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第四十八話 アダマン

 朝、かなり早めに叩き起こされた。

 なかなか寝付けないこともあったが、それでも5時間ぐらいは眠れただろうか。

 外は、まだ暗い。

 そして、もう少し眠れそうだ。


「朝ご飯を軽く食べたら、もう少し寝るわよ」


 カムトゥルーに言われるままに、寝ぼけまなこで固いパンをもごもごと口を動かして無理やり押し込む。

 もう少し寝ると言われている、あまり目が覚めるようなことはしたくない。

 軽く口をゆすいだらベッドに潜り込んだ。



 ◇◇◇



 次に起こされた時には完全に昼を過ぎていた。

 お腹がグウグウ鳴っている。

 部屋の明るさで何度か目が覚めたが、惰眠だみんむさぼっていると完全に寝坊したようだ。


「さあ、お昼ご飯を食べたらアダマンがりよ」


「こんな時間まで寝ていて良かったんですか?」


「時差があるからね、ここではお昼ご飯でも現地では朝ご飯になるわ。しっかり寝たし、しっかり食べてちょうだい」


 なるほど、時差を考えてくれていたんだ。

 寝坊ではなかったらしい。


 まだ暗いうちに叩き起こされたときと違って、お腹が鳴るぐらいに減っている。

 パンに、サラダと、肉と、とにかくがっつり食べた。


「私、千種希望美ちぐさのぞみ。アサシンをしてるの。よろしく」


 ご飯を食べながら、自己紹介タイムとなった。


「山下浩一郎です。プレイヤーネームはコウです。コウと呼んでください。シールドアーマーでレベル22になりました。よろしくお願いします」


「コウね。私は、希望美のぞみでもいいし、一応プレイヤーネームはホープにしているの。そっちでもいいよ。レベル65になったばかりのアサシンよ」


「65!」


 マリが驚いたような声を出している。

 カムトゥルーが64だ。

 俺はそんなに驚かない。


「65で驚いていたら、今日会うもう一人は、その上を行くぞ?」


 トゥモローが言う。


「さあ、皆、食べ終わったら行くわよ!」


 結局、カムトゥルーは次に行く場所や次に倒しに行くモンスターについては全然教えてはくれなかった。

 聞いても、うまく別の話ではぐらかされてしまった。



 ◇◇◇



 1時間後。

 ご飯をゆっくりと、しっかり食べたので、起きてからもう少しで3時間がとうとしている。


「準備はOK?」


 アジトの中で、カムトゥルーが全員の顔を見渡す。


「行くわよ。ゲート④オープン!」


 さて、くぐった先は部屋の中。

 “もう”暗い。

 いや、“まだ”暗いか?

 そして、暑い!?

 思わず、上着を脱いだ。


「ようこそ、私たちのアジトへ!」


 カムトゥルーが、お決まりの文句を言う。


「ここは、どこですか?」


 昨日、マニュファートに来た時と同様に気温の違いと時差を感じて、俺は答えてくれないと分かっていても問わずにはいられない。


「私たちのアジトよ」


「ですから、そういう意味ではなく……」


「ふふ、わかってるわよ。外に出たらわかるわ。でも、その前に優羽輝ゆうきがもう少しで起きると思うから、それまで待って」


「もう、起きたよ。随分ずいぶん早いな」


 隣の部屋からの扉を開けながら、“たぶん”男が入ってきた。

 シュッと音がして、壁掛けのランプがともる。


「ふぅあああ」


 男がランプの側で欠伸をしている。


「久しぶりね、優羽輝ゆうき。これでも、だいぶゆっくり来た方なのよ」


 カムトゥルーがその男に声をかける。


「ああ、わかってる。すぐに飯を食って準備する。待ってくれ」


 10分後。

 鎧兜よろいかぶとかぶって準備万端という状態で、髭面ひげづらの男が俺たちの前に立っていた。


「悪い、遅くなったな。八幡優羽輝やはたゆうき、ブレイブと呼んでくれ。レベル70のパラディンをさせてもらっている」


「「「「70!?」」」」


 トゥモローと10以上も違う。

 パラディンはいかにもという感じだ。


「だから、言ったろう。レベル65で驚いてたらダメだって。俺たちは、もとから組んでいたパーティーじゃぁないんだ」


 トゥモローが言うと、


「私と、香奈枝かなえはスタートから同じだけどね」


 ホープこと希望美のぞみが言う。


「さあ、行くわよ。ここがどこで、何しに来たのかを早く知りたがっている人もいるしね」


 カムトゥルーがチラッと俺の方を見る。

 俺かよ。

 俺だけじゃなくて、リューク、ハタカ、マリの3人も同じだと思うが?



 ◇◇◇



 何というか、カムトゥルーがらして教えてくれなかった訳がわかったような気がする。

 驚かせたかったというのが一番なのだろうが、人から聞くのではなく自分の目で見て確かめろという事なのだろう。


 東の空から日が昇りかけている。

 その日が360度全方向に光を届け、空と地表とのつなぎ目をハッキリと浮き上がらせている。

 そして、時折ときおり、近くや遠くで砂の海(・・・)を何かが泳いで(・・・)いる。


「すごい、砂漠って私、初めて」


 マリが言葉をこぼす。


「いや、俺だって初めてだ。じゃなくて、すごいのはそっちじゃないだろう!砂の中を何かが泳いでるんだぞ!?」


 つい、乱暴な口調で突っ込んでしまった。


「そ、そうだった……あんなの、地球ではありえない。どうなってるのかしら」


 マリが改めて驚きを口にする。


砂流さりゅうだ。砂に流れがあって、動いているんだ。その流れに沿って泳いでいる。流れのない砂の中では泳げない。この星、特にここサウスカントゥールならではの光景だ」


 トゥモローが教えてくれる。


「ああやって泳ぐモンスターの中に、アダマンもいるのよ。さあ、行きましょう」


 カムトゥルーが歩き始める。


 さあ、行きましょうと簡単に言うが、砂の上を歩くのは簡単ではない。

 しかも、砂が波のようにうねっている。

 その砂の波を登ったり降りたりしなければならない。


「砂流の近くまで行くけど、気を付けて。流れに足を踏み入れてしまうと帰ってこれないわよ」



 それ(アダマン)、は何というか、ワニ甲羅こうらを背負っている感じだった。

 そして、リュークが狂喜乱舞している。


「こんな生物がいたなんて!こんな生物が実在するとは!しかも、砂の中を泳いでいる!!」


「アダマンタートルよ。タートルといっても、甲羅の中に手足を入れることはないわ。リューク、本当に気を付けてね。流れに足を取られると戻ってこれないわよ。大丈夫?」


 リュークのテンションの上がり方にカムトゥルーが心配している。


「そっとしておいてあげてください。亀に目が無いんです」


 ハタカが静かに言う。


「フフ、面白いね彼」


 ホープが笑顔を見せる。

 こちらも年齢不詳の美人だ。


「さあ、るぞ。準備はいいか?」


「「OK!」」


 パラディンブレイブの掛け声に、全員が声を上げた。


次回、アダマンタートルとの戦闘です。お楽しみに!

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