表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/60

第四十二話 色見本

どなたかわかりませんが、誤字報告いただきました。ありがとうございます。

いただいた報告内容についてですが、意味を調べると、現状のままの方がこちらの意図している意味に近かったのでそのままにしております。報告いただいたのに、すみません。ありがとうございます。

「キックローランドはモンスターに設定されてないんですか?」


 ゲームではレアボスになりそうだなと考えながら、俺はトゥモローにたずねる。

 隣で、リュークはまだ叫んでいる。


「されているだろう。この星では、大抵の動物はシステムによってモンスターに設定されている。街の中で人に飼われている犬のような動物、もっと言えば人そのものも、倒せば経験値が入るらしい」

 トゥモローが答える。


「キックローランドは倒せますか?」


「倒せると思うか?」


「いや。レアボスみたいで倒せたら面白いなと思っただけで……」


「俺も、ここに10年いるが、倒した奴の話は聞いたことがない」


「そもそも、あんなの物理的に存在できるのかな?」


 俺の質問に、近くで騒いでいたリュークも気になっていたことのようで、黙ってトゥモローの方を向く。


「そんなの知るか。現実にいるじゃねぇか、あそこに。ただ、あいつの甲羅こうらは密度が低く中はカッスカスだって聞いたことはある。そういうところで重さをおさえて、動けるような構造になってるんじゃないのか?」


「へぇ、くわしいな」

 リュークが反応する。


「俺を誰だと思っている?一応、情報屋だぞ」


「ついでと言ってはなんだが、さっきカラスから盗った“黒い羽”ってなんだ?」


「そんなの、アイテム欄から物を選んでアイテムの説明を読めばいいだろう?」


「あ、そうか」


 リュークは慌ててスマホを操作する。

 山亀キックローランドに気を取られ過ぎて、そんな当たり前のことも抜けてしまっていたのだろうか?


「3つ集めると商人になれるそうだ」リュークが言うと、


「あ……」

 マリが反応する。


「そうか、マリは、組み合わせ2つ目の職業を商人にしたいって言ってたね」


「商人か、なるほど。悪くないな。パーティーメンバーの獲得金が倍になる」

 情報屋トゥモローはさらに続ける。

「しかも、素材を買い取ってもらって得たお金は、ATM端末に入金する段階で1.5倍になるんだ。どちらも、商人のパッシブスキルを取得する必要があるがな。転職だけではその効果は得られない」


「へぇ、くわしいですね」

 俺はとぼけた様に返す。


「だから、俺を誰だと思ってるんだ?情報屋だって言ったろう!」


「え、そうでしたっけ?」


 トゥモローの切れ気味のツッコミと俺のボケを見て、マリがクスクスッと笑う。

 やった、俺のボケで笑ってくれた。


「フフフ……。でも、それって、永遠とお金を増やし続けられませんか?」

 マリが笑いをこらえながら、トゥモローに質問する。


「気づいたか?早いな」

 トゥモローが答える。


「どういうこと?」

 俺はマリに聞き返す。


「例えば、現金で100万持ってて、ATMに入金したら150万になりますよね。そこから、100万下ろしてすぐに入金するの。そうしたら……」

 マリが説明し、

「200万になる!」

 俺が補完する。


「そういうことだ。そして、残念ながら、そういうことはできないようになっている。直近で下ろした金額分は、次回入金時点で1.5倍にはならない」


「なぁんだ、そうかぁ。残念ん~~」


 せっかくいい考えを思いついたのにと言わんばかりに、マリが口をとがらせる。

 子どもか!でも、可愛い。

 俺は心の中でマリに軽くツッコミを入れながらも、その顔に見とれてしまう。


「遅かれ早かれ、誰でも気づく。このゲームシステム管理者も馬鹿じゃない」

 トゥモローが答える。


「他に、商人の特徴はありますか?」

 マリがたずねると、

「消費アイテムの調合ができたり、武具の効果が高められたり、あらたな効能を得られたりする」

 トゥモローが繰り返し答える。



「話は変わりますが、どうして“黒い羽”なんですか?さっきのカラスは真っ白だったでしょう?」


 情報屋の情報がタダなので、ハタカも質問する。


「カラスにもボスクラスのカラスがいるんだよ」

 トゥモローがもったいぶるように答える。


「それが黒いと……?」


「そういうことだ。地球のカラスそのものだ」


「なるほど」



 ◇◇◇



 森を抜けて山亀キックローランド遭遇そうぐうしたその日。

 広大な草原を歩いているためか、日が傾いて街に戻るときまで、どんなに歩いても山亀の姿が見えなくなることはなかった。

 結局、倒したモンスターは、カラスとトラのような動物のみ。

 遠目に、馬や羊、ハイエナのようなモンスター等を見ることはできたが、どれも近づいたら逃げるため追いかけるのも無駄だとトゥモローが言うので、見逃した。


 その翌日、馬の群れがトラ3頭に囲まれているところに遭遇する。

 馬といっても、体格は大きいが模様は黄色の縞柄しまがら

 そう、黄色いシマウマ。

 もっと言えば、トラ柄の馬。

 そして、トラの方は、しましまでも赤い縞柄しまがら

 まるで、パソコンの画像編集ソフトで色見本を試して見ているかのような光景だった。


いつも読んでくださり、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ