第二十五話 新たな仲間
ソードマン→ソードマスターに変更(2020年7月25日変更)
「俺を仲間に入れてくれ。お前たちについて行かせてくれ。」
「「「「えぇ~~~!?」」」」
一同、声を揃えて驚く。
何を言いだすんだ、このボッタクリオヤジは?
「これまでの俺の態度をみれば、お前たちの気持ちは分かる。それでも、話を聞いてくれないか?」
リップオフの真剣な顔に、全員黙って聞く姿勢をとる。
「ありがとう。まず、自己紹介からさせてくれ。俺の本当のプレイヤー名はトゥモロー。リップオフは偽の名だ。もっとも、プレイヤー名にしたって本名ではないがな。本名は、追い追い……、な?」
何が、な?だ。
こっちを信用していない証拠だろう。
もっとも、こちらはもっとお前を信用できないけどな。
「お互い、信用できないのは致し方ないだろう。初めて会って、まだ3度目だ。レベルは57、職業はソードマスターだ。こちらはパーティーを組んでもらったらすぐ分かることだ。先に伝えておく」
すでに、パーティーを組むつもりでいるようだ。
「機械獣のことを聞きたいんだろ?ずっと、お前たちのような人間が来るのを待っていたんだ。……
………………
俺はここに10年も前に運ばれてきた。
当時、俺は27歳。
親友と一緒に始めた株投資で失敗して大きな借金を作ってしまった。
金融会社に勧められて参加したツアーでここにきた。
なんか、そんな漫画が当時流行っていたな。
妙に鼻と顎の尖った男がでてくる漫画だ……。
え、今も流行ってるって?
ま、それはいい。
ツアーに参加したことを今でも後悔してるよ。
明らかにあやしいツアーだったが、当時は藁にも縋る思いだったからな。
その漫画みたいに、帰ることができないばかりか、まさかここで親友を亡すことになろうとは、思いもよらなかったよ。
俺と親友、それから列車で同室になった2人、合わせて4人のパーティーを組んで……、ちょうどお前たちと同じような感じだ。
お前たちも同室組じゃないのか?
どうやって調べているのか、似た者同士が同室になるよう組んでいるらしい。
俺たちは、列車に乗ったその夜から意気投合して、ある意味このゲームを楽しむように冒険を続けていった。
こう言っちゃなんだが、俺たちは頭脳派で連携もしっかりとれるパーティーだったんだぜ。
俺たち11組の中ではトッププレイヤーだったはずだ。
でも、どんなに凄腕のプレイヤーでも、どんなに優れたパーティーでも、死んだらおしまいなんだ。
元も子もないんだよ。
………………
リップオフもとい、トゥモローの話が長くなりそうだったので、メニューから注文をして食べながら聞くことになった。
………………
俺たちの中にゲームに詳しい奴がいてな、そいつの言うように進めていくだけで順調にお金も貯めることができたし、途中の街で最終ボスらしき噂も聞くことができた。
最終ボスといっても眉唾物だけどな!
ドラゴンが出るって言うんだぜ、信じられるか?
真偽を確かめるべく、その情報をたどっていった先で機械獣に遭遇したんだ。
この星ではありえない物だよ。
あんな文明はこの星にはない。
4つ足の機械が歩いてんだよ。
目から光を放って、ギュイーンギュイーンって音をたててさ。
今でも、耳に残ってるよ、あの嫌な音が……。
RPGシステムによってアシストされているはずの攻撃が一向に通らなくてな、盾役だった俺の親友が囮になって「必ず戻るから」って叫ぶ声を背中に聞いて、命からがら逃げてきたんだ。
ハタカと言ったか?
ウィザードの魔法スキル『ゲート』は取ったか?
覚えておくといい、『ゲート』は戦闘中は使用できないようになってる。
それで逃げることはできないんだ。
敵から身を隠して1分経った状態で初めてゲートを開くことができる。
結局、アイツは戻ってこなかった。
パーティーを組んでいた残りの2人は、その後2、3年で目標金額を達成させて地球に帰ったよ。
俺か?俺もとうに目標金額は達成できてる。
だからといって、地球に帰れるわけないだろう?
アイツの弔いが必要だ。
こんな馬鹿げたことをやらせる首謀者を見つけ出して倒さなければ、アイツは報われない。
この始まりの街でリップオフと名乗って、金を貯めながらお前たちのようなパーティーを待つことにした。
ゲームに詳しい奴が1人以上いて、かつ頭脳派のパーティーだ。
どうだ、俺の分析は間違っているか?
これまでにも3度ほど参加したパーティーはあったが、信用しきれない奴らだったり、目標金額達成と同時に地球に帰ってしまったりで今に至る。
俺はお前たちに期待はするが、負担に思う必要はない。
目標金額を達成して帰ろうと思うなら、帰ってもらっても全然かまわない。
………………
……俺のことを信用してもらわなくてもいい。ただ、一緒に行かせてくれないか?頼む、この通りだ」
リップオフが額をテーブルに付ける。
俺たちは真剣にリップオフの話に聞き入っていた。
俺の考えと一致するところがある。
首謀者を倒すのは賛成だ。
充分信用できる話だと思えた。
皆の顔を見ても反対する感じではなさそうだ。
しかし、少し意地悪をしてやろうという気もおこる。
「わかった、パーティー参加を認めよう。皆もいいだろう?」
全員が頷く。
「ただし、あんたの名前はそのままリップオフだ。俺たちのあんたに対するイメージが、もうすでにリップオフになってしまっている。トゥモローっていう感じではない」
「なっ、それは勘弁してくれ」
「リップオフという名前に馴染んでいないのか?自分でつけた名前だろう?」
「トゥモローはアイツが考えてつけてくれた名前なんだ。頼む」
「わかった、じゃあ本名を教えろ。俺たちも教える。それで、お互いを信用できるだろう?あんたの話は充分信用に値すると感じられた。あんたも、俺たちを信用してくれ」
こちらの言葉に少し驚いたようだったが、真剣な顔つきに戻ってトゥモローは本名を名乗った。
「佐伯明日真だ。37歳。よろしく頼む」
「山下浩一郎、大学4年生です。改めてよろしくお願いします、明日真さん!」
俺から手を伸ばして握手する。
残りの3人もそれに続いた。
セイブはテーブルの角で静かにその様子を見ていた。
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