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第三十二話 3度目の何とやら

「携帯電源落とし、今度は俺がやろう。いや、ちょっと俺にやらせてくれ!」


 トゥモローがスマートフォンの事を携帯と呼ぶのがずっと気になっていた。

 突っ込むべきか、突っ込まざるべきか。

 それでも、先程は「けいた……スマホ」と言い直していたぐらいだから本人は気付いているのだろう。

 それなら、そっと見守る方がいいか。


 トゥモローのご希望通り、“スマホの電源を落としてシステムに縛られない攻撃をする役”を交代することにした。

 ハタカが『インベントリ』を開き、トゥモローと同時に俺も装備を変更する。

 もちろん、俺は先にスマホの電源を入れている。


「このメイスはマリが使っていたやつか?ちょっと、借りるぞ」


「あ、はいどうぞ」


 トゥモローがインベントリの中からメイスをチョイスする。

 悪くない選択だ。


「近くまで来てる、多いな!8匹いるぞ!」


 トゥモローに言われ、覚えたばかりの『探索』スキルを使用したリュークが、スマホの画面を確認しながら言う。


「構えろ、10時の方向からくる」


「ショルダー!」

 スキルを唱えながら俺は前に出る。


 しげみの陰からキャッツーと、キャットシーが飛び出してくる。

 そのまま、何匹かが俺とリューク、そしてマリに向けて攻撃を仕掛けてくる。


「キャッツーの攻撃。カイトシールドによる防御。コウへのダメージ0。キャットシーの攻撃。カイトシールドによる防御。コウへのダメージ5」


 キャットシーが両手に握った槍で攻撃してきた。


「こいつ、武器を持ってるぞ!」


「キャッツーの攻撃。マリのダメージを肩代わり。コウへのダメージ14」


 リュークはキャットシーの攻撃をかわしつつ、反撃する。


「リュークの攻撃。キャットシーにダメージ22」


 木やしげみの陰になって8匹全部は見えないが、キャットシーは3匹見える。

 内、1匹が槍を構えて俺の目の前にいる。

 こいつを倒したら金をガッポリ稼げたりしないだろうか?

 それにしても、進むにつれて猫の数が増えているように思うのは気のせいではないはず。

 逃がしてしまうと次の仲間を呼ばれるのかもしれない。

 倒しきれるのか?


「アイスレンジ!」


 ハタカの氷系範囲魔法スキルが数匹の猫を捕らえる。


「ハタカの『アイスレンジ』による攻撃。キャットシーにダメージ29。キャットシーにダメージ30。キャッツーにダメージ……」


 スマホから5匹分のアナウンスが聞こえる。

 優秀な魔法だな。


「トゥモローさん、槍の奴を……」


 すでに動いていたトゥモローが、メイスでキャットシーを狙う。


 ピキイィィン!


 キャットシーの全身が粉々になって崩れ落ち、構えていた槍だけがボトリと地面に落ちる。

 そのまま、トゥモローはそばで凍っているキャッツーも狙う。


 パキィィン!


 キャットシーと同じように崩れ落ちる。


「システム外の者による攻撃。キャットシーを倒しました。獲得経験値30、獲得金105,200〔メル〕。キャッツーを倒しました。獲得経験値10、獲得金75〔メル〕」


「うぉおお、出た!」


 獲得金は、パーティーにそれぞれ分配された金額がスマホからアナウンスされるので、42万持っていたことになる。

 まさにジャックポットだ。

 諸手もろてを挙げて喜びたいところだが、戦闘は始まったばかり。

 氷が解けないうちに攻撃をしなければならない。

 俺はリュークの前で凍っているキャットシーを狙う。

 それよりも早く、リュークが『盗む』を発動させる。


「リュークの攻撃。キャットシーにダメージ23。“素早さのひげ”を盗みました」


「コウの攻撃。キャットシーにダメージ46。キャットシーは瀕死ひんしの状態です」


「セイントアロー!」


 すかさず、マリが光魔法を唱える。

 木の上の方から飛んできた光の矢がキャットシーの体をつらぬく。


「マリの『セイントアロー』による攻撃。キャットシーにダメージ24。キャットシーを倒しました。獲得経験値30、獲得金200〔メル〕」


「よし、いいぞ!」


 凍結が解ける。

 残り5匹。

 俺は昨日からずっと考えていたことがあった。

 敵が半径2メートル以内にいるタイミングで『ウォール』を使用すると、内側に閉じ込めることはできないのだろうか?


 あんじょう、残ったキャットシーが盗みを働くためにこちらのふところ深くまで入り込んでくる。

 今だ!


「ウォール!」


 リュークとマリに、え!?という顔をされるが構わない。

 敵の攻撃を防ぐのが目的ではなく、囲むのが目的だからだ。

 キャットシーが俺の体の周りをかすめる。


「キャットシーの攻撃。コウにダメージ0。“赤のミディポーション”を盗まれました」


 そのままキャットシーは地面に落ちている槍を拾って逃げようとする。

 ドン!と壁にぶつかる。


「よし、狙い通り。壁は3分持つぞ!」


「「「なるほど!」」」


 周りから、俺の意図を理解したという声が聞こえてくる。

 壁の内側には、キャッツーも2匹。


「フミャーミ、ニー、ナー!」


 キャットシーが何やら叫ぶと、壁の外に残された2匹のキャッツーが森の奥へと逃げ出していった。


「あ、くそ!」


 また、応援を呼ばれるのではないか?


 キャットシーが槍を構えてこちらを見据みすえる。

 半径2メートルの円の中でそんな長い得物えものを構えて何になる?

 俺たちは雑魚2匹を無視してキャットシーを集中砲火する。


「リュークの攻撃。キャットシーにダメージ23。“赤のミディポーション”を盗みました」


「マリの『セイントアロー』による攻撃。キャットシーにダメージ24」


「システム外の者による攻撃。キャットシーは瀕死ひんしの状態です」


「ハタカの『アイスレンジ』による攻撃。キャットシーにダメージ30。キャットシーを倒しました。獲得経験値30、獲得金2,200〔メル〕、獲得アイテム“妖精猫の尻尾”。キャッツーにダメージ44。キャッツーにダメージ45。キャッツーの体が凍結しました。キャッツーの体が凍結しました」


 そのままトゥモローが向きなおって右手の方で凍って固まっているキャッツーにメイスを振り下ろす。


 パキィィンと氷の割れる音がしてキャッツーの体も粉々にくだけ散る。

 残りの1匹はリューク、マリ、ハタカで囲んで倒した。

 得られた素材は、キャットシー2匹、キャッツー1匹分。そして、槍が1本。


一旦いったん街に戻って仕切り直さないですか?」

 俺が提案すると、


「まだ昼前だぞ?」

 リュークが答える。


「次から次へと引っ切り無しに襲ってきそうじゃないですか?持ってきたサンドイッチ弁当ではなく、街で食べるというのはどうですか?」


「近くに、猫の村があるんだろうな。倒せない敵ではないが『盗む』で、転職キーアイテムを盗まれると面倒だな。仕切り直した後、少し走ってこの場所を離れるか」

 トゥモローが言う。


「そうと決まれば、早く戻りましょう。さっき逃げたキャッツーが応援を呼んくるかもしれない。ハタカさんお願いします」


「了解。ゲート②・レコード」


「ゼフル大森林中央部、w-31、n-40、ゲート②記録しました」


「ゲート①・オープン」


 街に戻った俺たちは、鍛冶屋に向かい素材の買取と槍の鑑定かんていをお願いした。

 槍はただの鉄の槍だったが、キャットシーの素材は、1匹分で80,000にもなった。


 下半身だけのキャットシーも半額の40,000。

 全部で212,000、5人でわっても1人42,400。

 ジャックポットキャットシーの分をふくめるとたった数時間で13万弱稼げた計算になる。

 アイテムを盗まれることを差し引いても、おいしいモンスターだといえる。




「目標金額達成まで残り 999,848,090/1,000,000,000〔メル〕」

更新が遅くなっています。頑張りたい!

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