表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/60

第五十五話 俺たちに明日は来るのか

 事は雪山を登り始めて4日目に起こった。

 雪山と言えど、幸い吹雪ふぶくこともなく、例のRPGシステムのおかげでなんの苦もなく、むしろそれが4日も続いたことに緊張感もがれ、ただ惰性で登っていたのがいけなかったのだろう。

 ハッキリ言って気がゆるんでいた。

 残すところ後1日かなと話をしていた時だった。

 俺たちの背後でドザァという音と共に、「うわぁあああああ」という叫び声が上がった。


 声のする方に振り返る。

 誰かが、滑落かつらくした!雪の斜面を流され落ちていく。

 トゥモローだった。


明日真あすま!」


 カムトゥルーが慌てて後を追おうとする。

 それを、リュークとブレイブが止める。


「いや、無理だって!お前も帰ってこれなくなるぞ!」


 極夜と言えど真っ暗闇ではない。

 むしろ、光が雪に反射して明るいぐらいだ。

 しかし、トゥモローが落ちていった方はここからでは暗くなっていてよく見えない。

 助けに行くと、2次災害も起こりそうである。

 救出は不可能に思えた。


「だって、明日真が!明日真が!」


 馬鹿な、こんなことが起こるなんて。

 今まで、8人で行動してきたが、何ともなかったではないか。

 それが急にこんなことになるとは……。


 ブレイブが冷静な口調で言う。


「スマホだ。スマホで連絡とってみろよ。向こうが無事なら連絡がとれるはずだ!」


「連絡がとれなかったら?」


「そのときは、そういうことだ」


「そういうことって、どういう事よ!」


 カムトゥルーがブレイブにくってかかる。


「とにかく、かけてみろよ!」


 カムトゥルーは辛そうな顔をして、スマホを手にする。

 カムトゥルーのスマホからかすかに呼び出し音が聞こえる。

 しかし、通話に切り替わる気配はない。


「お願い、出て……」


 カムトゥルーが顔をゆがめる。


「ダメ、つながらないわ!」


 俺は、ふと気になってブレイブに尋ねる。


「GPSのような機能は使えないんですか?」


「RPGだからかな、相手の位置情報を知る手段はえて無くしてあるみたいなんだ」


「くそっ、ダメか!」


 それから、しばらく俺たちはカムトゥルーの悲愴な叫び声を聞きながら茫然としていた。

 俺は、トゥモローに何度かスマホで連絡をとろうと試みたが、始めは聞こえていた呼び出し音も、ついには“電源が切れている状態”というアナウンスにかわってしまった。


 カムトゥルーの叫び声が小さな嗚咽に変わったころ、ブレイブが顔を上げた。


「行こう。ここに留まっていても仕方がない。生きていれば会えるだろう」


 ブレイブはカムトゥルーに目をやった後、俺たちの方に顔を向ける。


「誰か、カムトゥルーに肩を……」


「大丈夫よ、歩けるわ」


 結局、その後すぐに街に戻る事になった。

 もちろん『ゲート』に、トゥモローが滑落した場所を記録して……。


 翌日、『ゲート』をくぐった先は……吹雪ふぶいていた。

 昨夜から、何度かトゥモローのスマホに連絡を試みたが、一向に繋がる気配はなかった。

 もちろん、登山は中止。

 あわよくば、トゥモローの救出もと考えていたが、視界はさえぎられ前に進むこともままならない。


「こんな中で生きていたら奇跡よね」と、カムトゥルーも辛そうな顔をしている。


 3日後、足止めと引き換えに数日の休息を得た俺たちは、再び山を登り始めた。

 そして、その日俺たちは、この星で最凶で最後の敵と対峙することとなった。

こんどこそ、更新再開します。

そして、もうすぐ終わります。

ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ