第五話 RPGをレクチャー
目標金額達成までの残金を追記(2020年7月12日追記)
列車から降りるまでに俺たち4人は、目標金額の確認とフレンド登録、パーティーを組むところまですませた。
これから4人の付き合いが長くなりそうに思えたので、誰が一番最初に抜けることになるのか、を知るためにも目標金額の確認は必要だった。
もっとも、俺とおっさんについては、10億、2億と先に宣言していたが……。
そして、研修医が1000万、紅一点奥田が300万だった。
そのお金が必要な理由は、もうお互いに聞くことはしなかった。
しかし、研修医の1000万は簡単に想像がつく。
大学進学時の父親の借金だろう。
奥田の方は、親の自営業がらみだろうか?
「お金の換金はどうする? 皆、いくらかは持ってきてるだろう?」研修医が言った。
「全額換金するべきだと思います。どうせ、地球に戻れるまで“円”は使わないでしょう。それと、RPGつまりロールプレイングゲームのことはそれなりに答えらえると思うので聞いてください」俺が答えると、
「それは助かる」
「それは助かるわ」おっさんと、奥田がハモる。
お金の換金が終わると、いよいよ俺たちは列車を後にした。
ホームにはヒステリックに叫んでいる女性がいる。
先ほど、アナウンスで質問をしていた女性かもしれない。
周りにいる男女も慰めるでもなく、ただ肩を落としているようだ。
怒鳴りあっている男2人もいる。
パーティーを組む上で意見の食い違いがあったりしたのだろうか。
もしかしたら目標金額に関係することかもしれない。
「俺は100万だから貯まったらすぐ抜けるさ」なんて発言をしようものなら、喧嘩に発展しかねない。
それを考えると車内での、俺のおっさんに対する発言も迂闊だったか。
止めてくれた研修医に感謝しなければ。
それ以外の所でも騒ぎは大きい。
俺たちのパーティーはかなり落ち着いている方だ。
街の方に向かって歩きながら俺は話す。
「ホーム画面を見てください」
俺からすればステータス画面なのだが、GMがホーム画面と言っていたから、それで通すかと考えた。
「まず、プレイヤー名の変更ができるみたいです。他のプレイヤーに本名を教えたくない場合は変えると良いと思います。俺はもう変えました」
「名前は言わなければいいんじゃないか?」と研修医。
「フルネームのままだと、プレイヤー同士でトレードするときなんかに相手の画面に表示されてしまうと思います。せめて、苗字や下の名前だけにするとか――」
「なるほどな。名前の横の【変更】ボタンを押せばいいんだな」
「はい、そうです。それから、ステータスポイントが割り振れるようになっています。皆さんも10ポイントずつありますか?」
「もっと根本的なとこから聞いてもいいか? おそらく山下君以外、他の3人はやったこともないと思うんだ」
研修医もゲーム経験なしか。
少しぐらいあると思ったのだが……。
「下の名前で、呼び捨てでもいいですか? プレイヤー名はコーイチローにしています。コウでもいいですよ」
「わかった、コウ。まず、EXPってのはExperienceすなわち経験……、経験値だな?」
「そうです」
さすが研修医。賢いな。
俺は、聞かれる前に答えることにした。
「職業はこれからいろいろ増えるんでしょうね。たぶん。良くあるのは、戦士、魔法職、回復職、アーチャーなどでしょうか。転職できるんだと思います。
スキルレベルは職業レベルみたいなものじゃないかな?
HPはヒットポイント。残りライフ、生命値のことです。0になると死にます。今の俺たちにとって最重要項目ですね。左が現在値、右が最大値です」
「MPは……」と言いかけたところで、
「マジックポイントかしら?」
奥田が早押しクイズのように答えてくる。
「正解です」
この子も賢いかもしれない。想像力がある。
「魔法を唱えるときに消費します。このMMORPGのようなゲームならMPは時間経過で回復するのが普通です」
「MMO?」
「あ、あまり気にしないでください。多人数接続型のRPGの総称です」
「あと、ステータス値ですね。
力……そのままです。物理的な攻撃力に影響します。
生命力……HPや防御力に影響します。
素早さ……これも文字通り。攻撃の速さと――回避にも関係するかな。
集中力とカリスマ、これが少し分かりません。でも、たぶんですが、
集中力……魔法魔力、MP、弓の命中率あたりかな? 弓だけじゃない通常の攻撃の命中率にも関係するかもしれませんね。
カリスマ……信仰力、回復力、もしかしたらこっちもMPに影響ありでしょうか?
あるかどうか分かりませんが、職業に魔物使いなどあるならそれにも影響してくるかもしれません」
「じゃあ生命力多めで、他バランスよく上げれば良いですか?」
奥田が聞いてくる。
「いえ、ちょっと待ってください。おそらくステータスポイントの振り直しはできないので、慎重に考えた方が良いです。HPやMPはレベルが上がるだけで最大値も底上げされていくと思います。生命力を上げるとよりHPが多くなるんでしょう。ただ、ステータスポイントは有限なので、生命力ばかりに割り振るとモンスターを倒すための攻撃力が得られないことになるかもしれません」
歩きながら話しているうちに、駅の改札を抜けて街までやってきた。
俺たちの周りにも、たぶん同じ客室だったのだろう4人組のパーティーがちらほら見える。
「街のなかで武具をそろえながら、これから先、どんな職業になりたいか考えた上でステータスポイントは割り振った方がいいと思います。お金もそれぞれ持ってるし。武器屋、防具屋を探さないと……」
「言葉は通じるかしら?」と奥田。
「RPGシステムがなんとかするだろう」これは研修医。
「コミュニケーションボタンのドロップダウンメニューに【通訳】とありましたね」おっさん。
「はい」
観察眼がある、おっさんもなかなかやるな。と、返事しながら俺は思う。
「それと、一般民のスキルとして1つ目に『言語取得』がありました。レベルが上がるとスキル取得できるかもしれませんね」
「よし、それじゃあ街探索だな」
研修医の言葉に、
「オー」
3人が声をそろえる。
おっさんも、なかなか乗りがいい。
4人が絶望的になっていないことが救いだな。
駅を後にして俺は思った。
「目標金額達成まで残り 999,977,650/1,000,000,000〔メル〕」
読んでいただきありがとうございます。
次回、街探索です。
街探索がしばらく続いてから戦闘になります。
戦闘までもうしばらくお付き合いください。