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第五十話 アダマンタイト

 狩りを終え、砂漠の中のオアシスに帰ってくるころには、日が沈みかけていた。

 ご飯を食べたり、夜になって寝たりしながらうまく時差を調整して、マニュファートへは朝に戻ってきた。

 8人で、そのまま例の鍛冶屋へ向かう。


「こんにちは!」


 カムトゥルーが軽快に声をかける。

 先日と同じ正面の男が話をする。


「ん゛、あ゛あ゛、お゛めが。今度は、何だ。アダマン取りにい゛っだでながっだが?」


「うん、取ってきたよ。8人分の武器をお願いね!」


「馬鹿ごぐでねえ゛。ぞん゛な、早い゛わげねえ゛べ」


「本当だって、荷物外にあるから取ってくるね」


 もちろん、鍛冶屋の外に出たからといって、そこにアダマンタートルの素材などない。

 魔法スキル『インベントリ』の中に入れたのだから……。

 店の中で『インベントリ』を広げられないというカムトゥルーの配慮からくる言葉だろう。


「8頭分運ん゛で来だっでのが?」


「ううん、10頭分」


「ふん、ぞれが本当だっで言う゛なら持っで入っで来い゛」


「10頭分よ、この中が一杯になるけど……」


「お゛う゛、だがら一杯にじでみろっで」


 どうやら、こんなに早く、しかも10頭分も運んで来たことを信じていないようだ。

 カムトゥルーが僕たちに目配せする。

 “一緒に運んで”という合図だろう。

 何といってもワニが背負っていた甲羅だ、インベントリに入れるのも4人掛かりで、かついで入れたのだ。

 それが10頭分ある。

 8人で運び入れても5回ずつ運ばなければならない。

 当然カムトゥルー1人では無理だ。


 カムトゥルーに続いて鍛冶屋を出てから、鍛冶屋の横にある路地の方へとまわる。

 流石に本通りで『インベントリ』を広げるのは目立ちすぎる。

 実は、こういう物を運ぶのでも、男の俺やリュークよりも、レベルの高いカムトゥルーやホープの方が力に補正が掛かって楽々持ち上げたりする。

 力の配分を考えて、上手く4人、4人に分かれてから運び入れることになった。

 そもそも、入り口から入るだろうか、なんせ結構大きいのだ。


「インベントリ!」


 ハタカが唱える。


 カムトゥルーの『インベントリ』に入りきらず、2頭分はハタカの方に入れたのだ。

 そちらをまず運び入れることにした。


 入り口から、まるで家財道具のタンスを運び込むようにして、アダマンタートルをかついで入っていくと、正面の男が声をあげた。


「お゛、お゛、お゛、本当が!?」


 もくもくと仕事をしていた他の鍛冶士たちも顔を上げ、一様に驚いている。

 たかだか2頭分で驚いてもらっては困る。

 後、8頭分あるのだ。


 再び、店の外に出る。

 今度は、カムトゥルーが「インベントリ!」と唱える。

 路地一杯に『インベントリ』の箱が広がる。

 こちらには8頭分ある。

 まず2頭分だ。


 6頭分運び込んだところで、正面の男が路地まで付いてきた。

『インベントリ』にまず驚き、死んではいるが、アダマンタートルがそこに、まだ4頭もいることに驚いている。


「どごで手に入れだ?どごで買っで来だ?」


「買ってきたんじゃない、倒してきたんだってば!」


「馬鹿ごぐでねえ゛!ごい゛づば、サウスカントゥールのアダマンでねえ゛が。3日前に注文受げで、どう゛やっで行っで帰っで来るだ?ごれだげの数、倒ずだげでも1日ががらあ゛!」


 確かに1日かかった。

 このドワーフの言うことは間違っていない。

 カムトゥルーがいろいろとややこしい説明をしたが信じてもらえない。

 結局、ゲートを潜ってサウスカントゥールまで、このドワーフを連れて行く事になった。


「今行っても、向こうは夜だから、こっちが夕方になってからでいい?」


「ん゛、あ゛あ゛。久々に良い゛素材に会え゛だ。早速打ぢ始めるぞ。夕方にまだ声がげでぐれ」


 ドワーフが想像していた大きさとはだいぶ違ったらしく、これだけの大きさのものが10頭分もあれば、8人分の防具も揃うということだった。

 良いものにしたいから3日時間をくれと言われた。


 その日の夕方にドワーフを迎えに行ったが、のっている(・・・・・)ところだから、もう良いと言われた。

 カムトゥルーが言うには、今までも、こういうことがあったらしい。

 ゲートを使って遠くから素材を持ち帰ると毎回疑われて、時間差でゲートの先に連れて行く約束をするが、そのころには鍛冶に一生懸命になり、どうでも良くなるらしい。

 融通は利かないが、腕は確かな職人らしさのある男だと思えた。


 街の中を探索したり、ホープの案内で街の周辺のモンスターを倒しながら過ごし、3日後ドワーフの鍛冶屋へと向かった。


「でぎでるぞ。お゛前達がら受げ取っだ真紅眼も付げでお゛い゛だ」


 真紅眼狼レッドアイズウルフから得られた真紅眼のうち、1つは売却し、2つは槍とハタカが装備する予定のロングステッキに付けてもらうことにした。

 1つの売却価格は、何と2,300,000〔メル〕にもなった。

 トゥモローは受け取りを辞退したので4人で分けて、1人辺り50万超もの大金が手に入った。


「さあ、行くわよ!」


 全員分の武具をアダマンタイトで揃えることができた。

 準備は万端。

 カムトゥルーに促されるようにゲートを潜っていった。



「目標金額達成まで残り 997,840,000/1,000,000,000〔メル〕」

いよいよ、最終決戦に挑みます。ご期待ください。

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