ちとするべきだ!」なんつったもんだから、やっぱコイツ、悪いヤツじゃねえな、一本筋が通ってやがる、ってなもんで、俺はマジで感心した。だからボソッと、「おめえ武人だな、ブリトニー。 俺と同じよ」っつったらば、コクリと頷くもんだから、こりゃもうちょい話せるかもな。でも、そしたらまたマオがヒソヒソと、「いやディーさんはゴミじゃん。 さっき私を道連れにしようとしたじゃん」ってなもんで、この野郎、もう一発巻き込んでやらねえと気が済まねえ。だから俺は、「おめえの仲間を俺やマオ!が殺しちまったのはすまねえ。 それはマジで俺もマオ!も謝る」っつって、マオが「ぐぎぎ、クズがあ」って言うのが聞こえたな。ざまあみやがれ小娘が。そんで大麻のことやら何やら聞こうと思って、「でだ、ブリトニー。 おめえを武人と見込んでちっと話してえことがある……」っつって、ブリトニーも「うん? 何だ?」っつって、聞く耳持ってるみてえだったんだけども、そいだら別方向からクソデカいトゲ付き棍棒が飛んで来た。
棍棒の柄には鎖が付いていて、鎖鎌の棍棒バージョンってところだな。軌道は一見、俺を狙ってるけども、ちょいと避けたら、棍棒が飛んでく先はブリトニーよ。もちろんブリトニーも問題なくかわして、鎖の先を睨んでやがる。そいだら俺とかブリトニーよりもだいぶデカいゴブリンがいてよ、鎖をグンッと引っ張って、棍棒を手元に戻したな。そんでブリトニーに向かって、「緑深き色の誇り高き勇者! お前ニンゲンと何話してんだ!」っつって、ブリトニーもソイツに向かって「若草色の比類なき戦士! 話を聞け!」なんつって、仲悪そうなもんで、ちっと様子見してみるか?……なんて思ってたらマオが、「ププー、ブリちゃん何その呼び名!」なんつって、おいイジるなイジるな!いやさ、俺も気になったけども!って思ったら、俺も悪いクセが出ちまって、「お前ら、そんなクッサい呼び名なのかよ!? バッカじゃねえの、緑深き色の勇者ブリトニー、あと、若草色の比類なき戦士。 おめえらほんとにバッカじゃねえの」っつったらば、緑深き色の誇り高き勇者ブリトニーが、「その名で呼ぶな!」っつって、何だよ、赤面してやがるよ。だから「おめえ恥ずかしいのかよ」っつったらば、頷くブリトニー。何なんだよ、おめえはよ。ほんとにちっと可愛いじゃあねえか。




