第五十四話 霊峰エンダータル
リアルの忙しさにかまけて、更新を1月半さぼってしまいました。
ここから、ラストに向けて更新頑張っていきたいと思います。
幸いなことに、機械獣に遭遇したのは、その1度きりであった。
その後、白熊とは何度か遣り合ったが、それ以外の敵には、とうとう合うことはなかった。
辺りは木々が少なくなり、岩がゴツゴツと増えてきている。
その上に雪も積もり足をとられる。
さらに、僅かだが登り傾斜になってきているようだ。
アーマーが重い。
「これって、登ってますよね?」
「ああ、あそこを目指している」
トゥモローが指差す先には、連なる山脈の一際高くなった頂上がある。
「うげぇ、マジか」
リュークがつぶやく。
いや、リュークでなくてもそう言いたくなるだろう。
見れば、マリやハタカも蒼白な顔をしている。
俺は、同じフルアーマーを着込んでいるブレイブの方を向いて尋ねる。
「この、鎧のまま登るんですか?」
「ん?ああ、スマホの電源を切ったままだったのか?」
「え?」
そういう事は、早く言ってくださいよ。
という言葉を呑み込みながらスマホの電源を即座に入れる。
起動までが長い……。
Idroidの表記が消えた瞬間に体がスッと軽くなる。
なるほど、これなら山登りも苦ではない。
しかも本来必要なはずの雪山登山の装備は全て『インベントリ』に入っている。
言わばリュックサックも無い身軽な状態だ。
このRPGシステムは本当にすぐれた技術だなと思う。
しばらく進んで気がついた。
いや、気のせいだろうか、システムカットの前に比べて寒さが和らいだ気がする。
「もしかして、このRPGシステムって防寒効果もあったりしますか?」
「あら、気づいた?ブレイブなんて、以前来たときは行って帰ってくるまで気づかなかったわよ。そう、このシステムには体温調節機能が備わっているわ。リライシーンで買い揃えたような防寒具は、本当は必要ないのよ。ただ、私たちはシステムカットをするからね。厚着をしたなら、したなりに体温を調節してくれるから、着込む分にはなんの問題もないわ」
カムトゥルーがニヤニヤ笑いながら話し、ブレイブの方に顔を向ける。
これは、わざと黙っていたんだな。
俺たちがいつ気づくかどうか、まさか賭けはしていないと思うが……。
ただ、ひたすらに岩と雪の世界を歩いていた。
遠くに見えていた山脈の壁が眼前に迫ってきている。
「さて、いよいよ登るぞ。霊峰エンダータル。ここに来たのは2度目だ」
ブレイブが言う。
「霊峰エンダータルですか……」
名前を聞き間違っていないか、確認のため復唱するように俺は言う。
もちろん、この山の名前だろう。
「ああ、ここに最終ボスとおぼしきドラゴンがいる。登山の準備はいいか?コンパスはもっているか?地図は、リュークやホープの『マップ』を開いて詳細表示にすればいいだろう。最悪迷ったら、俺たちには『ゲート』がある。8人はぐれないようにすることが肝心だ」
「以前に、そのドラゴンと戦ったことがあるんですよね?その時は、どうだったんですか?」
「全く歯がたたずに、逃げた。鉄のように固い鱗を持っている」
「よく、逃げられましたね」
「ボスといっても、いわゆるRPGのボスのように閉じた空間の中で戦闘するわけじゃあない。翼のあるドラゴンでもなかったし、追ってくる気配も見せなかった。逃げ出すのは簡単だったさ」
そこからは、雪山の登山となった。
それまでは見えていた岩も雪に埋もれて見えなくなり、白一色の世界。
そこで思い知らされたのは、RPGシステムがどれだけ優れているかという事だった。
改めて考えてみると、俺たちはまともな雪山登山の装備をしていなかった。
防寒具はおろか、登山靴のようなものもない。それまでに履いていたもの、そのままだった。
スニーカーやスポーツシューズで雪山を登ると、普通どういうことになるか想像がつくだろう。
雪の水分で歩けなくなり、手足は冷え凍傷になりかねない。
そういったことが、全く無いのだ。
ただの体温調節機能にとどまらない、からだ全体を薄い膜のようなもので覆っているかのようだった。
それにしても、カムトゥルー達4人は経験者で、そういう事は承知の上だったが、それを俺たち4人に全く教えようとしないとは、ひどい話だ!
そんな話を、文句いってみたり、軽~く謝られたりしながら雪山を登り1日目の登山は終了した。
もちろん、この雪山でキャンプをしたりはしない。
登った地点までを『ゲート』に記録し、町まで戻って朝まで休むことにする。
これがゲームなのだとすると、なんとも緊張感に欠けるRPGだなと思うが、実際には自分達の命がかかっている、ちょうど良いぐらいの緊張感はあるのだった。
なんだか、グダグダな内容になってきていますが、今の目標は物語を終わらせること。完成させることです。ここまでお付き合いくださった方、ありがとうございます。最後まで、なにとぞ、よろしくお願いいたします。




