第二十七話 いざ、世界へ
目標金額達成までの残金を追記(2020年7月12日追記)
ソードマン→ソードマスターに変更(2020年7月25日変更)
酒場でセイブと別れて、こんどはトゥモローと鍛冶屋にやってきた。
辺りは暗くなってきていたが鍛冶屋の灯は落ちていない。
それでも閉店間際だからだろうか金床を叩く音はすでにしない。
「おう、お前らか。ん?セイブはどうした?代わりにリップオフが付いてきてるじゃねぇか」
トゥモローは流石に長くいるだけあって、鍛冶屋のオヤジに顔を覚えられている。
「明日、この街を発ちます。オヤジさんにもお世話になりました。トゥモ……、リップオフは同行することになりました」
「早いな、ここに来て3日だろう?なるほど、それでリップオフが目を付けたってことか。リップオフはこれで何度目になる?」
「4度目かな」
トゥモローが答える。
「仇討ちに行くのか?もう、ここには戻ってくるんじゃねぇぞ」
「ああ、そうしたいが、それは彼ら次第だ」
「あの2度目の何て言ったっけな?あいつらよりも、鍛冶屋目線で見ても優秀だと思うぜ。貧乏だがな!ガッハハハッ」
貧乏なのは、ここにいるトゥモローのせいだ。
「シラカバだ。確かに奴らも優秀だった、だがな……。それと、彼らが貧乏なのは俺のせいだ」
「なんだ、そうか。でも、今から還元するんだろう?いつものように貯めてた分で一式揃えていってくれるんだろう?」
「ああ、そうさせてもらう。5人分だ。職業は――、シールドアーマー、盗賊、ウィザード、プリースト、それと……」
「ソードマスターだな?」
「ああ、そうだ」
このオヤジ、RPGシステム上の職業について知っているんだ?!
「4人全員転職済みってことか、しかもシールドアーマーねぇ。リップオフが連れてきた連中の中では初めて聞くなぁ。こりゃ、確かにシラカバより優秀だぁなぁ」
「シラカバの話はもういい。5人分、職業にあわせて最上のものを見繕ってくれ。100万で足りるか?」
「それだけありゃ、充分だ」
「え?100万って……」
俺はトゥモローの顔を見る。
「気にするな、オヤジも言ってたろう、いつものことだ。同行させてもらうパーティーにはこれまで貯めてきた分を還元している。ボッタクリと思われるぐらいに詐取してきたプレイヤーには悪いが、首謀者を倒してこんなことをやめさせれば、彼らのためにもなる」
なるほど、そういうことだったか。
だが、そのボッタクリが原因で俺たちは死にかけた。
同じように、武具が買えずに死んでしまった人もいたんじゃないだろうか?
トゥモローの行いは、どこか矛盾している気がしてならない。
まぁ、この際それについては黙っておこう。
「それと、彼らの素材の買取も頼む」
トゥモローがオヤジに言う。
「構わねぇが、あの変な箱またここで広げるなよ!」
オヤジがハタカの方を向いて答える。
「変な箱?四次元ポ〇ットか?持ってるのか?普通、まず攻撃魔法スキルに目が行きがちだが?」
トゥモローが少し驚いたように聞く。
「四次元〇ケット?」
「ああ、『インベントリ』の通称だ」
「『インベントリ』スキルは取りましたよ」
ハタカが返事をする。
「そいつはいい、やはりお前たちを選んで正解だ。だいぶ楽に行けるぞ。『ゲート』も取ってるよな?」
「はい、まだ解放レベルは1ですが、スキルポイントは残してあるので今ならレベル4までは解放できます」
「『ゲート』はまだレベル2まででいい。そこまで解放しておいてくれ」
「とりあえず、店の外で『インベントリ』を開いて素材を出してきますね。コウさん、リュークさん素材を運び込むお手伝いをお願いしてもいいですか?」
「わかりました」「OK、了解」
「俺も、手伝おう。久しぶりに四次元ポケッ〇を見せてもらおう」
俺とリュークの後にトゥモローもついて店を出る。
素材の買取は85,000〔メル〕になった。武具代をいくらか払おうとしたが、トゥモローに4人で分けろと止められた。
トゥモローが全額払って揃えた武具の主要な物は、以下の通りだ。後ろの数字は攻撃力、または防御力。
ハルバード53 コウ
アサシンダガー38 リューク
鋼鉄のロングステッキ30(ダイヤモンド:魔法効果にプラスボーナス) ハタカ
ソードメイス50 マリ
鋼鉄の剣55 トゥモロー
鋼鉄の鎧40×2 コウ、トゥモロー
鋼鉄の胸当て25×3 リューク、ハタカ、マリ
カイトシールド40 コウ
鋼鉄の盾30×2 マリ、トゥモロー
これ以外に、飛んでいる鳥やコウモリを打ち落とす必要があるらしく、鉄製クロスボウも3挺用意した。
転職キーアイテムを得るために倒す必要があるらしい。
弓系は職業による装備制限はないようだ。
俺は、大型のカイトシールドを持ちながら大型の槍ハルバードを持てるのか?と聞くと、オヤジもトゥモローも、なんとかなるだろうとの一言で済まされた。
もう1つ気になったのは、ハタカのロングステッキについているダイヤモンドの効果だった。
オヤジいわく、
「3日前に売ったロングステッキにも赤い宝石がついてただろう?その、鋼鉄のロングステッキについた透明の宝石の方がより硬く丈夫で高価なんだ。それ以外に効果はないよ。ただ、おめえらの持つ機械で測ると、何か別の効果があるんだってな?」
「ああ、そうなんだ。色がついておらず、より透明度の高い宝石の方が魔法プラスボーナスの効果が高くでるんだ」
トゥモローが言う。
「そう、その魔法ってやつだ。なんだか良くわかんねぇが、透明度は明らかに高ぇよ」
「おめえらとも、会えなくなるのか。全て片付いたらここに顔を見せに来いよ」
「必ず!」
そう言ってオヤジに別れを告げて鍛冶屋を後にする。
さあ、宿に戻って寝ようかというところでトゥモローが口を開いた。
「お前たちには黙っていたが、実は同行したメンバーで死んでしまった奴らもいたんだ。誤解を生むかもしれないが、見殺しにしたわけではない。俺と別行動をとったタイミングで、運悪く強敵に遭遇した。機械獣ではなかった……」
「私たちには、運もありますよ。ね?」
マリがリュークに目をやりながら、俺とハタカにも目配せをする。
片目をつぶって見せる顔が可愛い。
「そういうことではないんだが、まあ、いい。俺から基本的には離れるな。俺も、お前たちのそばから離れないようにする」トゥモローが静かに言う。
翌朝、街の門を出たところでセイブが待っていた。
日は街の陰になってまだ少し暗い。
「行くんだな。必ず、ここへ戻ってこい」
鍛冶屋のオヤジにも同じことを言われた。
「わかった」
俺は答える。
皆も頷く。
「この星を頼む」
セイブが俺に向かって手を伸ばす。
それを握り返す。
同時に、皆も俺の手の上に両手を重ねてきた。
4人でセイブを囲む。
トゥモローだけが、少し離れたところで、街の陰から登り始めた日を眺めて眩しそうにしていた。
「目標金額達成まで残り 999,952,510/1,000,000,000〔メル〕」
章の管理には表記しませんが、私の中のイメージで、第一部が終了です。
しばらく、これまで書いた原稿の加筆、修正に力を入れるかもしれません。
もしかすると、普通に続きを書くかもしれません。ちょっと、迷っています。
ただ、加筆、修正したい部分があることは確かです。以前感想の気になる点として上げてもらっていたことでもあるのですが、お金を稼ぐという部分にもう少しスポットを当てたいと思います。具体的には、節目節目で主人公コウの残金表示を入れたいなと考えています。あの、宇宙戦艦ヤマトの「地球滅亡まで後〇〇日」的な感じで、「目標金額達成まで残り000,000,000/1,000,000,000〔メル〕」というのを考えています。*目標金額を追記しました。