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第三十七話 マリ

なんだか、話が迷走しだしました。

筆がすすみません。頑張ります。

「おう、しばらり!何だか大変だったらしいな」

 俺の顔を見るなり、オヤジは挨拶代わりにそう話しかけてくる。


 俺が寝ている間に、狼の素材を鍛冶屋に持ち込んで換金してくれたらしい。

 全部で20万になったとか。

 ただし、真紅眼狼レッドアイズウルフの眼球、すなわち真紅眼は高すぎて買い取れないと言われたらしい。

 鍛冶屋に行って来たハタカとリュークがそう話した。



 ◇◇◇



「そんなもの買い取ったら、俺の店が破産しちまう。港街リライシーンか、鉱山の街マニュファートまで行って売れや」


「そんなに、高価なんですか?」

 ハタカが聞く。


「この街がそもそも貧乏な街なんだよ。買い取りではなくて、今おめえらが持ってる武具につけてやることならできるぞ。どうする?」


 ハタカとリュークは顔を見合わる。


「わかりました。少し考えさせてください」


 そう話して2人は鍛冶屋を後にした。



 ◇◇◇



 その時に聞きそびれた真紅眼の値段を聞きに、今度は5人で来ていた。

 エヴリウェアは部屋で寝ている。

 本当は俺も寝ていなくてはいけないのだろうが、じっとしていることに、いい加減飽き飽きしていた。


「この、真紅眼なんですが……」


「おう、それか。武具につけるか?」


「いえ、買い取りの相場を聞きたくて……」


「相場なんて、それこそわかんねぇよ。100や200はくだらねぇはずだ!」


「100って?100万〔メル〕っていうことですか?」


「それ以外になにがある?」


「因みに、これを武具につけてもらったら……」


「工賃5万でつけてやる。おめえらに売った杖なんかに付けた宝石はただの飾りだけどな、そいつはこの星では珍しく、特殊な効果がある。何でも、動物の動きを封じることができるらしい。通常は杖の頭に付けたりするが、盾に両目をそろえてつけるのも面白いぞ!」


 俺は、真紅眼を付けたカイトシールドを想像してみた。

 簡素な想像だったが、禍々(まがまが)しさが際立っているように思う。


挿絵(By みてみん)


 同じように想像したのだろうか、

禍々(まがまが)しいな……」リュークがポソリと言う。


「試してみたいけど、もし2つそろえて売ったら、マリが戻れるんじゃないか?」

 俺が提案する。

 “戻る”とは、もちろん地球への帰還のことである。

 マリの目標達成金額は300万〔メル〕だ。


「え……」


 想像もしてなかったのだろうか、マリが声をもらす。

 しかし、否定もしない。

 どんなふうに考えているのか、マリの心は読めそうにない。


「なるほど、そういう選択肢もありか」

 リュークが同意してくれる。

 きっとハタカも同じだろう。


 しかし、

「おいおい、簡単にいうなよ。回復職はどうする?」

 トゥモローはそうではなかったようだ。


「お前たち、お人好ひとよしすぎるだろ。だいたい、目標金額が一番低い奴を回復職にしてどうする?お前、ゲーム詳しいんじゃないのか、回復職の重要性なら分かるだろう?」

 最後のは俺に向かって発せられた言葉だ。


「いざとなったら、カムトゥルーとかっていう人に頼んで……」


「馬鹿野郎!簡単に言うな。そもそも、それは言わば結果論だろう。たまたま俺の知り合いに上級の回復職がいたってだけで、お前たちが転職する段階では知らなかったことだろうが!」


「あんたに、リップオフに、“職業は2つ組み合わせることができる”て聞いたからだよ。コウは初めにシールドアーマーを選んだけど、組み合わせる2つ目はプリーストにするつもりなんだ」

 リュークが助け舟を出してくれる。


「パラディンってことか?なるほど。しかし、それは情報不足だな。パラディンでは『ヒール』や『キュア』なんかの回復魔法の解放レベル上限は低いぞ」


「その“情報”を出し惜しんで、高く売りつけてきたのは、他でもないあんたじゃないか。10億〔メル〕という目標金額に、他の人を付き合わせたくないっていうコウの思いを否定する権利は、あんたにはないよ」


 結局、真紅眼は武具に付けることなく、実際の買い取りの値段を聞けるところまでは持っておくことにして、鍛冶屋を後にした。



 ◇◇◇



 2日後、俺とエヴリウェアがほとんど回復したところで、いよいよ森へ入っていくことになった。

『ゲート』を開く直前、リップオフが全員に指示を出す。


「いいか、目的は3人の遺体の回収と墓標をそばに立てること。しかし、日が経ってしまっているから遺体が残っている可能性は低い。残っていないと判断できた時点ですぐに回収は諦めて、墓標だけ立てて帰ってくる。エヴリウェア、それでいいな?」


「わかった」


「もし、戦闘になったらエヴリウェアは俺の盾の陰に入れ!」

 リップオフが続ける。


「わかった」


「『ゲート』は戦闘のあった、その場所に開きます」

 ハタカが言う。


「行くぞ!」

 リップオフがハタカに目で合図する。


 さっきから気になっていたのだが、俺の隣でマリが少しうつむき加減でずっと黙っている。


「ねぇ、みん……」


 他の皆にその様子を伝えようと声を出したが、

「ゲート③・オープン」

 ハタカの魔法を唱える声にまぎれてしまった。


 森へのゲートが開き、リップオフが先陣を切る。

 リューク、エヴリウェアと続く。

 その後にゲートをくぐろうと1歩でて、マリを振り返ると動く気配がない。


「マリ?」

 俺が声をかける。


 ゲートのそばに立っていたハタカも、マリの異変に気付いたようで、ゲートが閉じないように片足をかける。


「マリ、どうしたの?行こう?」


 マリの左手を引こうと俺の右手をかけると、

「いや!」

 手を強く落として振りほどかれてしまった。


「私、もういや……。帰りたい……」


「どうした?」

 先にくぐったリュークがゲートから顔を覗かせる。


「マリが動けなくなってしまって……」


 ハタカが返事すると、リュークは状況を理解したようで、

「わかった」と言って向こう側に戻っていった。


 間もなく、3人が街に戻ってくる。

 それを確認してハタカはゲートにかけていた足を引き抜くと、数秒後にはゲートが閉じた。


「なんだ、どうした?」

 リップオフが無遠慮に聞いてくる。


「マリが、行きたがらない」


「いやなの、私、もう……」


「ああ、この世界に対する拒否反応か。遅いぐらいだな。普通は、ここに来てすぐに、こうなるもんだ。今までが上手くいきすぎてたんだろう」

 マリの様子を見て、リップオフが答える。


「ここで待っていろ。1ヶ月ぐらい待っていたら俺たちがリライシーンへ付く。コウも言ってたぐらいだ、そこで真紅眼を売ってくるからその金で地球に帰れ」


「リップオフ、何を勝手なこと言って……」

 リュークがリップオフを止めようとすると、

「そ、それは、もっといや!」

 マリが否定する。


「甘えたこと言ってるんじゃないぞ!ここに連れてこられた奴は、戦うか、ここに残るか、そのどちらかなんだよ!どちらか選べ!」

 リップオフが詰め寄る。


「リップオフさん、そんな極端な……」

 俺はマリをかばう。


「極端じゃない。この10年、そんな奴らをずっと見てきた。甘い考えでいる奴ほど命を落とすんだ。中途半端な気持ちでついてくるな、残るなら残れ」


 リップオフのその言葉を受けて、リュークが言う。


「今、ゲートの向こう、森の中を見てきた。遺体は残っていない。おそらく狼が骨ごと持って行ったんだろう。とりあえず、俺たちはリップオフ、ハタカ、エヴリウェアと4人で墓標だけ立ててくる。コウはマリと一緒にここに残っていてくれないか?」


「わかった。4人で本当に大丈夫か?」

 俺は返事をする。


「リップオフがいれば、大丈夫だろ」


「わ、私はどうすれば……?」

 マリが戸惑っている。


「迷う気持ちは分かる。今日はいいから、落ち着いてしばらく考えてごらん」


 俺は、4人に後のことを任せて、マリを連れて宿屋へと戻った。

 部屋に戻ってしばらくすると、マリが小さい頃の家族の事を、ポツリポツリと話しだした。




「目標金額達成まで残り 998,490,470/1,000,000,000〔メル〕」

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