第二十二話 惑星パスト
俺たちは、例の酒場にいた。
まだ、夕食の時間にはなっていないが軽食を取りながら作戦会議をしていた。
レベルも上がり4人全員が転職を済ませた俺たちは、この街でやるべきこともそろそろ無くなってきていた。
お金を貯めるにしても、もう少しレベルの高い動物が出る所へ向かった方が良いだろう。
あるいは、ゲームのクリアを目指すか。
そのためにも情報が必要だった。
また、転職キーアイテムで余ったものは、ここで俺たちと同じ32組にトレードしてお金にした方が良いかもしれない。
街を出る前に、するべきことをリストアップすることにした。
①次に進むべき街の情報、最終ボスにつながりそうな情報の収集
②リュークの盗賊スキル『マップ』の取得と地図の確認
③ウィザードの魔法スキル『ゲート』の仕様の確認と出口登録
④転職キーアイテムの売却、トレード
⑤武器の調達
⑥サバイバル用品、道具の調達
⑦これから行く街に合わせた衣類、防寒具等の調達
この番号は優先順位ではない。
「②、③はすぐにでもできるな。今からやろう。まず、②だ」
リュークが話しながらスマホを操作する。
スキルポイントを割り振ってスキル『マップ』を取得する。
その後、「マップ」とリュークが言うと、パーティーメンバー全員のスマホ画面に、惑星パストの世界地図が表示された。
これなら、わざわざスキルにしなくても、RPGシステムの機能として持たせておいてほしいぐらいだ。
なるほど、こんなふうになっているのか。
地図の中心に近いところで赤く点滅している部分があり、“トゼフル”という表記がある。
俺たちが、いる場所だ。
「このゼフル平原の横から街に延びている点線は何だろう?」
ハタカが疑問を口にし、即座に自答する。
「鉄道か……」
俺たちが乗ってきた列車の鉄道がそこだけ延びているのか?
鉄道にしては短いようにも思うが……。
「鉄道って駅がいくつもあって、ずっと延びてるものじゃないのか?」とリュークが聞く。
「異空間を走るのかもしれませんね?」
俺が考えを口にする。
「あるいは、銀河鉄道かな?」
目を輝かせながらハタカが言う。
さては、おっさん好きだな。
「なるほど。それで、鉄道の路線が切れているのか。片側なんか、山脈に突っ込んでるぞ」
セイブが俺の横で地図を気にしているようだったので、スマホを手渡して見せる。
「これはすごいな。相変わらずあんたらの持つ機械は優れているな」
「セイブさん、リストアップした①に該当するんですが、近くにどんな町があるか知りませんか?」
「そうだな、近くではないが、このトゼフルの東にそびえる山脈を北から回り込んで東の方へいった先にコナートジフルという街がある」
「この地図でいうと、どの辺ですか?」
「ここだ」
ピロンと音がして、4人全員のマップにコナートジフルの街が表示される。
「おぉ?地図が更新された!」
リュークがびっくりしている。
どうやら、情報を得ると地図が更新される仕組みらしい。
セイブの言うように、本当に優れた技術だ。
こんな技術がありながら、奴らはいったいどんな理由があってこんなことを俺たちにさせるのだろうか?
仮にこの星を侵略することが目的ならば、自分たちでやればいいと思うのだが、そうではないのか?
それとも、自分たちの手を汚したくないだけなのか?
「セイブさん、他に知っていることはないですか?」
俺が考えを巡らせているのをよそに、リュークは嬉々として情報を聞き出している。
「世界には、5つの地方がある。トゼフルの街がある、ここはジフル地方だ。東にカフォレント地方。北に…………」
セイブが話をするたびに、ピロン、ピロンとスマホが反応し地図が更新されていく。
「カフォレント地方には、ドルフィーナが住む港町リライシーン、ドワーフが住む鉱山の街マニュファートがある」
再び、地図が更新されていく。
最初に開いたときと比べて、それっぽい地図が完成した。
「①の最終ボスにつながるかどうかは分からないが、フロンザール地方で機械の獣に襲われたという話を聞いた」
「機械……の獣?」
「ああ、そうだ。全身鉄の塊で目から光を発し、変な音をたてながら4つ足で襲ってきたそうだ」
セイブが、ちょうど配膳のために通りかかった酒場の店主を呼び止めて話しかける。
「なぁ、あんたも聞いただろう?機械の獣の話」
「ん?ああ、なんだ?」
「機械の獣だよ、3、4年前にここにきたヨルホシビトが話してたろう?数名のパーティーを組んでたが1人やられたって、命からがら逃げてきたって……」
「あ、あぁ、たしかに。聞いた聞いた」
「あれは、フロンザールの話じゃなかったか?雪が足で滑ってとかなんとか言ってただろう?」
「ああ、そうだ。ここら辺でも雪が降らないわけじゃないが、この季節にしては珍しいなと思ったから……。その時の1人は、まだこの街にいるだろう?」
「「「「え?」」」」
俺たち全員が店主の方に向きなおる。
「セイブ、知ってるだろう?奴だよ、お前と同じ武器を持つ」
「え?奴か!」
「それって、まさか?」
マリがセイブの方を向いて尋ねる。
「あんたら、昨日の昼前にその手持ちの機械を使って何かやりとりしてただろう?尻尾がどうとか?あいつだよ。リップ……」
「「「「リップオフ?!」」」」
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